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流れ星 3

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  「えぇ~うそでしょう?」(南部)
  「だって12で出てきてそれから勉強しかしてないもの…地球に帰って来て
   古代くんがスーツ一着買ってくれたけどそれだけ…かな。普段は制服だから
   部屋は通販のワンピースだし…。自分が何が似合うかも全く分からない…あ~
   でも女性の買い物に男性は付き合いたくない、って何かに書いてあったっけ…
   ごめんなさい、今の一言取り消して!」

ユキは真っ赤になりながら南部に頭を下げた。

  「ユキさんの頼みじゃ断れないでしょう?どうせ暇ですしご同行しますよ。
   靴のサイズはいくつですか?」(南部)
  「23…。」(ユキ)
  「服を買う時はクツも買いましょう。軍のハイヒール以外にクツ、持ってます?」

南部が聴く

  「え、っと淡いピンクのしかない…。」

ユキが答える。

  「まず黒は一つ揃えましょう。でもここで買うと荷物になっちゃうので靴は
   地球で買って下さいね。ここでは服を選ぶだけ。服なら小さくたためば
   荷物にならないし。あ、気に入ったら同じ店で地球から寮に送ってもらえば
   手間もかからないか。よし、そうしよう。クツもそれで手配すればいいか。」

南部はひとり納得して話を進めていく。

  「南部くん?」(ユキ)
  「うぉ~!がぜん、やる気出てきました。明日、11時にここに集合しましょう!」

南部は酔い覚ましのウーロン茶を一気飲みした。


















  「明日、南部くんと買い物行ってくるね。サーシァさんにお供えするものとか
   いろいろ買ってくるの。どうせ二日間、何もできないし。ついでにブラブラ
   してくるね。」

ユキからメールが入っていた。藤堂が火星に向かった理由を進も聞いている。

  <そうだったね。一緒に行けないのが残念だ。ユキとの出逢いを予言されたような
   気がしてなんだか不思議な出逢いだったよ。あ、亡骸に出逢い、ってちょっと
   変かもしれないけどホント、そんな感じ。
   でもね、ユキ。これだけは覚えていて。最初は火星で亡くなった人が生き返った
   のかと思って驚いたけどそれだけだからね。多分ユキの事だからサーシァ
   さん見たら“サーシァさんが生きてたら”って絶対考えそうで。俺にはifなんて
   考えられないしユキしか見えないから安心して。もし心変わりなんてしたら
   向こうに逝っちゃったやつらに何言われるかわからない。呪われるのだけは
   勘弁してほしいし。とにかく余計な事考えないで。>

進は画面の文字をもう一度追うと送信した。







  「古代くん…。」

ユキが進のメールを読んだ。いつも自分の心にあったわだかまり。常に“もしもサーシァさんが生きていたら”が付きまとっていた。

  (古代くん、って鈍いのか鋭いのかわからない時があるわよね…。)

ユキは画面に向かって思わず微笑んでしまった。










翌日ユキは11時5分前に南部と約束した場所に向かうと南部はすでに到着してユキを待っていた。

  「珍しい。」

ユキが南部の姿を見て開口一番そう言った。

  「そうですね、普段は絶対はずしませんから。」

ユキは南部がメガネなんてかけなくても大丈夫な事を知っている。

  「たまにはいいかな、って。」






ユキはイスカンダルの復路で暇そうにしている南部に何気なく聞いた事があった。なぜメガネを掛けているのか。(この時代、近視や乱視、老眼まで軽い手術で普通の視力に矯正できると仮定します。)裸眼で全く問題ない事を乗務前の健康診断で知った。

  《女性除けに決まってるじゃないですか。》

にっこり柔らかく笑う辺り嘘じゃない、とユキは思った。南部はメガネを外すと意外とイケメンだったりするのだ。上品な身のこなしに背も高く女性に優しいと、きたら自分に自信のある女性はタックル(アタックなんてな生易しい表現は敢えて避けました)をする如く南部にアタックするだろうと何度か思った。

そして南部もユキに気がある頃はわざとらしく食堂で一緒に食事をしている時とかにメガネを拭くついでにメガネを外した素顔を見せたりしていた。


   しかし全くその効果ナシ







南部は優れた洞察力でユキが誰に気があるのかすぐに気付いた。それは誰よりも早かったと自負している。







作品名:流れ星 3 作家名:kei