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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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慌てふためいてアクションの数々を起こすなんて余裕すら、絶対になかった筈なのだから。

 今回の流れ、恐らく計佑は照れ隠しで硝子も褒め始めただろう事は、前回の事からも察しはついた。
 そして今、計佑が浮かべているニヤニヤとした表情からして、
多分からかう以上の意味はないだろう事も分かりはした。
……けれど、それでも。
計佑が同年代の女の子を褒め続ける所なんて、見たくも聞きたくもなかった。

──……だって、計佑くんはお世辞なんて絶対言ってない。今、本気で硝子ちゃんの事褒めてるんだもん……

 目的はからかう為だったとしても。この少年だったら、本音を口にしている筈で。
 つまり、計佑にとって硝子は
『2つも歳上の雪姫と同じくらい大人びていて、とてもカッコいい美人で、カワイイ女の子』だと云う事なのだ。

 かつて、計佑に "綺麗" と言われた事が、告白への最後の後押しになった。
 あの時の言葉は、ささやかな自信となって自分を支えてくれていたのに。

──……時々私のこと褒めてくれたりしてたのも、本当は、計佑くんにとっては大した意味はなかったんだ……

 先日の公園での、計佑の発言のあれこれを思い返せば、決してそんな筈がないのは分かりきった事だったけれど。
 心までか弱い少女は、不安で心を塗りつぶされてしまい。
硝子と計佑が足早に歩き出しても、項垂れたままその場に立ち尽くしていた。

─────────────────────────────────

「……え……?」

 硝子の言葉で、我に返った計佑が雪姫を振り返って。
それで、怖がりの雪姫が自分たちについても来ないで、離れた場所に俯いたまま突っ立っている事に気づいた。

──し、しまった……!?

 アリスのようなお子様相手にすら、妬いた事がある雪姫なのに。

──これが須々野さん相手って事になったら、先輩どれくらいキレるんだ──!?

 ようやく自分のやらかした愚行に気付いて、

「ごめんっ、須々野さん。しつこく絡んだりしてっ」

 一言硝子に謝って、慌てて雪姫の元へと向かった。
……それに、硝子が複雑そうな顔つきになるが、
もう硝子に背を向けて雪姫の方しか向いていない計佑が気付く筈もなかった。

「先輩っ、あの……!」

 雪姫の元へと駆け戻った計佑だったが、雪姫は俯いたまま顔を上げてはくれなかった。

──む、無視……!!?

 雪姫の事だから、まくらのように鉄拳を飛ばしてくる事はないだろうと思いたかったが、
いつぞやの事を思えば、また脛くらいは蹴られる事も覚悟していた。
 けれど、まさかの無視攻撃は、正直かなりキツかった。

「え、えっと……あの、ですね先輩……?」

 それでも、どうにか反応をもらおうと試みる。
 どんなに雪姫が怒っていようとも、もうヘタれたままにだけはなりたくない。
かつての反省から、少しは進歩した計佑が、そんな思いで雪姫の顔を下から覗き込もうとすると、

「……計佑くんは、誰にだって簡単にキレイとか言えちゃうんだね……」

 ようやく顔を上げてくれた雪姫が、口も開いてくれて。
一瞬、ちょっとだけ安心しかけたのだけれど、その表情を見て、意表を突かれた。
 てっきり、目を釣り上げているか、最低でもジト目くらいにはなってるだろうと思っていたのに。
実際の雪姫の表情は、眉をハの字にした……とても悲しそうな顔だった。
 そんな雪姫が、そっと計佑の裾を掴んでくる。

「……やっぱり計佑くんなんて、ヒドイ女ったらしで、最低のプレイボーイだよ……」

 言葉や口調こそ、拗ねたような感じだったけれど。
雪姫の泣き出しそうな顔を見れば、本気で不安にさせてしまったという事は流石にわかった。

「……ごめんなさい、先輩」

──本当に、まくらの言うとおりだ……確かにオレは死刑もんなんだろうな……

 いつもいつも雪姫の事を傷つけて。
 自己嫌悪と、雪姫への申し訳なさが胸を占めかけたけれど、反省は後回しにして。
今はとにかく、雪姫の事を──

 悲しそうな雪姫の姿に、スイッチの切り替わった計佑が、彼女の耳元へと口を近づけて囁く。
 幸い、硝子はさっきの場所で立ち尽くしたままだ。
だったら、ささやき声が硝子に聞こえる事は絶対ない──そんな風に考えての行動だった。


──そう、確かにこの距離では、小声など聞こえる筈はなかった。
 けれど、計佑が雪姫の耳へと顔を近づけて囁きだした瞬間、硝子の拳がぎゅうっと握りしめられて。
 そして、不安の色に染まりきっていた雪姫の顔から、暗い色が一気に流し落とされていって、
ふわりと花開くように笑顔へと移り変わっていくのを見た硝子が、
ギリッと立てた歯ぎしりの音もまた──計佑たちに聞こえる筈はないのだった。


─────────────────────────────────


 それからしばらくたって、計佑たち五人は今、校舎の屋上へと来ていた。
 ちなみに、顧問はこの場にはいない。
基本的にいつも放任な人ではあったが、夜の活動という事で流石に今回は──
と思っていたのだが、宿直室に伺いをたてにいったところ、
携帯ゲーム機で遊びながら『白井がいるんなら大丈夫だろ、まかせたぞー』の一言しかなかった。
……まあ、いつも放任の顧問にしては、
泊まりの行事に一応付き合って学校まで来てくれただけでも有難いのかもしれない。
 それに、大人抜きで自由にやらせてもらうほうが気楽なのも確かだ。

 という訳で、屋上にシートを2枚敷いて、
2つのグループに分かれて皆寝転がって、天体観測を楽しむことにして。
 班分けは茂武市、硝子の組と、計佑、雪姫、アリスの組となった。
これは、主に硝子の希望が通った形だった。
雪姫としては大歓迎だったし、アリスも問題はなし。
茂武市は、女子と一対一と言う状況に言うまでもなく大賛成だった。
 勿論計佑としても不満がある訳ではなかったのだが、自分たちから随分離れた場所に陣取る硝子の姿に、
『さっきからかいすぎちゃったかなぁ……またちょっと怒らせちゃったのかも』
と微妙に心配にはなっていた。

 まあ、言動はいつも通りの落ち着いた硝子だったから、そんなに強く怒っている訳でもないのだろう、
明日になっても微妙なようだったら、その時に改めてまた謝ればいいか……などと考える少年だった。

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 そんな風に始まった天体観測だったけれど──今、雪姫達の班には、ちょっと不穏な空気が流れていた。
といっても、計佑はまるでそんなものを感じておらず、
アリスは気にしていない……というより、むしろその空気を楽しんでおり。
そういう訳で、微妙な緊張感を醸し出しているのは雪姫だけだった。
 そんな雪姫をそっちのけで、

「おい、アリス……重いとまでは言わないけど、軽いとも流石に言えないぞ……?」
「え〜? ケチケチすんなよ……コドモに優しくすんのはオトナの義務なんだろ?」
「そんなコト、言った覚えないっての」

 計佑とアリスが。いちゃついていた。
……雪姫には、いちゃついているとしか思えない有様だった。