二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

INDEX|111ページ/169ページ|

次のページ前のページ
 

……しかし、硝子はまだ知らなかったけれど──

「そっ! そういえば、須々野さんって髪おろして、メガネかけてないと全然印象違うよね!?
すごく美人だったから、メチャクチャびっくりしたよ!!」

──この少年は、上げてから落とすのもまた得意なのだった。

「……は……?」

 計佑の言葉に、怪訝そうに硝子が振り返ると、

「……え……?」

 雪姫がポカンとしていた。
まあ、自分を口説くような事を言ってくれていた筈なのに、
突然その矛先が他の女に移ってしまったのだから、無理もなかったけれど。

 硝子としては、上げてから落とされた雪姫の顔が唖然となるのは小気味良くあったが、
計佑が照れ隠しに言い出した事でしかないのはわかりきった事で。だから、

「……目覚くん、そんなとってつけたお世辞なんて、かえって失礼なんだけど……」

 そう言って硝子は計佑を睨みつけてみせたのだが、

「いやいやっ、お世辞なんかじゃないよ!
須々野さんがさっき出てきた時、オレなかなか声かけなかったでしょ?
あれだって、須々野さんに見とれてたからなんだよ?」

──そう、こんな事を言い出したのは確かに照れ隠しからではあったが、
言葉の内容自体は本気で言っている所が、本当にタチの悪いこの少年らしい、天然たらしぶりだった。

「白井先輩に負けないくらい大人びててさっ、
それに先輩とはタイプ違うけど、カッコいい感じの美人っていうか……」

 そして、好きな人に本気で褒められてしまっては、不貞腐れていた筈の硝子も頬に赤みが差すのは無理もなかった。
しかも、雪姫のことを引き合いに出して、見事に硝子のコンプレックスまでも的確に突いてみせているのだから。

「……ほ、本当に……そう思ったんだ……?」

 垂らした左手のヒジを右手で掴んで、斜めに俯いた硝子が計佑をそっと見上げて。
……腹黒乙女も、結局は天才たらしに撃墜されてしまうのだった。

「本当本当! オレみたいな奥手男が、そんなお世辞とか言えるわけないじゃん!!」

 そして少年は、ますます硝子への攻撃を続けて。雪姫がどんどん俯いていく事には気づかない。

──せっかく罠から逃れたというのに。
愚かにも自分からピンチを作り出して、また飛び込んでいく少年だった……

─────────────────────────────────

 そして黙りこんでしまった雪姫を他所に、計佑と硝子との会話は続く。

「どうしてコンタクトにしないの、須々野さん?」
「……私、目つき悪いから……誤魔化すためにもメガネでないと……」
「ええ、そうかなぁ? キリっとした感じの美人だから、きっとモテると思うんだけどなあ……」
「……もっ、もういいから! わかったから、もう褒め殺しはやめて……」

 くるりと硝子が身体を翻した。……けれど、後ろからでも、耳が赤いのがわかった。

──あれ、これはもしかして……?

 硝子の前に回りこんでみた。慌ててまた硝子が後ろを向く。
しかし、その直前の一瞬で硝子の顔色はしっかり確認できた。

──須々野さん、顔真っ赤だ……!

 落ち着いている優しい雰囲気の時か、いきなり怖い顔をしてみせるかの
極端な2パターンが多い硝子だったけれど、こんな状態の硝子は初めて見る気がして。
……だからだろうか、イタズラ心が芽生えてしまった。

──いやいや、さっきのキツすぎる罰ゲームのお返しだと思えば……!

 硝子が打たれ弱いのはわかっているし、いじめるような下手な仕返しは出来ない。
けれど、こうやって褒め殺しにかかる分には、なんだかんだで悪い気ばかりじゃあない筈で。
そして何より、いつも一方的にやられてきた硝子を、今度こそやり込められるかも……!
 そう考えて、根は結構Sな少年が、硝子へと牙を剥いた。

「……あれ?  須々野さん、なんか顔赤くなってない……?」
 
 またも前に回り込みながら、わざとらしく尋ねる。

「なっ、なってない!!  いいからもう、ほっといて……!!」

 またもくるりと回る硝子を、後ろからニヤリと見つめる。硝子の耳に口を近づけて──

「──須々野さんって、こんなに可愛かったんだ……美人なだけじゃなかったんだね」

 ビクっと震える硝子の身体。笑いがこみ上げそうになったが、どうにか堪えて、さらに攻撃を重ねる。

「耳まで真っ赤じゃん……そういうカワイイところ、すごくいいと思うよ」

 ぎゅうう……!! っと硝子が身体を縮めた。そしてブルブル震え始める姿に、また吹き出しそうになる。

──あはははは! 面白いっっ!! ……そっか、こういう感覚なのかっ? 先輩がオレをからかう時のも……!!

 異性をからかう面白さにまで目覚めて、ますます凶悪になってしまった天然たらし。
……しかし、考えていることは相変わらずのズレっぷりだった。
雪姫が計佑をからかうのと、今自分がやっている事ではその意味合いがまるで違うというのに。

 いずれふらなければいけない相手を口説いてみせる。それも、応えようと考えている人の目の前で、だ。
──もはや鈍感を通り越して、恐ろしいほど色々と間違ったまま突き進む少年。

 そして、そんな少年にとうとう耐え切れなくなったのか、硝子が突然足早に歩き出した。

……のだけれど、ドSモードに移行してしまった少年は、すぐに追いついて、あろうことか硝子の腕まで捕まえて。

「……どうして逃げるの須々野さん? オレ、なんか悪いこと言ったかなぁ?」

 ドS魂全開で、わざとらしくそんな風にまで尋ねてみせる。
 硝子は逃げる事も許されず、腕まで掴まれてしまった状態に、とうとう完全に限界を迎えた。
掴まれてない方の手を振り回しながら、
──本来なら、今は自分にとって最高に都合のいい状況であるにも関わらず──
逃げるためについ、雪姫の事を口にしてしまった。

「いっいいの目覚くんっ!? 先輩の目の前で、他の女のコの事口説いたりして!!」
 
─────────────────────────────────

 計佑が、硝子を誉めそやし始めて。
硝子の気分が高揚するのに反比例して、雪姫の心はどんどん沈んでいった。

──……またこのパターンなんだ……

 持ち上げてきたと思ったら、また落とすんだ。アリスの時と同じように。
……けれど、心情はその時とは、随分違いがあった。
 
 あの時よりも、ずっと不安で。あの時にはあった怒りがなくて。
そして、あの時にはなかった、ズキズキと胸を締め上げる痛みがあった。
 この感覚には、覚えがあった。今のこの感覚は、もっと前──
旅先からまくらの元へと、計佑が慌てて帰って行った時。
 そして計佑が、まくらの上に馬乗りになってじゃれているのを見た時に感じたような。

──……そうだったんだ。私、アリスに対しては本気で嫉妬していた訳じゃなかったんだ……

 なんだかんだ言っても、結局根っこでは、アリスが本当に恋敵になりうるとは思っていなかったのだと気付かされた。
 だって、アリスを本当にそういう存在だと思っていたのなら。
弱い自分だったら、今のように不安で押しつぶされそうになるばかりで、