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妖アパ 千晶x夕士 『想』

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どんよりと梅雨空が広がる
部屋の窓から外を眺めていると、久しぶりに寿荘へ帰ってきた長谷が
なっこ(猫の幽霊)の背中を撫でながら言った

「最近、千晶センセー積極的にステージに立つんだよ」
「良いことじゃないのか?」
夕士は「別に悪いことじゃないだろ?」と長谷に問う

長谷は苦笑いしながら「それはそうだが」と前置きし
「がむしゃらって感じでさ」と心配そうに話す

「それでも客は喜ぶだろ?」
「もちろん、神谷兄貴や田代ははしゃいでるが、俺には苦しそうに見えてな」
「苦しそう?」
「ああ、相変わらずの歌声だし、体調が悪いわけでもなさそうだが…」

長谷は「どう伝えようか?」と言葉を選んでいる様子だった

「気のせいじゃないのか?」
何気なく、そう告げると「お前も見れば来ればわかる」と睨まれた

「んー今は時間とれねーな。明日から海外だし、帰国後は部屋に缶詰だしな」
ガシガシと頭の後ろをかくと、「そっか」と長谷は肩を落とした



普段からあまり電話やメールなどはしないので、気にしてはいないが
最後に逢った時の別れ際の印象が悪く「どーしたもんかな」と考えているうちに
刻々と時間は過ぎ、今に至る

千晶の近状報告は、現在「クラブ・エヴァートン」の『コア』メンバー候補である長谷から
ちょくちょく聞かされていたので、元気そうなら大丈夫か、と独り心地だったのだが…

--- モヤモヤしている状態で取材旅行に行くのも気が引ける
なんせ、今回は久々に古本屋と一緒だ。そもそも無事に帰れるのか?

夕士はグルグル考えながら、シトシトと降る雨をただ眺めていた

長谷が自室(俺の隣 201号室)になっこを抱きかかえて戻った後、
夕士はメールにするか、電話にするか迷ったあげく、メールを選んだ

  [To]千晶
  [subject]明日、取材旅行に出かける
  [body]体調崩してないか?
   最近、店に行けてないが、帰国後立ち寄るよ。

簡素な文書を打ち、[送信]とタッチする

暫くすると、ピロリーンと間抜けなメール着信音が鳴り、確認する

  [To]稲葉
  [subject]Re:明日、取材旅行に出かける
  [body]俺の心配はいいから、気を付けて行って来い
     土産話を楽しみにしてる

普通にメールで会話ができたことに、少し安堵していた
千晶の声を聞きたい --- とも思っていたが、うまく話せる自信がなかった

--- 取材旅行の後、落ち着いたら千晶に逢いに行こう
その時、この間の意味も含めて確認をしよう

夕士は部屋の電気を消すと、雨音を子守唄にして深い眠りの世界へ旅立った



出発当日の早朝、夕士達は長谷の運転する車の中にいた

「今回も"ミステリー&サスペンス"な旅が待ってるぞ!夕士!!」
朝からハイテンションな古本屋をジトッと睨みつける
「いや…"ミステリー"はともかく、"サスペンス"はいらないッス!」

「今回の旅先はイギリスですよね?古本屋さん」
長谷は運転しながらバックミラー越しに後部座席に座る古本屋に話しかけた

「そう。『コティングリー妖精事件』って知ってか?」
「二人の少女が、妖精と一緒に写真に写ったという?」
古本屋は長谷の回答に満足そうに頷く


1916年7月イギリス。
ブラッドフォード近くのコティングリー村に住む2 人の女の子が世に大騒動を起こす。
フランシス・グリフィス(16歳)とエルシー・ライト(11歳)は従姉妹同士で、
コティングリーの森や川でいつも一緒に遊んでいた。

二人はよく「私たち、いつも妖精たちと遊んでるの」と、まわりの大人たちに話していたが、
もちろん信じるものはいなかった。

ある日二人が父親のカメラをかりて、証拠写真をとってきた。
驚く事にフランシスの周りに妖精らしきものが写り込んでいた。
小さい人物は背中からはねがはえており、エリザベス調の薄い服を着ていた。
父親は最初驚いたが、二人のイタズラだと思いそのときは信じなかった。

「ところが、二か月後に二枚目の妖精写真が撮影されたんだわ」

現像した父親は念のため、他の人に相談してみることにした。
その相手は…

「有名作家アーサー・コナン・ドイル。『シャーロック・ホームズ』だな」

ドイルがこの写真は本物だと語ったところから、この事件は世界中にしられることになった。

「事件から50年以上たって、事件の真実ってやつが明るみに出たんだよ」

1965年、忘れ去られていたこの事件をデイリーエクスプレスの記者が調べ始めた。
エルシーのもとを訪れたところ、彼女が「あの事件は偽造だったのよ」と認めた。

「それじゃ『コティングリー妖精事件』についてはこれ以上の成果はないのでは?」
長谷は古本屋に確かめるように尋ねた

「いや、実はさ。「最後の一枚だけは本物」だと、死の最後まで言い続けたらしいぜ」
古本屋の代わりに夕士が答える

すでに老婆になっていた二人だが、実際に妖精をみていたのだと語る。
しかし写真にはどうしても写らず、信じてほしくて偽造写真を作ったそうだ。

そして、問題の5枚目の写真には、中央に渦巻いた、他のと雰囲気の異なる何かが写っていた

俺の入手した情報によるとだな---と古本屋は顎を擦りながら続けた
「トリックに使われていた『プリンセス・メアリーのギフトブック』ってのが
魔道書の可能性がある」

「一般に販売されたんだが、二人の少女が使用していた『本』がアタリらしい」
夕士も古本屋に続けて補足した

「なるほど…今回の目的はそれか…」と長谷は納得いったように頷く

「他にもあるが…」と古本屋がボソッと呟いたが、夕士は聞かなかったことにした

作品名:妖アパ 千晶x夕士 『想』 作家名:jyoshico