【カイハク】ファム・ファタール
クラーラは、病院前に呼びつけた馬車に乗り込んだ。一人になった途端、両の目から涙が溢れ出す。
夫は目を覚ましたけれど、その心に自分はいなかった。夫が口にしたのは、真っ先に心配したのは、自分ではなかった・・・・・・。
またあの人形に奪われた。男を惑わす、魔性の女。あの人形のせいで。あの人形がいるから。
どうして、私から奪うの? 一度ならず、二度までも。
クラーラは、頬を濡らす涙をぬぐおうともせず、ただただ考えていた。
作品名:【カイハク】ファム・ファタール 作家名:シャオ