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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 計佑が、初めて硝子にキレてしまう程に抱いた怒り。
それは嘲笑された事ではなく、自分とまくらの関係まで否定してきた事に対してだった。
自分の単純な思考は読めるかもしれないし、バカにされたって事実だからまだ仕方ない。
 けれど、自分とまくらが十年以上かけて築いてきた関係まで否定してきた時には、もう許せなかった。
自分達の距離の近さは、昔から散々からかわれてきた。
あまりにもうんざりして、学校では距離をとるようにしていた時期もあった。
 そんな風に色々あって、笑っていなせるようにもなってきて、
ようやく確立した──そんな自分たちの関係まで否定なんてさせない。

 硝子はからかってくるような事こそなかったが、
度々そういう関係前提で扱ってくる事には、内心思うところがあった。
 そして今、落ち込んで余裕がないところに、バカにしてきた上、
トドメにまくらとの関係まで否定してきた事で、ついに計佑も我慢の限界を超えてしまったのだった。

──須々野さんが、こんな無神経だとは思わなかったよ……

 思慮深い人だと思っていたのに。幻滅して、もう話す気もしなくなった。
立ち去ろうとして、けれど初めて聞く硝子の怒声には、流石に足が止まった。
 振り返って──

──な、なんで泣いて……?

 瞳に涙を貯めて、唇を噛み締める硝子の姿に戸惑った。
絡んできたのはそちらの方なのに。まるでわからなかった。
 けれど、その後の硝子の言葉でようやくわかった。
自分がまくらを傷つけてしまった事と、
──硝子は今、まくらの為にこんなに怒ってくれているんだという──硝子の怒りの理由が。

──ただ時間を重ねてきただけのオレなんかより、
  須々野さんの方がよっぽどまくらを思いやれてるじゃないかよ……!

 自分とまくらの長年の絆を否定された──そんな風に考えてキレてしまったけれど。
遙かに短い時間しか過ごしていない硝子の方が、今よほどまくらの事を気遣ってみせていた。
 その事にようやく気付いて、

──本当に何やってたんだよ、オレは……!! 須々野さんにも……!!

 一時でも硝子を疑った自分が恥ずかしくて、申し訳なくて。
すぐに謝ったけれど、謝罪の意味を勘違いしたらしい硝子はますます激昂した。
……けれど、弁解はしなかった。
 今の自分に出来ることは、せめて硝子の叱責を全部受け止める事だけ────そう思ったのだけれど、
雪姫が割って入ってきてしまった事で、そうも言っていられなくなった。
 今度は雪姫に対して声を荒げた硝子に、慌てて雪姫の前に回り込んだ。

「ま、待って須々野さん!! 悪いのは全部オレだから。先輩は、ただ仲裁しようとしてくれただけだから!!」

 自分のせいで、先輩に迷惑はかけられない──それが最初の感情だったけれど、
硝子のためにも止めなければいけなかった。
 雪姫は硝子の憧れの先輩でもあって、自分のせいで硝子と先輩の仲がおかしくなるような事なんて。
もうこれ以上硝子に迷惑をかけるわけにはいかない、そんな気持ちもあっての事だったけれど、
計佑が雪姫を庇った瞬間──硝子が傷ついたような表情をした。
 最初は、我に返った硝子が、先輩に怒鳴ってしまった事を自省してそんな顔をしたのだと思った。
けれど、硝子は

「……結局、その人なの……」

 辛うじて、計佑にだけは聞こえたであろう声量で呟いて。俯いてしまった。

「……え……?」

 その呟きの意味が解らなかった計佑が、それ以上は何も言えない間に、硝子が顔を上げた。
その表情は、怒ってるようで、でも涙を流す様は悲しんでいるようでもあって。

「……目覚くんは、絶対後悔するから……!!」

 そう言い捨てると、硝子は走りだして。

──けれど、計佑も雪姫も後を追うことは出来ず。ただ立ち尽くして見送る事しか出来なかった。

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第23話-2 『合宿初日の夜・硝子の策とアリス無双。「だって! 結局、私がアリスに勝てるトコなんてこれしかないんだもの!」』


 計佑達がバス停についても、硝子の姿はなく。
そして、バスが来る時間になっても硝子は現れず。
多分今は顔を合わせたくないのだろうと、諦めてバスに乗って。
 学校に戻って、夕方になって、アリスや茂武市が合流して──その頃になって、ようやく硝子は戻ってきた。
といっても、硝子は明らかに計佑の事を避けていた。
 雪姫に対しては、昼間の事は戻ってきて早々謝ってきたそうなのだけれど、
計佑に対しては、そんな事は一切なく。
 計佑の方から硝子に話しかけようとしても、
常に茂武市かアリスといるか、すぐに逃げ出すかで、深い話を出来る状況には決してしてくれなかった。
 そして日が完全に暮れて、
夕食を終えても未だ話をさせてくれない硝子に、ついに痺れを切らした少年がとった手段は──

──……なんかちょっとストーカーぽくてアレだけど……もうこんなんしかないじゃん……

……シャワー棟の出口前での、お風呂上りを待ち伏せする事だった。

──いやいや、一応ボディーガード的な意味もあるにはあるし!!

 夜とはいえ、学校の敷地内でそんな必要があるかは微妙だったけれど。
とにかく、計佑は今、シャワー棟そばのベンチに腰掛けて、硝子が出てくるのを待ち受けていた。と──

 ガチャリとドアの開く音がして、一人の少女が姿を見せた。計佑は慌てて立ち上がって、

──……え……誰……?

 一瞬、誰だかわからなかった。

──……あっ!? すっ須々野さんなのか!?

 髪を解いていて、メガネもつけていない硝子は、普段の印象とはまるで違っていて。
いつもよりずっと大人びて見える雰囲気と、なんだか凛々しさを感じさせる顔つきにしばらく見とれてしまった。
 そして、硝子もまた入り口を出てすぐのところで、計佑のほうを見つめたまま立ち尽くしていたのだけれど──
やがて、警戒するように身を竦めるとこちらを睨んできた。

「……目覚くんじゃ、ない、の……?」
「えっ、あっ!? そ、そう、オレだよ、目覚だよ!!」
「……なんだ、やっぱり目覚くんか……じっと黙ってるから、まさか違う人なのかと思った……」

 計佑がようやく口を開くと、硝子がほうっと溜息をついて、肩の力を抜くのが見て取れた。

──あ、そっか……メガネかけてないから、オレだってわかんなかったのか……

 謝りに来たのに、出だしからまたミスしてしまった。

「ご、ごめん……ホント俺気が利かなくて……待ちぶせみたいなコトしといて、
それなのに声もかけずに怯えさせたりして……」
「……ううん。こういうこともあるんじゃないかな、とは予想してたから……
私も、覚悟は決めて出てきたんだ……」

 計佑の謝罪に、硝子が俯いて答えて。メガネをかけると、顔を上げて問いかけてきた。

「……それで? どんな話なの?
……天文部をやめろ? これっきり絶交とか……?」
「ええぇ!? なっなにそれ!? 須々野さんそんなに怒ってるのっ!?」