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【カイハク】ファム・ファタール

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歯切れ悪く言葉を濁しながら、トレイルは手帳を取り出す。
また下らない噂が原因なのだ。今度は例のオートマタが夜な夜な動き回っているというもの。伯爵の屋敷にあるはずの自動人形が、何故此処に持ち込まれたのかは、伯爵夫人から既に事情を聞いていた。その心情は十分理解出来るものだし、事件と関わりがあるとは到底思えない。それでも、地方議員の娘だか従姉妹だか名付け親だかが騒ぎ立て、またトレイルに押し付けられたのだ。
溜め息をついて、伯爵家から譲られたオートマタについて聞くと、カイトは合点がいったというように頷いて、

「ああ、あれが噂になっているのですか。動きますよ、当然」
「歯車で、ですね」

カイトのしれっとした言葉に、トレイルは付け加える。さすがに、黒魔術云々の戯れ言には付き合う気力がなかった。

「ご自分の目でご覧になりますか?」

カイトに促され、トレイルはハクが飾られている部屋へと案内された。
殺風景な部屋は、普段使われていない客間なのだという。そこに、ハクが一人佇んでいた。
トレイルは近づいて、しげしげと人形を眺める。目の前の人形は、確かに今にも動き出しそうなくらいに見えた。芸術には疎いトレイルだが、その美しさは理解できる。だからと言って、勝手に歩き回るとは思わないが。

「どうも、大変お手数をお掛けしまして」
「いえいえ、お気になさらずに。伯爵の事件には、私も関心を持っておりますから」

トレイルはカイトに頭を下げると、見送りは結構ですのでと言い、屋敷を辞した。