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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 呼び止めるように尋ねてきた由希子に、一瞬考えてから答える。

「……そのつもりだったんだけど……ちょっと気になるコトがあるんで、
もしかしたら帰ってくる事あるかも。……まあ、一応は帰ってくる予定はないってことで」
「りょーかい、あんたも気をつけるんだよ」

「あいよー」と由希子に手を上げ、部屋に向かった。
荷物を取ってくる為と、──たった今、由希子に言った "気になるコト" のために。

─────────────────────────────────

「……おーいホタル、調子はどうだ……?」

 部屋に戻った計佑が、まずやった事は──ホタルの心配だった。
ベッドに寝転がったままのホタルの元へ行き、顔を覗き込む。

「……あ。ケイスケ……おはよう……」
「いや、挨拶はさっきもしたぞ……? 本当に大丈夫なのか……?」

 しゃがみこんで、ホタルの額に手を当ててみる。──平熱だった。
……まあ幽霊に平熱というのもおかしな話だったが、触れた感触はいつも通りではあった。
ぼんやりとしたままのホタルを、より近づいて覗きこむ。

「幽霊に病気とかあんのか……? 昨夜までは元気だったのに、一体どうしちゃったんだよ……」

──由希子に語った『気になるコト』……それは、ホタルのこの状態についてだった。

『ホントは、別にスイミンは必要ないんだー。起きていようと思えば、いつまででも起きていられるんだよー』

 以前にそんな事を言っていて、
実際いつもは計佑より早く目を覚まし、元気一杯に計佑を起こしてくれていたのだが。
 今朝に限っては、なかなか目を覚まさず、なんだか様子がおかしいのだった。

──……合宿、行くのやめたほうがいいのかな……
  とは言っても、ホタルにつきっきりでいてもオレに何が出来るかって話なんだけど……

 そんな事まで考え始めていると、ホタルがようやく、ゆっくりと身体を起こしてきた。
そして両足を伸ばしたまま座り込んでいたホタルだが、やがて両手を握ったり開いたりし始めた。
その目は、まだ半分閉じたままで。
 そんなホタルの顔を、ベッドに両肘を置いたまま見上げていた計佑が、
いよいよ不安になってまた声をかけようとした瞬間、ホタルが計佑の顔を見下ろしてきた。
そして、指を上に向けてピンと伸ばした右の掌を、計佑の顔のやや横辺りにつきだしてくる。

──……? 何を──

『バァン!!!! 』
疑問に思った瞬間に、突然の後ろからの爆音。慌てて振り向いた。と──
部屋の隅に積んであった、某週刊少年漫画雑誌の束が吹き飛んでいた──比喩ではなく、本当に木っ端微塵に。

──……え、な……

 あんぐりと口を開けた計佑の視界を埋め尽くす、舞い散る紙切れの吹雪。
思考が真っ白になった少年の耳に、ホタルのいつも通りの舌っ足らずな声が届いた。

「──チカラが、半分くらいまではもどってきてる……」

──ええええぇええ!!!?? ホッホタルって、こんなとんでもない力まで持ってたのかよ!!?

 掌を向けるだけで、触れもせずに分厚い漫画雑誌の束を紙吹雪にしてしまうなんて、
まるでかめ○め波とかの類ではないか。しかもこれで半分程度……!?

 恐れ慄く少年が、おそるおそるホタルを振り返ると……幼女は、いつも通りの笑顔を浮かべていた。

「おはよーケイスケ!! なんか心配かけちゃったみたいだね、ようやく目がさめたよー!!」
「そ、そうか……よかったな……」

 ぎこちなく答えた少年に、ホタルが抱きついてくる。
正直、今のトンデモ大砲のせいでちょっと……いやかなり恐ろしくて、ビクリと震えてしまう。
それでもホタルは全く気にせず、ニコニコと話しかけてきた。

「うん、この感覚なら多分今日か、遅くても明日のウチには、元の姿に戻れるんじゃないかなー?」
「えっ、そうなのか!? そうかっ、よかったなホタル!!」

 そのホタルの言葉に、恐れも吹き飛んだ。
ホタルの脇を抱きかかえて立ち上がると、くるくると回ってみせる。
ホタルもキャイキャイと喜んでみせたが、やがて回るのをやめた計佑にベッドに下ろされると、

「……でも、元に戻ったら、もうここを出ていかなきゃダメなんだよね……」

 寂しそうに呟いてきた。

「えっ、なんでだ?  いつまででもいていいんだぞ? ……まあ、流石に戻ったら添い寝はダメだけどな」

 最初はキョトンとして、けれど最後には苦笑しながら答える計佑。
それにホタルが、「ホントっっ!?」と寂しそうな顔から一転、
パァっと明るい顔になり、そして最後には頬を膨らませた。

「……でもなんでー? 寝るのも今まで通りでもいいでしょ〜?」
「いや、なんでも何も……戻ったら、お前のほうから絶対拒否すると思うんだけど」

 ポン、とホタルの頭に手を置きながら答える計佑に、

「……そっかなー……なんか案外、前よりしたくなる気がする……」
「あはははっ、ないない!!」

 ホタルが呟き、鈍感少年が笑って。

「……でも、ホントに悪い事とかじゃなくてよかったよ。これで安心して合宿行けるな」

 計佑が立ち上がる。

「……といっても、これから2日は帰って来ない予定んだよな。
……やっぱりたまには帰ってきたほうがいいかな?」

 ホタルの寂しさを心配した言葉だったが、

「んー、ヘイキだと思う。たえられなかったら、むしろこっちから飛んでくしー。
それに、これからはどーせ寝てばっかになると思うからー」

 そう答えたそばから、こてんと倒れこむホタル。

「なんだ、やっぱり何かキツイのかっ?」

 不安になって尋ねると、ホタルは笑顔を浮かべてみせた。

「……そうじゃないよー、でもなんだかすぐに眠くなってきて〜……
多分、一気にカラダとか戻りそうなせいなんじゃないかな〜……
とにかく、つらいとかじゃないから〜……」

 そう答えたホタルは、もう本当に眠そうで。

「……本当に大丈夫か……?」

 それでも不安が拭い切れずにもう一度問いかけると、ホタルは静かな笑みを浮かべた。

「……ああ。本当に平気だから、心配するな計佑……」

──ドキリとした。それは、展望台でのホタルのような、大人びた笑みと口調だった。

 驚いている間に、もうホタルは寝息を立て始めて。

──……本当に、戻りかけてるんだな……

 そして、ホタルの言う通りなら、合宿から戻る頃にはもう元の姿に戻ってしまっているのだろう。
 そうなれば、当然だが今までのようにじゃれついてきてくれる事もなくなって。
……正直、その事に一抹の寂しさを感じて、すやすやと眠るホタルの頭を一撫でする。

──そして、部屋を埋め尽くす紙切れの山を見渡して。

──……そりゃ、寝ぼけた子供のやった事だから叱れないけどさぁ……

 出発前に面倒な仕事が増えてしまったと、頭を痛くするのだった。

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 荷物を学校へと置き、雪姫や硝子と合流して。
試合が行われる球場へとやって来た計佑達だったが──
試合が始まった今、三人は揃ってポカーンと惚ける事しか出来なくなっていた。