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【カイハク】ファム・ファタール

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気を失ったクラーラは、カイトが屋敷に帰すと言って連れて行く。ハクは、割れた窓ガラスを片づけながら、ライの様子を伺っていた。無言でガラス片を集めるライは、先ほどから一言も口を利かない。
何故、クラーラが自分を襲ったのか、ライとクラーラはどういう関係なのか、カイトの言葉の意味は。聞きたいことは山ほどあるけれど、相手の突き放したような空気に、ハクは何も言えないでいた。
カチャカチャと、ガラスの触れ合う音だけが響く中、ハクは意を決して、躊躇いがちに口を開いた。

「あの・・・・・・どういうことなのか・・・・・・」

ライは顔を上げ、ハクの顔を見つめる。射るような眼差しに、ハクがおどおどと視線を逸らすと、

「三十年も前の話だ」

ハクは、恐る恐るライの方を向いた。ライは顔を伏せたまま、言葉を続ける。

「三十年前、俺はクラーラに惚れていた」