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流れ星 3

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  「お疲れ様でした。」

着陸が成功し肩の力を抜いてベルトを外すと第一艦橋から南部がやってきた。ノックをして中に入って来ると一言そう言った本人が一番疲れた顔をしていた。

  「南部こそ、疲れただろう。明日、明後日と休みだ。しっかり体を休めるといい。」

宇宙を航行してきたものはその星の重力に体を慣らすために二日間、休養しなくてはいけないと云う規定がある。

  「はい、ありがとうございます。出口にご案内しますのでどうぞ、こちらへ。」

南部が出口を案内しようとしたが

  「一般のクルーを先に下すがいい。彼らが一番気を使って体を使って一番疲れて
   いるだろうから。」

藤堂の言葉に南部は敬礼しながら“では後でお迎えに上がります”と告げると艦長室を後にした。




  「普段と随分違うな。」

藤堂は父親の代わりにパーティに出てる南部と軍の中で働く南部といろんな顔の南部を見てきた。初めて戦艦に乗って勤務している南部を見た。

  「長官?」(ユキ)
  「いや、いつも縁の下の力持ち、的な感じだったからこうして上に立つ南部を
   初めて見た気がしてな…。いや、彼も優秀な訓練予備生でな…同じ学校に太田が
   いて。デコボココンビで本当に仲が良かった、と聞いた。まぁ南部は短気で
   父君があの性格を何とかしたい、と常々言っていたが…なかなか堂々とした
   モンじゃないか。さすが、古代を支えてきただけあるな。」

藤堂が満足気につぶやく。

  「ふふふ、お父様がよく言ってらっしゃいますもんね。でも私達の間でも
   “どこが?”って思う事いっぱいなんですが古代くんたちはよく知ってるみたいで
   私が首をかしげても笑うばっかりなんです。やっぱり付き合いが長いと
   そうなるんでしょうか?」(ユキ)
  「普段はいいところのおぼっちゃま、って空気を纏ってるからな。月基地に配属
   されてからの噂はよく上がって来ていたから…。ユキ達の代の予備生は本当に個性
   豊かでおもしろかったよ。いや、面白い、で現在進行形だな。過去形にしちゃ
   いかんな。」

藤堂がそう言いながら笑う。

  「面白い?ですか?」

ユキが問う

  「古代も島も個性豊かだ。多分、普通に接しただけじゃ個性がぶつかり合いすぎて
   友人にもなれなかったかもしれない。だけどそこにいろんな人間がかかわって
   きっとお互いがいなくてはならない存在になっている事だろう。古代と島
   だけじゃない。ユキも真田もそうだ。太田と南部、そして加藤と山本と相原。
   偶然にも同い年で訓練予備生として選ばれて月基地で出逢って。ヤマトに
   乗るクルーを選考していた時一年先に選ばれた予備生は誰もいなかった。
   ユキ達の代に掛けたんだよ。元からあるチームワークと真田くんの頭脳を乗せ
   飛び立てば不可能を可能にするかもしれない、とね。徳川君は沖田がどうしても
   外せない、とメンバーに入れた。新しいエンジンだから新人に、と思ったが
   エンジンは艦の心臓だからな。他の人に任せられなかったんだろう。」

藤堂が満足そうに頷く。

  「私も徳川さんと何度か仕事したがきっちり仕事を仕上げる人でね…。」(藤堂)
  「私は父の様な、そんな感じでした。よく一緒にお茶しましたわ。」

“おじいさん、じゃ早すぎますよね?”とユキは笑った。

  (ヤマトのクルーはこうやってユキに癒されていたのだろうか?)

藤堂はとてつもない未知の航海で誰もが不安だっただろうと思う。その中でこうして笑顔を向けられれば誰もがホッとするのではないか…と思った。藤堂は沖田の航海日誌を思い出していた。

  “ユキを入れる事で空気が和らぐだろう”

あれだけ人を寄せ付けなかった真田の変わり様を見れば誰もが納得するだろう。





しばらく雑談していると南部が二人を呼びに来た。








  「私もご一緒していいんでしょうか?」

藤堂がユキと食事に行くと言うのに南部が同行していた。

  「いや、一度ヤマトのクルーと食事をしてみたいと思っているのだがなかなか
   そんな機会を持てなくてな。」

重力の慣れ期間が終われば真っ先にサーシァの埋葬先に行く予定だ。これは先程南部に指令が出た。

  (必要最低限のクルーを乗せて極秘任務に同行するように。)

指令を送ったのはユキ。南部はユキと相談して数人乗っているヤマトのクルーを同行させることにした。




ショッピングモールの奥にある居酒屋へ向かう。ざわついている方が目立たずひっそり話ができると南部が思ったからだ。

作品名:流れ星 3 作家名:kei