白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
「なっ!? なんてコト言うのっ!!
計佑くんは、子供には気安いっていう、ただそれだけのコトなんだからねっ!?」
──昨日、計佑には「女ったらし」などと言っておきながら、
他人に言われるのは面白くない雪姫がそんな風に弁護したが、
「だからさぁ、その気安すぎるトコロが問題なんだってば〜。
『子供相手だと、なーんにも考えずに口説くような言動を繰り返す』
性格がまずいんじゃないの、って言ってるんだよ〜?」
「……え? そ、それはまあ……
2つしか違わないアリスを子供って決めつけての、あの振る舞いはどうかと思うけど……」
そのアリスの言い分には一応同意できるので頷いたのだが、アリスが言いたい事はちょっと違っていたようだ。
「も〜……私のコトはいいんだってばぁ。私はあんなのにひっかかったりしないもん。
そうじゃなくてね、私への対応とか見てるとさぁ……アイツって、子供相手だと全然遠慮がないでしょお?」
「う、うん……そうね、それは確かに」
まくらへの対応を見ていても、年下相手だと随分強気で、遠慮がない性分なのは間違いなかった。
「それじゃあさあ、今から10年くらい後とかだよ?
アイツが大人になったらね、そしたら高校生とかなんて子供にしか見えないでしょう?
(実際はそんな事はないのだけど、この年頃の子供達ならそんな風に思えるのだろう)
………そうしたらどうなると思う?」
「…………」
想像してみる。
25、6歳くらいの立派な青年になった計佑が、
今の自分と同い年くらいの女の子達を、カワイイと褒めまくったり、お腹を撫でたり髪を梳いたり──
──いやいやいやっ、そんな!! いくらなんでも、そんなコトはありえないし!!!!
そう、いくらなんでも、そんな事をやる筈はない。……と、思う。……けれど。
アリスと同じとまではいかなくても、
確かに気安く……碌な遠慮もせずに、色々やらかしそうな気はする……
──そう気付いた瞬間、ゾクゥ……っと、背筋を悪寒が走った。
──……全然ありえなくない!! 計佑くんだったら、すっごいありそうな気がする……!!!
アリスの言いたい事を理解した雪姫が、恐ろしい将来にブルリと震えた。
その震えを太ももから感じたアリスが、
「あははははは!! おねえちゃん本気で焦ってる!! そんな未来のコトなんてわっかんないのに、おっかし〜〜〜!!!!」
お腹を抱えて、足をバタつかせて笑い出した。
……アリスとしてはちょっとしたからかいのつもりだったようだが、心配性の乙女は本当に焦っていた。
──笑い事じゃないよぉっ!? あの人の場合、本当に実現しそうな未来じゃないの……!!
終いには、爪まで噛み始めてしまう雪姫。
そんな雪姫を他所に、アリスはしばらく笑い続けていたが、
やがて落ち着いてくると、その表情をニマっとしたものに変えた。
「……ん〜? おねえちゃん、アイツとの未来が本気で不安になっちゃった?
だったら今のウチにやめといた方がいいんじゃないかな〜?
……そしたらさあ、さっき言った通り、けーすけは私がもらっといてあげるからさ〜」
「なあっ!? ア、アリスっ!! や、やっぱりあなた、本当は計佑くんのことっ……!?」
10年後の脅威より、今の脅威──アリスの言葉に雪姫が慌てふためくと、
「あははははは!! また引っかかった!! おねえちゃんホントにカワイイな〜〜〜!!!
ぬいぐるみとかの趣味だけかと思ってたのに、ホントはこんなに子供っぽかったんだ〜〜〜〜!!!」
またもアリスがゲラゲラと笑い始めて。
「な、なっ、な……! ……もう怒った!! 絶対許しませんからねっアリス!!!!」
ついにキレた雪姫が、アリスに襲いかかる。
──とは言っても、暴力なんかには基本無縁の少女、せいぜいくすぐりにかかる程度の事だったが……
しかし、昼間の計佑の言葉からもわかる通り、くすぐりをそこまで苦手としない少女にはあまり効果がなくて。
それどころか逆襲にあい、雪姫の方こそ悶絶する羽目になってしまい──
……この日を境に、雪姫とアリスの関係は微妙に逆転してしまうのだった。
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<22話のあとがき>
今回、計佑×雪姫先輩はちょっぴりしかなかったけど、
全体的にはそれなりのラブコメに出来た気はします。
好みで言うなら、もっともっとコメディ寄りにしたいくらいなんですけどね……
そして今回、先輩の出番が少ないですが、別の方向から雪姫を褒めてみたつもりです。
『あんな仕打ち受けても好きでい続けてくれてるなんて、本当にすごい事なんだよ!?』
というのを、まくらの口から言わせてみました。
やっぱり硝子を書くのはおもしろい!!
いや、もう原作硝子ちゃんとは完全に別人なんだけど……
この腹黒硝子ちゃんはやっぱり書いてて楽しいなあ、と。
雪姫・計佑の性格をきっちり把握していて、
あっという間に事態を読み解いていく様が、実に二次元キャラらしい聡明さじゃないかなあと。
ヒトの心を読むという芸当に関しては、この世界の硝子ちゃんは群を抜いているんですけど、
実は雪姫に対して特に秀でているイメージです。
まあそれを、いつか書くつもりでいる硝子編? とかに活かしたいとは思ってるんですけど。
「高いたか〜い……流石にホタルよりは重いな、お前。まあアイツは今、6歳くらいだから当たり前だけど……」
↑
最初は、ただ『ホタルよりは重いなー』くらいしか口にさせないつもりだったんですけど、
それだと、ここの雪姫ちゃんは脊髄反射で『ホタルって誰なのっ!?』とか嫉妬しかねないので(汗)
流石に幼女相手に妬かせるのはやめとくかなーっと、ホタルの年齢まで計佑に喋らせてみました。
「……アリスちゃん、まくら、手を貸してくれるかな?」
「……喜んで貸すぞ、硝子センパイ」
↑ささやかな拘り。硝子にだけは『センパイ』をつけるアリス……
"いじられて嬉しいのは先輩だけ" これは一応14話で言ってましたよね。
計佑のサプライズに、ちょっと嬉しそうな硝子なんですけど、
計佑が触れてきてくれたというのと、雪姫と(多少は違うけど)同じように扱ってもらったという
2つの理由があるんですけど……表現は出来てないんでしょうね(汗)
硝子の "策" ですけど、これは勿論計佑の女ったらしを修正させないというものです。
なんでそんな事をするかというと、これは雪姫との仲を妨害するためで。
計佑には今までどおり "天然女ったらし" として暴れてもらって、他の女のコを惑わせてもらって。
それで雪姫には愛想をつかしてもらおうとかそんな感じで。
──まあ、他にもライバルが増えるかもという諸刃の剣なのですが、
この世界の硝子としては、雪姫だけは、どうしても計佑の相手として認められない人物なのです。
……あ。別に、雪姫と硝子に過去になんか因縁があったとかそんな大層な話ではないんですけど。
単にコンプレックスの話です(-_-;)
原作の世界では、まくらからの追求に逃げ出そうとする計佑でしたけど、
作品名:白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル 作家名:GOHON