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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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──え、須々野さん……一体なに……?

 不審に思って少年が尋ねようとした瞬間、顔を戻してきた硝子が唇に人差し指を当てて
『まだ黙っていて』と伝えてきた。

……そして、素直にそれに従ってしまうのが、この少年だった。

 そんな計佑を確認した硝子が、また中を覗きこんで。

「……3……に〜……いーーーち……すいません、もう待てません」
「や──!!」

 硝子の言葉は、やっぱり計佑にはよく聞こえなかったけれど、雪姫の悲鳴が聞こえかけた気がした。
けれど、硝子がドアを閉じてしまったせいで、やはりはっきりとは聞き取れなくて。
 そして硝子は、素早くドアから数歩離れると。一瞬だけ、ニヤリとした笑みを計佑へと向けてきた。
今ひとつ訳がわからない計佑だったが、次の瞬間、

「やあああ!? まって待ってまって硝子ちゃあああ──!!?」

 バァン!! と扉が開け放たれて、中から雪姫が飛び出してきた。そして躓いて、

「っ! 危ないっ!!」

 転びそうになった雪姫を、ドアの前で待ち構えていた硝子が支えた。

「……っ……! あ、ありがとう硝子ちゃ、ん……」

 硝子に礼を言って身体を起こした雪姫が、計佑に気付いて、そこで固まった。

「……け、計佑くん……?」

 呆然と呟く雪姫。そんな雪姫を、計佑からもはっきり見えるように硝子が身体をずらす。
 そして雪姫の姿をはっきり認めた計佑も、呆気にとられていた。けれど、次の瞬間、

「ぶっ……!! くくっ……!!」

 計佑はつい吹き出してしまった──涙目になっている雪姫の格好が、あまりにも滑稽だったから。
 いつもは絹のように、真っ直ぐ綺麗に伸びている髪が、今はグチャグチャで。
前髪もうねりくねって額にベチャリと張り付いていた。
その頭に、クシャっと乗せられたタオルもまた、愉快なアクセントになっていて。
そして極めつけは、Tシャツの、頭を通す穴から、頭だけではなくて左腕まで一緒に飛び出していて──
片腕だけバンザイしている様な状態だった。

「うっ……く、くくっ……」
「ぷっ……ふふ、ふっ……」

 計佑と硝子が二人揃ってお腹を抱える姿に、ようやく雪姫も我に返った。

「──いやああああああ!!!??」

 雪姫がシャワー室に飛び込んで、ドアが乱暴に閉められて。

──そして、もう笑い声が聞かれる心配がなくなった二人は、それから存分に笑い転げるのだった。


─────────────────────────────────


──やがて、再びドアが開いて。今度は静かに、『いつも通りの美しさの』雪姫が出てきたのだけれど──

「……なんで、計佑くんがここにいるの……?」

 完全に、不機嫌になっていた。

「あっ、ええとその……須々野さんに話があって、ですね……話し込んでいたらその、こんなことに……」

 慌てて頭を下げたのだけれど、雪姫の膨れた顔はそのままだった。

「……ふーん……そのついでに、私にあんなイジワルをしてきたってワケなんだ……」

 プイっと顔を背ける雪姫。
 大好きな少年に、みっともない姿を晒して、大笑いされる羽目になって──
そしてそれが、肝心の少年もグルのイタズラだと考えた雪姫としては、
二重の意味で不機嫌になるのも当然ではあった。
 けれど、計佑としてはまさかの濡れ衣に慌てるしかない。

「いっいや!? 違いますよっ、別に意地悪なんて! オレはただ須々野さん──」
「──すいません、白井先輩。目覚くんが、どうしてもこのイタズラを仕掛けたいって頼み込んでくるものだから」
「ええええぇ!!?」

 慌てて弁解しようとしたところでの、硝子の割り込みに完全に泡を食う。

「ちょっちょっと須々野さんっ!? 一体──」
「──そうだよね、目覚くん?」

 硝子が、ニッコリと微笑みかけてきた──そして、ウインク一つ。

──……あぁっ!? まっまさか、さっき言ってた罰ゲームって……!?

 ようやく理解した少年が、戦慄した。

──や、やっぱり須々野さんの罰ゲームが簡単なワケなかった……!!

 今さら、安請け合いした事を後悔しても遅かった。

「ふーん……ふぅぅ〜ん……そうなんだ……硝子ちゃんに頼み込んでまで、また私をイジめたんだ……」

 ジト目の雪姫が、腕組みをして計佑を睨みつけてくる。

──うおおおお!! たっタチが悪すぎるよ須々野さんっ!!!

 ダラダラと脂汗が流れる。
ついこないだも、まくら曰く『死刑モノ』な失態の数々を重ねたばかりだというのに。
今度こそ、無実の罪を被れというのか──あまりの "罰ゲーム" の厳しさに、完全に凍りつく計佑。

 認めれば、雪姫との仲が。否定すれば──硝子はそうしてもいいとは言っていたが、それでも──硝子との仲が。
単純に、雪姫と硝子どっちをとるか──だったら、正直硝子には悪いが、計佑にとっては雪姫だったけれど。
 けれど、この事態はそう単純でもなかった。
もし否定すれば、自分と硝子の仲だけではなく、雪姫と硝子の仲までおかしくなる可能性があった。
ただでさえ、昼間自分のせいで、硝子と雪姫の仲がおかしくなりかけたのだ。
これ以上、硝子に迷惑をかける訳にはいかない──そう考えた律儀な少年がとれる選択肢は、

「……はい、すいませんでした……」

 結局、一つしかなかった。
 そして、計佑がそういう考え方をするであろう事を、最初から見越して仕掛けた策士が満足そうに微笑んだ。

──のだけれど。

「……いやっ、本当にすいませんでした!
怖がってる時の先輩ってスゴく可愛かったもんだから、ついまた見たいなぁなんて思っちゃって!!」

「えええっっ!!??」
「はああああ!!??」

 雪姫と硝子が、それぞれ違う種類の驚きの声をあげて。結局、天才は腹黒策士の上をいってみせる。

「なっ、なに言ってるの計佑くんっ!? そ、そんなコト言ったって許してなんかあげないんだからねっ!?」

……テンプレツンデレゼリフを口にしながらも、もう表情がゆるんできている単純少女。そんな少女に──

「いやっ、やりすぎちゃったのは本当にすいませでしたっ!!
でも、普段は見れないような先輩の姿を見せてもらえて、なんだか距離が近づけたような気がして、嬉しかったです……」

 計佑は顔を赤くしながらも、しっかりトドメをさす。
 とっさの言い訳──それも硝子のせいでのでっち上げの筈なのに、
本音を混ぜつつ、口説きにかかるような真似まで天然でやってしまえる所は、もう流石としか言い様がない。

「くっ……この天才は、ホントにっ……!!」

 そして、一瞬でピンチをチャンスに切り替えた少年に、硝子は苦りきった顔つきで呻いて。

「も、もぉ……ホント、しょうがないなぁ……こういうイタズラを許してあげるのは、今回だけなんだからね?」

 恥じらいながらも、もうすっかりご機嫌な顔になった雪姫がそう口にした。

 そして、赤い顔をした雪姫が弾むような足取りで計佑に近づいていって。
 対照的に、不機嫌になった硝子は踵を返した。
もうこの場にいても、自分にとっては面白くないものしか見れはしない──そう硝子は考えたからだった。