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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 寂しそうに苦笑を浮かべながら言う硝子に、大いに慌てた。

──たっ、確かに須々野さんめちゃくちゃキレてたけど……!! まさか、そんなに後を引いちゃうなんて……!!

 ヒスを起こしても、結局はいつだって機嫌を直してくれるまくらや、
なんだかんだで優しい雪姫にばかり慣れてしまっていたのだろうか。

──普通は、女のコってキレさせたらもう終わりなのか……!?

 まさか、部活をやめるとか、絶交なんて話を切り出されるとはまるで予想していなかった少年が、そんな絶望感に襲われた。
 けれど、そんな計佑の反応に、硝子が怪訝そうな表情を浮かべた。

「……え? いえ、私じゃなくて、目覚くんのほうが怒ってるんでしょう?」
「い、いや違うよ!? オレは、昼間のことをちゃんと謝りたくて」

 咬み合わない会話に、きょとんとなる二人。……そして、先に口を開いたのは硝子だった。

「……なんで?  なんで私に謝る必要があるの? 目覚くんが謝らないといけないのは、まくらでしょう……?」
「いや、まくらにも勿論謝るよ。須々野さんに怒られた後、すぐにメールで謝ったし、
明日の朝、まくらが来たらちゃんと面と向かっても謝る。 ……でも、須々野さんにもちゃんと謝らなきゃいけないから」

 硝子の疑問に、計佑が答えた。すると硝子は、計佑から視線を逸らして、

「……だから、どうして私にも、なの? 私なんて、あんなに酷い事を言ったのに……」

 苦しそうな声で、また同じ質問をしてきた。
それに対して計佑は、まっすぐに硝子に向かって頭を下げた。

「須々野さんは、まくらのために、あんなに怒ってくれたんだよね。
気付きもしないで、失礼な態度とってごめんなさい。
須々野さんが教えてくれなかったら、オレはまくらを傷つけた事にも気づけなかったと思う。
……本当にありがとう。そして、本当にごめんなさい。
オレがバカだったせいで、あんなイヤな役回りさせることになってしまって。
……須々野さんは、もうオレに愛想つかしてるのかもしれないけど、
出来れば、その……なんとか許してもらって、まくらだけじゃなくて、オレの友達も、続けてほしい、んだけど……」

 頭を下げたまま、最後まで言い切って。
それでもまだ頭を下げ続けたまま、硝子からの返事を待った。
……やがて、硝子が歩み寄ってくると、肩に手をかけて、計佑の身体を起こしてきた。

「須々野さん……?」

 顔を上げると、硝子が涙を浮かべていて。それに戸惑った。

「……今度こそ、もう終わりかと思ったのに。
目覚くんのあんな怖い顔初めてで、無視までされて、今度こそもう、って……」
「うっ……ほっ、ホントにごめんなさい……!!」

 あの時の事を思い出しているのだろう、悲しそうな顔をする硝子に、慌ててもう一度頭を下げる。
けれど、頭を下げる途中で、硝子が計佑の肩を押さえてそれを止めた。

「いいよ、頭なんて下げなくて……謝らなきゃいけないのは、私のほうでしょう?」

 そう言った硝子が、逆に深々と頭を下げるので、今度は計佑が慌てて硝子の肩に手をかけて、頭を上げさせた。

「ちょっ、ちょっと!? なんで須々野さんが謝るのさ!?」

 慌てる計佑に、硝子は涙を拭いながら苦笑を浮かべた。

「確かに、まくらのために怒ってはいたけど。
……あそこまで酷い事言ったのは、目覚くんの反応が見たいって気持ちもいくらかあったから……」
「……オレの反応?」

 なんの話だかわからなかったけれど、それは大して気になる事ではなかった。

「……よくわかんないけど、一応許してはくれる……ってこと、かな?
これまで通り、部活も続けてくれるし、絶交なんかもなし……?」

 恐る恐る確認すると、硝子が軽く吹き出した。

「ぷっ……あはは。よくわかんないのに、そこは気にしないんだ。……やっぱり目覚くんには敵わないね……」

 そして今度は、はっきりと笑顔を浮かべた硝子が手を差し出してきて。計佑の手を握った。

「……うん。これからも、またよろしく、目覚くん……」
「うっうん!! よろしくねっ、須々野さん!!」

 握手した手をぶんぶんと振って、弾んだ声を上げる計佑に、また硝子が吹き出して。

──そんな風に、二人が暖かな雰囲気に包まれていたところで、
シャワー棟のドアが小さな音をたてて、少しだけ開いた。

「しょ、硝子ちゃ〜ん……ちゃんと待っててくれてるよね〜……?」

 少しだけ開いたドアの向こうから聞こえてきたのは、不安そうな雪姫の声だった。

「あっ、はい!! ちゃんと待ってますから。大丈夫ですよ、白井先輩」
「あっ、うんっ。ごめんね、もうちょっと待っててね」

 返事をした硝子に、雪姫が安心した声を出して。またすぐにドアが閉じた。

──あ、先輩も入ってたんだっけ……で、待っててくれって須々野さんに頼んでいたワケか……

 怖がりな雪姫の事だから、校舎から離れたシャワー棟に一人きりなんて耐えられなかったのだろう。

「……あ、じゃあオレは先に戻ってるね」

 硝子がついてるなら、雪姫のことは大丈夫だろう。
 お風呂上がりを待ち受けているというのも、
なんだかあまり褒められた物ではない気がしていたので、戻ろうとしたのだけれど。
 踵を返そうとした瞬間、硝子が何かを思いついたような顔をした。

「……ねえ、目覚くん。本当に、私に悪い事したって思ってる?」
「えっ? い、いやそれは勿論……本当にごめんなさい」

 また頭を下げようとしたところで、それは硝子が止めてきて。

「ううん、ごめんなさいはもういいの。……でも、本当にそう思ってるんなら、
一つ頼みっていうか……罰ゲームみたいなもの、受けてみてくれる……?」
「……え、罰ゲーム……?」

 上目遣いの硝子に、正直なところ警戒心が湧いた。
硝子の場合、罰ゲームなんて軽い言葉を使いつつも、
実は結構大変な事では──という不安が胸をよぎったのだった。

「うん。……後で、私が尋ねるコトに、頷いてくれるだけでいいんだけど……」
「……え?  それだけ……?」

 随分と簡単そうな罰ゲームに、拍子抜けした。

「なんだ、そんなコトくらいなら全然。それで許してくれるっていうなら全然いいよ」
「ううん、別に拒否してくれてもいいんだよ?  後で『やっぱりこれは無理!!』
ってなっても、許さないとかはないから、そこは安心してね?」

 安請け合いした瞬間、硝子の目がキラン!! と光った気がしたが、そんな光は一瞬で消えて。
後の言葉は、いつも通りの優しげな表情で硝子が言ってきた。

「じゃあとりあえずは、黙ってそこで待っていてね?」
「…………」

 コクンと無言で頷いてみせると、硝子はシャワー棟へと踵を返して。
ドアを少し開いて、中を覗き込みながら、

「白井先輩。私、ちょっと急いで戻らないといけない用事ができちゃって……すいませんが、先に戻りますね」
「えええ!? うっうそっ!! やだやだっっ、待ってよ硝子ちゃんっ!?」

 二人の会話は、計佑には今ひとつ聞き取れなかったが、雪姫の声が何やら焦った様子なのはわかった。