二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

妖アパ 千晶x夕士 『想』

INDEX|23ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 


ピクシー騒動から二週間後、俺の執筆作業もひと段落した頃
三枝からメールが届いた

「んー、千晶に言わずに逢ったら、お仕置きされそうだな」

千晶は超が付くほど嫉妬深かった
薫と世間話をしているだけで睨まれ、
正宗と一緒にキッチンで料理をしている時は有無を言わず引き離された

二人とも苦笑いしてたが、どーみても大人げない
そんな千晶に黙って三枝と逢ったことがバレたら一大事だ

肩を竦め、携帯を開き千晶に三枝と逢うことをメールにて伝えた

「[送信]っと」
さて、出かけっかな、と部屋を出ようとすると千晶からの着信音

「千晶か?どーした?」
階段を降りながら話していると、『俺も行く』とぶっきらぼうに一言

「はい?」
『今から迎えに行くから、待ってろ』
そう伝えると、一方的に電話を切った

「なんだんだ?」
階段の途中で首を傾げ、「ま、いっか」と身を翻して部屋へと戻った



エアコンの効いた車内は涼しく、炎天下を歩かずに済んだ
「彼女、お前に気があるんだよなぁー。俺心配だよ」
「俺としては、片腕で運転している千晶の方がよっぽど心配だが」

「大丈夫、オートマだから」
「いや…イザって時ダメだろう」
「じゃ、ダーリン免許取ってよ」
「俺は車が無くても不便じゃないからな」
「俺のこと心配してるなら、ここは「そうだな」って答えるべきじゃないか?」
「そうか?」

他愛もない会話をしながら、三枝との待ち合わせ場所まで走る
幸いなことに渋滞もせず、予定通りの到着となった

車を降りると「稲葉さん!」と声がかかる

「よ、元気だったか?」
「はいっ!」
元気に答える彼女が一瞬曇り顔になった
千晶が夕士の隣に立ち、「どーぞ、話続けて」と爽やかに笑う
が、目は笑ってない

おいおい、と横目で見ながら視線を三枝に戻し「で、どーした?」
と呼び出された理由を切り出した

「えっ…えっと…」急にモジモジとし始め、チラチラと千晶を気にしている
「ああ」と頷き、千晶に車の中で待っててもらうようお願いした
渋々了承した千晶が車内へと入ると、三枝は夕士の手を引き「あの…」グイグイ引っ張る

どうやら、もう少し千晶と離れた場所に行きたいらしい
後方にある車へチラリと目を配ると、千晶はサングラスをかけ前を向いてジッとしている

このまま大人しくしていてくれることを祈りながら、三枝と歩き始める

待ち合わせた場所は都内でも有名な「井の頭公園」
北駐車場からバラ園を過ぎ北へ歩いていくと、自然植物園地区に入る

ゆっくりと歩きながら、チラリと三枝を見る

「そろそろ話してくれてもいいんじゃねーか?」
三枝はピタッと立ち止まり、モジモジしながら「あの…あの…」と目を泳がせ
言葉を躊躇っているように思えた

頭の後ろをガシガシ掻きながら「そんなに話しにくいことなのか?」と考えていた
すると、俯いていた顔を上げ一歩夕士に近づき、両手を胸の前で祈る様に組む

「稲葉さん…私…稲葉さんのこと大好きです!!」
と、急に大きな声で告白された

「え?」と意表を突かれボケッとしていると
「好きなんです!!」とまた一歩近づく

「えっと…ありがとう?」
首を捻り、語尾が疑問形になったが仕方がない
生まれてこの方異性からの告白なんぞ受けたことはない
(同性はあるが…)

真っ赤な顔で目を潤ませ、夕士の出方を伺っている
これは…返事待ちということだろうか?
この場合、ハッキリと断った方がお互い良いだろうと考え、「ごめん」と謝った

「稲葉さん、私のこと嫌いですか?」
「いや…別にそーゆーわけではないが…」
「私が『人間』じゃないから…ですか?」
「それは関係ない」
「他に…好きな方がいらっしゃるんですか?」
「え?////」

タジタジになり、夕士は一歩後ろに下がる

「いるんですか?」
確認するように一歩近づくが、同時に夕士も一歩下がる

「い…います////」
また一歩下がり、胸の前で両手を上げ降参のポーズ

「相手の方は稲葉さんが好きなこと知ってるんですか?」
「あー多分?」
明後日の方向を見ながら答えると「相手の方はどんな方ですか?」と詰め寄る

どんな方と言われても…
ルックスが良くて、仕草や笑顔が綺麗で、甘えん坊で嫉妬深い…

うーむ、と千晶を思い描きながら「なんて答えようかな」と思案する

あたりさわりのない千晶のイメージというと…

「年上で美人」
この一言に尽きる
うんうん、と頷き三枝を見ると「稲葉さん年上好きなんですか」
上目使いで見上げられ、一瞬ドキンとしたが、
頭を左右に振り「別に年上が好みってわけじゃねーよ、たまたまだ」と答える

「お付き合い…されてるんですか?」
「あー多分?」

付き合うと言っても、まだ二週間足らずで、今までと大して変わらない
そもそも「お付き合い」自体が初めての俺にとっては、比べることもできない

「私…二番目でもいいです!」
「はぁ?」
「それは困る」

突如現れた千晶が夕士の腰を抱き「こいつは俺のだ」と牽制する

「千晶!?」
「遅いから迎えに来た」

千晶は三枝へと視線を戻し「お引き取りを」といい、夕士を抱えるように身を翻した

「待ってください!」
三枝は夕士の左腕を掴んで「待って、稲葉さん!」と声をかける

「ちょっ、千晶。待てって」
そう言って、三枝の方へ振り向く

「ごめんな。俺千晶のこと好きだからお前と付き合えない」
ぐすっ鼻を啜り、三枝はぽろぽろと涙を流す

「二番目とか言うなよ。もっと自分を大事にしろ」
三枝の頭をポンポンと軽く叩きながら「な?」と話しかける

コクリと頷く彼女を見て、「よし、気を付けて帰れよ」と声をかけ
千晶と一緒に駐車場へ戻った

作品名:妖アパ 千晶x夕士 『想』 作家名:jyoshico