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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 立ち上がって、ポン、とアリスの頭に軽く手をバウンドさせた。

「うん! じゃあ、先に戻ってる」

 弾けるような笑みを見せて、くるっと身を翻すと、もうアリスは振り返る事もなく全力疾走で去ってしまい。
 その後姿を満足気に見送って、やがて完全に見えなくなると、微笑のままで軽くため息をついた。

「ふう……オレなんかが偉そうに説教とか、ホント何様だって話なんだけどなぁ」

──それでもまあ、アリスにとって悪くない結果に導けたんなら上出来だよな。

 そんな達成感で軽く高揚した気持ちのまま、首を巡らせて──まくらが立ち尽くしている姿に気付いた。

「……っ!」

 高揚していた気分は、一瞬にして緊張にとって変わった。
曲がり角の位置で立ち尽くしたままのまくらの細かい表情まではわからなかったけれど、

──俺の事、見えてるクセにこっちに来ないってコトは……昨日の事が、まだ尾を引いているのか……

 早朝の内に『話があるから、校門で待つ』とまくらにメールしたところ、
大体の到着時刻を返信してきたくらいだから、決して機嫌は最悪ではないだろうと思っていたのだけれど。
 そんな考えは甘かったかと、身を引き締めた。
やがて、まくらがこちらへと歩きはじめて。その足取りが重いのを見て取って、

──一晩経てば、大抵の場合機嫌治ってるのにな……やっぱ今回のはそれくらいのコトだったんだよな……

 改めて申し訳なくなる。

 まくらの足取りは、曲がり角を曲がってくるまでは普通で、まくらが立ち止まったのも
計佑がアリスの頭をかき回し始めてからの事だったのだけれど、そんな事を知る由もない少年。

 そして、ついにまくらが計佑の目の前にまでやってきて。その足を止めた。

「……おす」
「……おはよう」

 計佑の挨拶に、一応は返してくれた。……俯いたままで。
一瞬怯みそうになったけれど、引き伸ばしても仕方がないと、思い切って頭を下げた。

「ごめんっ、まくら! 昨日は……すげーヒドイ態度とっちゃって」
「…………」

 今度は返事がなかった。それでも、頭を下げたまま弁解を始める。

「別に、無視するとかそういうつもりじゃなかったんだ。
いやっ、結果的にはそうなっちゃったんだけど、その……めちゃくちゃ情けない話なんだけどっ、お前が──」
「──完全試合なんかやっちゃったから、引け目を感じちゃった?」
「っ……」

 先回りされて、思わず頭を上げた。
まくらも、俯いていた顔をもう上げていて、計佑の顔を静かに見つめてきていた。

「……そっか、バレバレだったか。ホント、情けないよなオレ」

 恥ずかしさに苦笑すると、まくらが首を横にふった。

「別に、すぐに気付いた訳じゃないよ。あの時には凄いショックだったし、
しばらくは何も考えられなくて……計佑からのごめんメールが来て、
それでやっとモノを考えられるようになって……それで、そういう事なんじゃないかなって気づいたんだ」
「……そっか……ホントにごめん」

 もう一度まくらに頭を下げて。そして硝子にもまた改めて感謝した。

──須々野さんが怒ってくれてなかったら……ホントにオレ、何も気づかないままだったもんな……

 硝子が気づかせてくれたからこそ、昨日の内にメールで二言三言だったけれど謝罪する事が出来て。
その結果、まくらを無駄に苦しめる時間を少しでも減らす事が出来たのだろう。
……そんな事を考えていて、ふとおかしな事に気付いた。

──……あれ? 待てよ、それがわかってたんならなんで今──

 まくらはこんなに落ち込んだ様子なのだろう?
まくらの性格なら、自分の劣等感での悩みなんて、笑い飛ばしてくる筈で。
──実際、天文部を始める前にゲーセンで遊んでいた時には、そうしてくれていたのに。

 そんな違和感を覚える計佑に、

「その事はもういいよ……あまり気にしてない。……でも、さっきの……あれは何だったの?」

 まくらがそんな質問をしてきた。と言われても、何の事かさっぱりわからなかった。

「あれ? ……さっきのあれって何の話だ?」
「……アリスちゃんの頭、さっきかき回してたじゃない……!」

 首を傾げて尋ね返した瞬間、まくらの目に火が点った。
 静かだった声にも急に怒りが込められてきて、思わず怯んでしまう。

「な、何の話だ? 今は、アリスの話じゃなくてお前の──」

 訳が分からず、話を修正しようとしたけれど。更に強まるまくらの眼光に、最後まで言い切れなかった。

「……一体、何怒ってるんだ? 小さいコにやり過ぎだとかそういう事か?
確かにオレもちょっとやり過ぎたとは思ってるけど、あれは昨夜の──」
「──そんな事を怒ってるんじゃない!!!」

 言い訳は、まくらの怒声に遮られた。

「あれは、私だけの……!!」

 怒りの炎を燃やしたままの瞳で、けれど独り言のように、まくらが呟いて。
僅かの間を空けて、プルっとまくらは頭を左右にふると、また口を開いた。

「……最近は、私には全然あれをやらないよね」
「……え? あ、ああ……そういえばそうだな……」

 いきなりキレたまくらに硬直してしまっていたが、どうにか答えを返す。
言われてみれば、以前はよくやっていたのに、最近は全然やっていなかった気がする。
 いつからだろうかと考えて、

──そっか、まくらに好きなヤツがいたって話を聞いたあたりか……?

 あの話には色々とショックを受けた。
 お子様だとばかり思っていたら、自分よりずっと大人だったと思い知らされて、
自分がシスコンだったと自覚する羽目にもなって。
 特に意識しての事ではなかったのだけれど、無意識の内に気後れする気持ちは生まれていたのかもしれない。
けれど今、こうして自覚してしまって。そして昨日の試合で、はっきりとまくらの格を見せつけられた今──

「──そうだな、もうあんなマネ、お前には出来ないよな……」

 そんな風に、苦笑する事しか出来なかった。
 まくらもいつも嫌がっていた行為だし、あんな子供扱いみたいなマネは、もうすっぱりやめないと。
そう考えて口にした言葉だったけれど、それにまくらが目を見開いて、愕然とした顔つきになった。

「……なんで……?」
「……いや、なんでって……そりゃあだって……」

 随分大袈裟な反応をするまくらに戸惑いが湧く。一瞬言葉も切ったが、迷いは一瞬だった。
 恥ずかしくはあったが、ここで誤魔化してしまって、
もしまたまくらを傷つけるような事になったら、それは昨日の事をまるで反省していないのと同義だ。
 そう考えて、言葉を継いだ。

「……お前は子供っぽいとこも多いけど、でももう何も出来ない子供なんかでもないんだよな。
もう、オレに出来ないよう事をいくつも出来る、スゲーやつになってたんだよな。
だから、今までみたいな、ガキ扱いするとか、一方的に兄貴目線で接する訳にはいかないよなって」

 照れくさくて、まくらの顔を見れないままそんな言葉を並べたのだけれど、

「なんでよ!!」

 一喝されて、ビクリと視線を戻した。
唇を噛み締めて、悔しそうな顔で睨み上げてくる姿にまた戸惑う。