【カイハク】ファム・ファタール
突然、光が飛び込んでくる。眩しさに目を瞑り、身を竦めていると、誰かの声がした。
「ハク、目を開けてごらん」
恐る恐る瞼を開くと、鮮やかな青が飛び込んでくる。
光と色の洪水。その中で、一際目を引く、青。
「あの・・・・・・」
口を開いたハクは、自分の声に驚き戸惑った。何を言えばいいのか、何をすればいいのか。目の前の相手は、端整な顔立ちに柔らかな笑みを浮かべる。
「私はカイト。ハクに聞きたいことがある」
「えっ・・・・・・あ、はい」
「君はオートマタとして作られ、私が目覚めさせた。さて、目覚める前の記憶は、何か残っているか?」
ハクは戸惑い、視線をさまよわせた。最低限の家具だけ置かれた、殺風景な部屋。目の前の相手には、少し不釣り合いな気もする。
「私・・・・・・何も・・・・・・」
言い掛けて、突然一つの光景が蘇った。
月明かりの中、もつれ合う二つの影。恐ろしい悲鳴と、何かが倒れる音。煌めく光が、二度三度と振り下ろされる・・・・・・。
ハクはたまらず目を瞑り、耳を押さえてしゃがみ込んだ。
「無理に思い出さなくていい」
カイトの声がして、そっと体を抱き起こされる。恐る恐る目を開けたハクは、青い瞳を見つめながら、恐ろしい光景のことを話した。
「私・・・・・・何を見たのでしょう? 一体、どうすれば」
「考えなくていい。時期が来れば分かる。今は待つことだ」
「・・・・・・此処、で?」
ぼんやりとカイトを見上げるハクに、相手は頷いて、
「そう。此処には私と友人しかいないから、気楽にしていればいい。直ぐに慣れる」
「友人・・・・・・? その方は、何処に?」
ハクの問いかけに、カイトは悪戯っぽく笑う。
「彼は人見知りでね」
作品名:【カイハク】ファム・ファタール 作家名:シャオ