妖アパ 千晶x夕士 『想』
俯き何も答えない夕士に向かって「今までありがとうな、稲葉」と、
まるで教職時代に戻った時のような声色で俺告げる
--- さっきまで不機嫌だったのに、今度は泣き出しそうだ
何があったんだ?千晶…
「千晶が俺に伝えたい意味が分からないんだけど?」
絞り出すように声を上げれば、「お前は今まで通りでいいさ」
と千晶は薄らと笑いながら答えた
「俺が変わらなければ始まらないんだ。いつまでもお前に依存してちゃダメなんだ」
苦しげな表情で、腹の底から吐き出すように呟く
Baby, don't talk to me
話しかけないでくれ
I'm trying to let go
僕は君との関係を終わりにしようとしてる
Not loving you is harder than you know
君と離れるのは君の想像している以上に辛い事なんだ
'Cause girl you're driving me so crazy
気がおかしくなりそうだよ
千晶はフレーズを口ずさむと「今の俺の心境だ」と言って立ち上がった
「なっ!?」
と俺も立ち上がるが、千晶は振り向かずヒラヒラと左手を振り寝室へ入っていった
「なんだよ!千晶!」
寝室の扉に向って呼びかけてみるが、反応はない
千晶と入れ替わりに、正宗がタイミング良く入ってきた
寝室の扉を見つめていると正宗は何かを察したのか、「全く…」と呟き
「どうする?」と視線で話しかけてくる
夕士はもう一度扉を見やり、俯き目を閉じた
--- これで終わりなのか?俺達…
そんな思いを打ち消すかのように頭を振り、正宗へ身体を向ける
「…帰るッス」
「そう…送る?」
「いや、大丈夫ッス」とカバンを手にとり、寝室の前で「千晶、帰るよ」
と声をかけたが案の定返事はなく、この日二度目の部屋を後にした
作品名:妖アパ 千晶x夕士 『想』 作家名:jyoshico