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流れ星 2

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  「ん?」

ユキの軍の端末にもたくさんおめでとうメールが届いている。それは相原がメールを送った日、一日じゃ読み切れないぐらいたくさん届いた。一通一通しっかり目を通す。なかには進のファンでイヤミの混じっているものがあったりで素直にありがとう、と言えるものばかりではなかった。

  <おめでとうございます。あなたのその美しい姿を遠くから眺めるだけで満足
   でしたが玉砕覚悟で私の想いを告げるべきだったと後悔しております。

   私が告白しようとした時あなたはすでに意識がなくあなたの亡きがらの傍に
   行きたくても古代が常にそばにいて近付く事ができませんでした。


   あなたはすでに古代のモノになってしまったのでしょうか。
   私はそれでもかまわない。あなたの全てが欲しいと今でも思っています。

   一度私にお時間を頂けないでしょうか?>


  (だれ?)

文章を見て少し怖くなって誰から来たのか確認してみる。

  (技術班の上村さん?)

ユキの記憶を辿ってみても話した記憶がほとんどない。

  (なんて返事を返したらいいのかしら…)

ユキの記憶にある上村はひとりでもくもくと作業をしている姿しか思い浮かばない。手先が器用で細かい作業を真田がよく頼んでいたのを覚えていた。

  (どうしよう…)

ユキは深いため息をついて端末を閉じた。














  「真田さん。」

ユキは端末を持って真田の元を訪ねていた。

  「お、昨日の今日でどうした?元気ないな。喧嘩でもしたのか?」

真田がニヤっとわらいながらユキにソファーをすすめた。ユキは“突然すみません”といいながらソファーに座ると自分の端末を出して立ち上げると上村から来たメールを見せた。

  「…なんて返事をしたらいいか…あの件(岡本の)が頭から離れなくて…
   どうやって断ったらいいのか…。」

自分はしっかりその気持ちを断ったのにもかかわらず相手が思い込みで行動を起こすと恐ろしい事になってしまう事を体験したユキは真田に相談に来たのだった。

  「真田さんに見せるの、ルール違反って分かってるんですけど…。」

真田は上村のメールを読んであごに手を当てて何か考えている。

  「もし真田さんから一言言ってもらえば簡単かもしれませんけどそれをして
   しまったら上村さんを勝手に他人に見せちゃったって事になってしまうし…」

ユキの声が小さくなる。

  「古代くんもいないし…怖い思いはもうしたくない…。」

気付いたら名古屋のホテルで全てが終わっていたけどトランクで聞いた岡本の言葉は時々頭をよぎる。

  「そうだよな、怖かったよな。」

真田もあの時の事を思い出していた。

  「とりあえず上村にはおめでとうの言葉だけちょうだいします、と返事を
   いれなさい。しばらくは私が寮まで送って行こう。」

真田があごに手を当てたまま答えを出した。でもユキは知っている。真田があごに手を当ててる時はまだ考え中だ、という事を。

  「古代がいない時は私がユキを守ると言ってある。それに私はユキの保護者
   だからな。式の打ち合わせがある時は必ず南部と行くように。その時は
   ここを提供するからここで待ち合わせをして一緒に行きなさい。絶対に
   帰りに一人にならない事。」(真田)
  「でも、真田さんお忙しいんじゃ…」(ユキ)
  「今は以前に比べたら随分落ち着いている。私なしでも復興は進むし戦艦も
   輸送船も工場のラインがしっかりし始めているから大丈夫だ。」

真田が返事を促すようにユキに端末を渡す。

  <上村さん、おめでとう、の言葉だけ受け取ります。すみませんが後の言葉を
   受け取る事はできません。>

それを真田に見せると真田が深くうなずく。ユキはそのまま送信した。

  「少し冷たいようだが私の方からフォローを入れておく。朝は同じシフトの
   出勤者がいるから手を出したりして来ないと思うが気を付けるように。」

真田の言葉にユキは深くうなずいた。

  「仕事は終わりなんだろう?送って行こうか。」

真田が立ち上がるとユキは端末をバッグにしまうと真田の後ろについてラボを出た。











作品名:流れ星 2 作家名:kei