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柴乃 導ヶ士
柴乃 導ヶ士
novelistID. 52201
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M.G.S the Markhor Fighter

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page3 潜入



「ジョニー…どこかで会ったことが?」
「いや、ない。 …お前みたいな変人は初めてだ。」
「変人…」
こいつ、そう言いたげに苦虫を噛んだような顔を見せ、
その先の野球帽の男が嘲笑うようにその口を踊らせた。
「この山の気候は異常だ。 分かるだろ? スネーク。
その服装で居ればあと数時間、いや数分で凍死する。
…これを上に着るんだ。 そうすれば少しはもつはず。」

男は持っていたコンテナから装備を取り出した。
スノーパターンの迷彩に、寒冷地用に調整された骨格…
それを覆い隠す注連縄のような人工筋肉。
…ケブラー繊維と特殊合金で組まれた外装に圧倒される。
「これはいったい?」
「陸軍が試作開発した強化外骨格。…そのプロトタイプだ。
こいつはナノマシンに同調して各部の筋肉を増強させる効果を持ち、
ボムブラストスーツやベアスーツの機能をよりスマートに織り込んである。」
「まるで"ターミネーター"だな。」
「それ以上さ。」
まるで体が一回り大きくなった気分に戸惑いながらも、
徐々に使い勝手を身に付けてゆくのが分かる。
重さはナノマシン経由の人工筋肉により緩和され、
まるで漫画の中のヒーローになったようだった。

「…よし、行くなら早めに行こう。」
「そうだな、それでどう潜入するつもりなんだ?」
「基地の警備はナノマシンを持つ陸軍兵士が行っている。
武器はシステム管理された物を使い、練度も高い。
…そして一番問題なのが…個人レベルのレーダーの存在だ。」
「…まさか、ソリトンレーダーか?」
「いや、それほど正確な物じゃない。もっと簡素化されている。
人工衛星からリアルタイムで送信される位置情報をナノマシンで受信、
周囲のあらゆる"動き"や"音"をMAPに追加表示するシステムだ。」
「欠点はあるのか?」
「位置情報の受信を阻害するか、探知範囲外から無力化するか…」
「つまるところ、近距離戦は避けるべきだな」
「いや、このシステムは容量が大きいからタイムラグがよく起こる。
そこを突ければ近距離で仕留めることはできるはずだ。」

「タイムラグを意図的に発生させ、そのうちに基地へ潜入すれば
痕跡を残さず任務を遂行できる…そういうことだな?」
「ご明察だなスネーク、流石だよ。」
着替え終えた姿でスネークは鼻を得意げに鳴らす。
ここから基地までは、敵が乗ってきたスノーモービルで行ける。
一台は配線を焼き切り走行不能にしたうえでキーを折った。
爆発すれば音と振動で雪崩が起こるだろうと彼からの提案だった。

「ジョニー、基地が見えてきたぞ。」
「"吹雪の割れ目"だ、また見えなくなる前に覚えておけよ。」
「…近くに小屋がある。 その裏にこいつを止めるぞ。」
「copy」
スロットルを回しそのままでクラッチを切る。
あとは慣性で静かに滑り、小屋の裏に止まるよう調節した。
スノーモービルは赤外線装置で発見されないよう雪に埋め、
クリアリングをした小屋の中で武器装備を室内用に持ち変える。
PDWにフラッシュバン、麻酔銃を装備し拳銃をホルスターにしまう
彼はM14のスコープをホロサイトに変え、グレネード、チャフ、
50口径のマグナムをベルトに挟んで煙草をくわえた。
その間、スネークは彼の装備からもうひとつの煙草をこっそり頂戴した。

作品名:M.G.S the Markhor Fighter 作家名:柴乃 導ヶ士