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【カイハク】ファム・ファタール

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目覚めたばかりのオートマタにとって、世の中の全ては目新しいことばかりだった。当初はカイトの手を借りて、慣れてきたらハクは一人で屋敷の中を見て回る。歯車で動くはずの自分が「目覚めた」のはどういう訳か気になるときもあったが、今のハクには、それ以上に知りたいことが多すぎた。
一番気になっているのは、カイトの友人であるライのこと。時折姿を見かけることはあっても、決して近づいてはこず、ハクが近寄ろうとすると何処かへ行ってしまう。自分の存在が気にくわないのだろうかとカイトに相談しても、「人見知りなだけだ」と笑われた。
ハクは悩んだ末、悩んでも仕方のないことだと開き直る。カイトの言うように、「時期が来れば分かる」ことだろう。

ハクは、束ねられた新聞の中に、自分がオークションに掛けられた時の記事を見つけた。「傾国の美女」という紹介に面はゆい気持ちになりながら、落札したシャンピニオン伯爵の経歴に目を通す。奥方のクラーラ夫人も名門の出で、上流階級のロマンス事情についても触れられていた。
そのままいくつかの新聞を流し読みしていたら、シャンピニオン伯爵が暴漢に襲われた記事に目を留める。詳しい内容を読もうとしたら、来客を告げるベルが鳴った。
ハクは飛び上がると、読みかけの新聞もそのままに、急いで客間に戻る。かねてからカイトに言われていた通り、台座の上で息を顰めた。



「たびたび申し訳ございません」

トレイルは、げっそりした顔で頭を下げる。彼は自分の生まれ故郷に誇りと愛着を持っていたが、今は呪いの言葉を吐きかけてやりたい気分だった。
カイトは前回と同じように、構わないと手を振り、

「伯爵の事件で、何か進展がありましたか?」
「ああ、ええ、まあ、その、今日はですね、何と言いますか・・・・・・」