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【カイハク】ファム・ファタール

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三十年前に行方不明となっていたオートマタが発見され、シャンピニオン伯爵が高額で競り落としたという記事が、紙面を賑わせていた。
カイトは紙面から顔を上げ、向かいのソファーで知恵の輪を弄んでいる男に視線を向ける。

「ハクが、オークションに掛けられたそうだ」
「・・・・・・うん」
「競り落としたのは、シャンピニオン伯爵」
「・・・・・・うん」
「かなりの高額だとかで、話題になっている」
「・・・・・・うん」
「話を聞くときは、相手の目を見るものだ」
「うるさい黙れ」

カイトは肩を竦め、新聞を脇に置いた。手を伸ばして、相手の知恵の輪を取り上げる。

「何だよ」
「ライ、ハクが見つかったそうだ。三十年振りに」

ライと呼ばれた青年は、うさんくさそうに新聞に目をやり、「動くのか?」と言った。

「手入れをしたんだろう」
「誰が?」
「お前でないことは確かだ」

ライはソファーに身を沈めると、手を伸ばして知恵の輪を返すよう要求する。カイトは知恵の輪を外してから、ライの膝に投げた。

「ふざけんな」
「手間を省いてやったんだ、もう少し喜べ」