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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 アリスの攻撃に『ありえないでしょう?』と、苦笑しながら計佑が振り向いてきた瞬間には
まだぎりぎり取り繕えたが、いよいよもう限界を迎えそうだった。

──おっ、おおお落ち着いて……!! 慌てたら負けなの……!!
  そうっ、計佑くんは子供で、
  アリスは計佑くんのことを子供としか思ってないんだから何も慌てる必要なんて……!!

 思考まであべこべになってしまってきている雪姫。それでも、声に出したら負けだと、まだどうにか抑える。
しかし、アリスの攻撃はまだまだ止まらなかった。
『父親に会えなくて寂しい……』みたいな事を口にして、計佑の気を引いてみせようとする。

──ウソつきぃぃぃ!! ずるいずるいずるいっっ、そんな風な言い方するなんてぇぇええ!!!

 いや、正確には嘘という訳でもない。確かに、アリスは随分父親と会ってはいない。
 でもアリスの両親は、定期的にアリスに会おうとして白井家を訪れているのだ。
なのに、親に対して何やら拗ねたままのアリスが、部屋に閉じこもって会おうとしないだけで。
 だというのに、真実を都合よく編集してみせるアリスに、雪姫は地団駄を踏む思いだった。
 そして、計佑に寂しそうな顔を見せたと思ったら、また計佑の胸に頭をあずけて、
すぐにこちらに顔を向けてくると──ニヤァ、としてやったりの笑みを浮かべてくる子悪魔。
 そんな小悪魔に、いよいよ全身が震えだしてしまう。アリスの視線から逃れるように、計佑の顔へと視線を移せば、

──だめぇぇええ!? 他のコに、そんな顔しちゃだめぇええ!!!

 恐れた通り、計佑がすごく優しい顔になってアリスの頭を見下ろしていた。
 アリスに対しては、いつもはさっぱりした態度しかとらない筈なのに。
けれど、あんな事を言われてしまえば、優しい少年だったらこうなってしまうのは当然の結果だった。

──ううぅぅうう!! やっぱりずるすぎるっっ、アリスのバカぁああ!!!

 自分にだって、滅多に見せてくれない表情なのにっ。 そんな特別の顔を、騙すようなやり方で引き出すなんて!!

……自分も同じような事をやらかした経験がありながら、そんな風に棚上げ少女が憤る。
 ただ、あの時の雪姫には、"計佑にひどく傷つけられた" という名分がまだあった。
けれど、アリスが今やっている事は、雪姫への当てつけの為だけの筈で。
その為に計佑を騙してまでみせるアリスに、腸が煮えくり返る思いだった。
 キリキリと目を吊り上げる雪姫に、アリスが、んふーっ、と満足気に大きく鼻息をついて。
……けれどそこで、アリスの様子が突然変わった。
突然、ピクリと震えると──その表情からはニヤニヤとしたものが消えていく。

──……え……?

 一瞬、何が起こったのかわからなかった。
 けれど、疑問が浮かんだ事で少し心が落ち着くと、
いつの間にか計佑がアリスの頭を撫で始めている事に気がついた。

──ちょ、ちょっと……?

 アリスの目がトロンとしていき。

──あ、あああ……!?

 アリスの口が半開きになって。

──あああ当てつけにしちゃああ……!!!

 アリスの身体から力が抜けていき、計佑の上で完全に溶けていくのが傍目にも見て取れた。

──いくらなんでもやり過ぎじゃないのぉぉおお!!??

 とても演技とは思えないアリスの暴挙に、改めてパニックに陥りかける。
 そんな雪姫が視界の中心にある筈なのに、アリスの目はトロンと蕩けていて──
慌てる雪姫の姿を信号として脳に送る仕事もせず、ただ雪姫の顔を反射しているだけだ。

 そして、またもあろうことか……アリスの両手が、すりすりと計佑の胸板を撫で回し始めた。

──だ、だめぇぇぇええええ!!?!!??

 もう限界だ。
 こんな状況で、勝ち負けとかそんな事を気にしてなんていられない。
声を上げて、乱暴だろうとアリスを計佑の上から──
そんな行動に移ろうとした瞬間、アリスの目にハッと光が戻る。
 そして、計佑の胸板の上にあったアリスの両手が
素早く動くと──計佑の顔を掴んで、グリッと捻りこちらへと向けてきた。

──……あ……

……今度は、顔を取り繕う余裕はなかった。

─────────────────────────────────

「いっ……! いきなり何す、んだ……」

 アリスにいきなり首を捻られて計佑が上げようとした非難の声は、尻すぼみに消えていった。

──せ、先輩……!?

 何故なら、目の前にある雪姫の顔が凄い事になっていたからだった。
ここまで左右非対称になっている雪姫の顔は初めてで。
 絶句する計佑が見つめている内に、雪姫の顔はみるみる赤く染まっていく。

「ぷぷっ……!! ほらほらっ、オコサマ相手に、
こ〜んな顔してヤキモチやいちゃうなんて、大人のやることだと思うかけーすけぇ?」

──や、焼きもち、だと……?

 そんな筈はない。
だって、アリスに関しては、もうはっきりと許可だってもらっているのだから。
 そんな、何を言い出すんだという気持ちでアリスに視線を戻すと、
計佑の身体に肘をついて身を起こしたアリスの、ニヤニヤと雪姫を見下ろしている横顔が目に入った。

──あ、あれ……?

 その姿に違和感を覚える。
しかし計佑がその事を口にする前に、アリスは

「くくくっ……あーっ面白かった! 私、ちょっとトイレ行ってくるっ」

 ぴょんと立ち上がると、あっという間に走り去る。
 それを見送りながら、改めてさっきの疑問を口にした。

「せ、先輩……なんかアリス、変じゃないですか? アイツ、先輩にはすごい懐いてたハズなのに……」

 最近は、雪姫とアリスが一緒にいるところはあまり見てなかったけれど、
アリスの雪姫への懐きようは相当なものだった筈で。
 なのに、茂武市とかにならともかく、雪姫相手にあんな生意気な顔をするなんて──
そんな疑問を投げかけてから雪姫に目をやると、

「もおおお!! アリスがあんな風になっちゃったのは、計佑くんのせいなんだからねっっ!!」
「へっ!?  なっなんですかそれ?」

 涙目の雪姫に、いきなり怒られてしまった。

 先日の雪姫たちの "力関係の逆転劇" など知る由もない少年としては、何のことやらさっぱりな非難。
けれど、べそまでかき始めそうな少女相手では、強く言い返す訳にもいかなくて。
 言葉を失い、ただただ雪姫を見つめるしか出来ない計佑に、
雪姫は「う〜〜〜っ!!」と唸ると、いきなり頭を突き出してきた。

「ほらっ! 私の事も、アリスみたいに撫でてよぉ!!」
「はぁあ!? なっ、なんで!?  さっきから、先輩が何を言ってるのかさっぱりわかりませんよっ」

 滅茶苦茶な言動(としか計佑には思えない)をとる雪姫に、流石にちょっと引いてしまう。
 身体をずらして、少し雪姫から距離をとろうともしたが、すかさず雪姫が詰め寄ってきて、
肩の辺りに頭頂部をこすりつけてくる。

「ちょっちょっと!? 何してるんですか先輩っ」

 慌てて止めようとしても、相変わらずイヤイヤをするかのように頭を擦り続けてくる雪姫。

──こ、これってまさか……!?