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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 本質的には、計佑の方が雪姫を、絶叫マシンすら可愛く思える程の勢いで振り回しているのだけれど、
罪作りな少年には相変わらず、全く、これっぽっちも。自覚がなかった。

 ともあれ、そういう理由でアリスの言葉に首を振る計佑に、それでもアリスは納得しない様子で、

「……この予想には、自信あるんだけどなぁ……」

 首をひねっていたが、やがて表情をにぱっと一変させると、

「……まあいいや!  それより、ここに来た理由、なんだけど、さ……」

 語尾の辺りで、急に声を小さくしていって。薄く頬を染めると、何やらもじもじすら始めて。

「……えっとだな。昨夜の……昨夜みたいに、また頭撫でてくんないか? なんかあれ、すごく気持よかっんだ……」

 そこまで言うと、完全に俯いてしまうアリス。

「……ああ……昨夜の、親父さんに会えてないって話の時のコトか?」

 思い出しながら問う計佑に、無言で、コクンとアリスが頷いた。

「ははっ、なんだ、そんなコトだったのかよ。……いいぜ、いくらでも撫でてやるよ」
「ほっ、ホントか!?」

 笑いながらの計佑の言葉に、ガバっとアリスが顔を跳ねあげて、キラキラとした目で見上げてくる。
「ああ、そんなんお安いご用ってもんだろ」

 少年が優しく笑いながら右手を持ち上げて、アリスが期待に胸を踊らせて──
ちょうどその瞬間、曲がり角を曲がってきたまくらが通りに姿を現したのだけれど、
お互いしか見ていない計佑たちが気づく筈はなくて。
 そして、少年は少女の頭に手を乗せると────ワシャワシャワシャ!!

 一気に髪を引っ掻き回し始めた。

「──!? ちょっ、え!? な、なに、なんで!?  やめ、やめてよっけーすけ!!」

 突然の暴挙に、言葉遣いが素に戻ったアリスが慌てて逃げようとするが、
計佑は左手もアリスの頭に乗せると、さらに激しくかき回し始める。

「やだ、やだあっ! もうやめてよお!!」

ついにはアリスがうずくまって、それでようやく計佑も手を止めた。

「……な、なんでぇ? ……この髪、キレイにするの大変なのにぃ……」

 涙目で見上げてくるアリスに、視線を合わせる為計佑もしゃがみこむ。

「先輩に聞いたんだよ。オマエ、ホントは親父さんに会えないんじゃなくて、会おうとしないだけなんだってな?」

 睨みつけると、アリスは「うっ」と言葉に詰まる。

「紛らわしい言い方しやがって……そんなに寂しいんだったら、変な意地なんか張らずにちゃんと親父さんに甘えろよ」

 そう諭すと、アリスはプイっと顔を背けてみせた。

「イヤだっ!! パパはアタシを放り出したんだ!! アタシは一緒にいたいって言ったのに……
なのに都合のいい時だけ会いにくるなんて、そんなオトナの勝手に付き合うもんかっ!!」

 そんな風に叫んで、悔しそうに唇を噛み締めるアリスに、一瞬なんと言っていいかわからなくなる。
 雪姫から簡単に話を聞いた限りでは、決してそこまで大変な話ではないようだけれど、
それでも何不自由ない家庭環境にいる自分が、したり顔で説教していいとは思えない。
……けれど。
根は素直な少女が、こんな風に意地を張り通そうとしている姿なんて、痛々しくて見ていられなかった。
だから──お前は何様なんだよ、という自己嫌悪を押し殺して──説得を始める。

「……お前、別に親父さん達のコト、キライになったって訳じゃあないんだろ?」
「……キライだよ。前は好きだったけど、もう今はキライだ……」

 不貞腐れたアリスが、呟くように答えた。

「ウソつけ。本当にキライなら、なんでそんなに拗ねてるんだ?
好きだからこそ、悔しくて、ずっと拗ね続けたままなんだろ?」
「……違うもん」

 アリスが、膝に顔を伏せる。

「いいや、違わない。……本当に親父さん達がキライになったのなら、
約束の日には、外に逃げるなりしてるハズだろ。……なんでいつもいつも、部屋に閉じこもってるんだ?」
「っ!」
 
 ビクリとアリスの身体が震えた。

「ドア越しにでも、親父さん達の声が聞きたいからじゃないのか?
来た時と、帰る時……窓越しにでも、親父さん達の姿を見たいからじゃないのか?」

 ブルブルとアリスの身体が震え始める。

「お前の気持ち、本当はどうかなんて、そりゃあオレにはわかる訳ないんだけどさ。
お前が本気の本気でイヤだって言うなら、そりゃあ部外者のオレが家族の事に口出しなんて出来ないんだけどさ。
……でも、会いたいって気持ちがちゃんとあって、会っちゃダメな理由なんてないんなら……
絶対に意地なんて張るべきじゃないんだ。それだけは、絶対、絶対に間違いないんだ。だって……」

 そこで、一旦言葉を切ってから──

「……だって、親に会いたくても会えないヤツだっているんだから」

 そう続けた途端、アリスがハッと顔を上げた。
その目は真っ赤になっていたけれど、ようやく自分の顔に視線を合わせてきたアリスに、微笑がもれた。

「まくらの親の話、したコトあったよな?」
「……あ……うん……」

 気まずそうに頷くアリス。あの時の事は、アリスには痛い想い出だろう。
また俯いてしまうアリスを他所に、計佑は暫し、まくらの母親の事を思い出していた。

 まくらとは正反対で、とても淑やかな雰囲気の人だった。
幼い頃の計佑は、すぐに鉄拳を振るう由希子よりも、まくらの母のほうに懐いていたかもしれない。
 だから、亡くなった時には──勿論、まくらに比べたら全然だろうけれど──随分泣いたものだ。
尤も、まくらが陰で泣いているのを見つけてしまった時に──子供心に "自分が守ってやらなければ" 
と思うようになってからは、泣くのをやめて、まくらの兄として振舞おうとし始めたのだけれど。

 やがて、回想から戻った計佑が殊更明るい声で、

「……だからだなっ。少なくとも会いたいって気持ちあるんなら、素直に従っとけよ!
お前には、本気で意地張ってる姿なんて似合わねーんだよ。
意地っぱりに見えて、実はめちゃ素直ってトコが、お前はカワイーんだからさっ」
「……っっ!!」

 そんな言葉をかけると、アリスが息を呑んで顔を赤くした。
その様に少年は笑顔を浮かべると、今度は優しく──それこそ昨夜のように──アリスの頭を撫でてやる。
 さっき、徹底的にぐちゃぐちゃにしてしまった髪を、元通りにもしてやろうと手櫛をかけるが──

「……悪い。ちょっとやりすぎたみたいだな」

──ちょっと元通りという訳にはいかないようだった。
 頭を下げたが、アリスは赤い顔のままプルプルと首を振った。

「……ううん、いい。そんなコト、どうでもいい……」

 ポ〜っとした目で、計佑の顔を見上げてくる少女。

「……やっぱり、けーすけはすごいよね……けーすけは、いつも私のコト楽にしてくれる……」

 アリスがゆっくり立ち上がって。

「……パパ達の事は、もっかいちゃんと考えてみる。……でも、今ならなんだか、素直に会えるような気がする」

 そう言って、はにかむアリスに、計佑のほうも改めて破顔した。

「そっか。まあ、頑張れよ」