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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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そのせいで受け身も取れずに押しつぶされてしまった少年には、当然ながら相応の苦痛が与えられてしまう訳で。

 倒れ伏してうめき声を上げる少年に、今度こそ少女たちは、本気で頭を下げ続けるのだった。

─────────────────────────────────

 この日の日中メイン活動は、視聴覚室でのDVD鑑賞だった。
 硝子が自宅で天体番組を録画してくれていたそうで、
それはちょうど計佑も見逃していた番組でもあった事もあり、この機会に皆で観ようという事になって。
 午前中から、早速皆で鑑賞を始めたのだけれど、開始早々、

「オレ、ちょっとまくら迎えに行ってくるな」

 そう言い残して、計佑は教室を抜けだした。
雪姫と硝子は、昨日の試合後の話をしに行くのだとわかっているからだろう、微笑で送り出してくれた。
茂武市も細かい事は気にしなかったのだけれど、アリスだけがちょっと膨れて見せていた。

 また計佑の膝の上にでも座って、雪姫を挑発でもするつもりだったのか──
早朝の一件の後には、一応ちゃんと反省をしていた筈なのだけれど、もうすっかり忘れている様子のお子様だった。

 そんな四人を置いて校門までやって来た計佑は、直に到着する筈のまくらを待っていたのだけれど──

「けーすけーーーっ!!」

 大声で名前を呼ばれて振り返ると、校舎の方からアリスが全力疾走してきていた。
 その勢いのまま、『たあっ!』と飛び上がりながらのタックルを仕掛けてくるちびっこ中学生を、
ひょいと横にずれて躱す計佑。
 回避されてしまい『ええっ!?』と空中で目を見開くアリスだったが、
計佑は横からアリスの身体を捕まえると、突進による運動エネルギーをくるくると回転して消費してみせた。
「おっ!? おお〜……あははは! これは面白いぞっ、けーすけ!」

 やがて回転が止まり、地面に下ろされたアリスが満面の笑みで見上げてくるが、
計佑のほうは仏頂面でそれを見下ろした。

「一体何の用だよアリス……あのDVDは、
本来は何も知らないお前とかの為に用意したんだから、ちゃんと見てくれないとだな……」

 そんな風に諭したが、本命の理由は別にあった。
 自分はこれから、まくらに昨日の事を謝らなければいけないのだ。
それなのに第三者、それも昨日の一件を何も知らない人間がいては、そんな話はしづらくなってしまう。
 そういう訳で、早くアリスを追い返したいところだったのだが、

「用、か? ……う〜ん、確かに今オマエに絡んでも、
おねえちゃんがいないからあんまり面白いことにはならないんだけど、さ〜……」

 軽く俯いて、そんな風に呟くアリス。それに、少年がため息をついた。

「お前な〜……一体どうしちゃったんだよ。
あんなにお姉ちゃんお姉ちゃん言ってたクセに、なんでいきなりそんなに態度が変わっちまったんだ?」

 雪姫によれば、自分のせいでアリスがこうなってしまったそうだけれど……
本当のところは、未だ分からないままだ。
 雪姫に聞いても結局は教えてくれなかったし、ならばアリスに聞いてみるしか無かった訳だが、

「えー、だってー。おねえちゃん、
からかうとすっごい面白くてカワイイって解っちゃってさ〜。つまりこれも愛情表現だよ!!」
 
 雪姫が聞いたら『そんな愛はいりません!』とまたカッカしそうな答えを、ニコニコしながら返すアリス。
けれどその答えは、一応少年を安心させるものではあった。

──そっか、まあそんな事ないとは思ってたけど、やっぱり先輩の事キライになったとかじゃないんだよな。

 じゃれつきの一環だろうとは勿論わかっていたつもりだったが、
あまりの豹変ぶりにちょっとだけ不安があったのも確かだった。
 しかし今、こうしてニコニコと満面の笑みで雪姫の事を語る姿を見れば、完全に杞憂だったことが確信出来た。

──そういや先輩も、俺のコトだけはからかってくるんだったよな……

 皆に優しい性格をしているのに、自分に対してだけは厳しく弄ってきたりもする雪姫。

──好きな人間ほど、からかいたくなるのは先輩んとこの血筋とかなのか……?

 そんな事を考えて、しばし無言になっていたら、

「それよりけーすけは、なんでおねえちゃんにはあんなに遠慮してるんだ?
オマエだって、ホントはおねーちゃんをいじり倒したいとか思ってるんだろ?」
「ええ!? バカ言うなよっ、オレは先輩にそんなの思ったことねーぞっ」

 今度はアリスからそんな質問がきて、それに慌ててそんな答えを返した。

「えっ、ウソ!? ないのかっ? ……意外だな〜、てっきり遠慮してるだけかと思ってた……」

 計佑の声に、心底驚いたような顔をするアリス。しかし、驚かされたのは計佑とて同じだ。

「なんだよそれは……なんでお前、そんな風に思ったんだ?」
「だっておねえちゃんって、虐められてるくらいのが一番輝くじゃん?」
「はぁ? いや、そんな事はねーよ。先輩だったら、嬉しそうに笑ってる時が一番輝いてるだろ?」

 アリスのセリフに全く納得できなかった少年がさらりと答えたが、
その答えを聞いたアリスはじわじわと頬を染めていって。

「……お、おお……笑顔が一番輝いてる、か……
な、なんかオトナなセリフだな。オマエやっぱ、お姉ちゃんの事愛してんだな〜……」

 感心した様子でこちらの顔を見上げながら、そんな事を言ってくる。

「なっ!? バッ!  変な風に捉えんなよ!! ふ、普通に考えたら、笑ってる顔が一番カワイイのは当たり前だろ!?」

 アリスのリアクションで、自分のセリフの恥ずかしさに気付いてしまった計佑が慌てて弁解したが、

「ふ、ふ〜ん……オマエはそれで普通なのか……やっぱけーすけってスゴイな……」

 そんな事を呟きながら、アリスが俯いてしまった。何やらまだ誤解されてるような気がして、
もう一度弁解を重ねたくなったが、それより早くアリスがガバッと顔を上げてきて、

「ま、まあともかくだな! ドSなお前なら、
そのウチ絶対、おねえちゃんをいじる楽しさだってわかるようになるハズだぞっ?」

 そんな風に話を戻してきた。こちらとしても、その方が有難いのでそれに乗っかる事にして。

「そっ、そんな事わかるようになんて……そもそも俺、ドSってワケでもねーし。
……うん、やっぱりそんな事にはならないと思うぞ」

 考え直してみたが、やはりアリスの言葉には2つの理由で頷けなかった。
 一つは、雪姫の打たれ弱さの問題だった。
雪姫はちょっとつついただけでも、下手をしたらべそをかきそうな相手だ。
そんな人間を、そうそう弄ろうにもどうしたって抵抗がある。

──……まあ……付き合いを重ねていって、加減がわかるようになったら、或いはそういう事も出来るのかもしんないけど……

 それでも、まだもう一つ理由があった。

──俺、先輩には一方的に弄られてばっかだし。もう、この関係が逆転する未来なんて想像できないんだよな……

……実際には、とっくの昔に力関係は逆転しているのだけど、そんな風に考えている少年。