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流れ星 3

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  「ビール3つ。」

席に着くとビールを注文し適当につまみを頼んで早々に持ってきてもらう。個室になっている居酒屋を選んだのでさっさと扉を閉めた。

  「残りのクルーはどうするんだ?」

藤堂が口を開いた。

  「護衛艦は処女航海を終えて一度点検に出す事にします。残りのクルーは
   輸送船団で面倒見てもらうようにします。」(南部)
  「そうか。」(藤堂)
  「必要なものをこの二日間で揃えます。最初から積み込んだもの以外でなにか
   必要なものはありませんか?」(南部)

南部には指令と一緒に積み込んだもののリストを見せている。

  「あの…お花を…献花したいのですが…ダメでしょうか?」

ふたりがユキを見る

  「たった一人で眠っていて埋葬してそれで終わり、じゃ余りにも寂しくて…
   せめて色鮮やかなお花をお供えしたいって…。」

ユキの長いまつげが揺れる。南部が藤堂の顔を見ると黙って頷くのが分かったので

  「じゃ、ユキさん。出発の前日、一緒に買に行きましょう。そんなの誰も
   反対しませんよ。でも、男じゃ気付かないことかもしれないな。」(南部)
  「そうだな、私も全く気付かなかったよ。ちなみに花は何を買おうと思って
   そう言ったのか?」(藤堂)
  「えぇ…スイトピーとか似合いそう、って勝手に思っていて…。」(ユキ)
  「スイトピー?」(南部)

南部が不思議そうに首をかしげる。ユキは自分の端末を出して花の画を見せる。

  「へぇ…かわいい花だね。」(南部)

南部は藤堂にそれを見せた。

  「なるほど。ここでそれは調達できるのか?」(藤堂)
  「はい、先日調べたところこちらでも手に入るという事でした。」(ユキ)
  「そこまで調べてるなら大丈夫ですね。一つ解決しました。他に何か要り様
   でしょうか?」

南部が問う

  「すみません、パッと浮かんだのがそれぐらいで…。」

それから3人は当日の作業の手順を確かめていた。












  「でも火星に行くのが南部くんの艦でよかった。やっぱり安心して乗れたもの。」

藤堂と別れて軍の施設のロビーで二人でお茶をしていた。

  「そうですか?古代の艦じゃなくて残念だったでしょう?」(南部)
  「え?…まぁそれは確かにそうだけど…」

ユキが顔を真っ赤にする

  「なんだかユキさんの素直な反応見てるとこっちが恥ずかしくなっちゃいますよ。
   いいなぁ~俺も地球で待ってくれてる彼女が欲しいです。」

南部の言いようがオーバーだったのでユキは笑った

  「やだ、南部くんなんてデートする人たくさんいて順番待ちの子がいっぱい
   なんじゃないの?」(ユキ)
  「まぁそこは否定しません。誰も狙ってるのは“南部”の看板ですからね。」

南部は深いため息をつく

  「普通の人って自分の後ろ盾、がないじゃない?だからあまり想像できないけど
   やっぱりバックグランド狙う人って分かるものなの?」(ユキ)
  「そりゃわかりますよ。デートで出かけるところはブランドを扱う店ばかり、
   とか食事は一流ホテルのレストラン、とか。買ってもらう、ごちそうして
   もらう気マンマンなんです。」(南部)
  「でも、出かけるの?」(ユキ)
  「仕方ないんですよ、父の仕事関係の方だったりすると無下にできなくて。」

ユキは南部の付き合いも義務っぽい所がある事に初めて気付いた。

  「そうなんだ…。」(ユキ)
  「居酒屋でわいわいしながら、の方が会話だって楽しい。ナイフとフォーク
   使って食べるより断然おいしい。フランス料理よりおにぎりの方がおいしいに
   決まってるんです!」

南部はそう言ってウーロン茶を一口飲んだ。

  「南部くん飲み足りない?ウーロン茶で大丈夫?」(ユキ)
  「結構居酒屋で飲んだのでこれで充分ですよ。ところでユキさん、明日は
   どうします?時間があるなら私と出かけませんか?」(南部)
  「明日?」

ユキはこの二日間の事全く何も考えていなかった。

  「そうね…予定なにも立ててなかった。どこか行くあてあるの?」(ユキ)
  「せっかくだからゆっくり買い物でもしましょう。古代が帰って来た時デートで
   着る服とか。」

南部の言葉にユキが固まる。

  (そう言えば…部屋着以外余り服ないかも。…須藤さんのドレスしかクローゼットに
   入ってない…。)

ユキはじっと南部を見た。

  「な…なんでしょう?」

南部が一瞬後ずさり…というか椅子の背もたれに体を預けた。

  「南部くん、センスよさそうだから選んでもらおうかな…私買い物らしい
   買い物、てした事ないの…。」

ユキの告白に南部は驚いた


作品名:流れ星 3 作家名:kei