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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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──いくら何でも、最近の私余裕なさすぎだもん……いい加減、しっかり自制しないと!

 昨夜の事も勿論だが、今朝の事は特に深く反省していた。
 決してそんなつもりではなかったけれど、
結果的には二人がかりで押し潰してしまうなどという暴挙に及んでしまって、
雪姫とアリスを庇ってろくに受け身もとれなかった少年には、下手をしたら怪我させていた可能性だってあった。
 だから、本当に本当に、深く反省して。

──それにあんまり焼きもちばっかり妬いてると、計佑くんに嫌われるかもしれないし……

……そんな利己的な気持ちもあったりしたけれど、とにかく今夜こそは平静を保つつもりで──
そう、保てると思っていた。計佑が、自分の事を気にかけてくれている間は、まだ。
 少年が、また雪姫が爆発するのではと、
ビクビクとこちらを伺ってくれている間は、確かにまだ一応の余裕があった。
 けれど、やがて少年は、
もう大丈夫だと何やら確信したのか──ある瞬間から、全く雪姫の事を気にかけなくなった。

──ん、んん……?

 それに気付いた瞬間、雪姫の中からザックリと余裕が削り取られていった。

──計佑くん、そ、それはやっぱりヒドイんじゃないかな……?

 ついさっきまでの反省や申し訳なさはもう萎んでいってしまい。
代わりにとばかり、じわりと不満が鎌首をもたげた。

──私が、すごく焼きもち妬きってコトはもう十分わかってるよね?
  なのに、私のコト無視してアリスばっかり構っちゃうんだ……?

 口にこそ出さないが、そんな不満が心の中で膨らんでいく。

──確かに、自由にアリスに構ってあげてとは言ったけど……
  そこまで真に受けなくてもいいんじゃない!?
  普通、ちょっとくらいは遠慮してくれるものだと思うよっ!!

……この少年が、そういった類の配慮などしてくれる筈がない事は分かりきった事だったけれど、
それでもやっぱり納得いかない少女。
 そんな、じりじりとストレスを高めていく少女を他所に、アリスが計佑に話しかける。

「ねえけーすけ、私さっき……久しぶりに、パパと電話で話せたんだよ?」
「おっ、そうなのかっ? ……よくやったなっ、アリス!」

 はにかむアリスと、自分の事のように喜ぶ計佑。

……しかし、それを傍らで聞かされた雪姫だけが笑顔とはいかなかった。

──なっ、なにそれ!? 私そんなの初耳なんだけどっ!?

 アリスと叔父の、ちょっとこじれてしまっていた関係は、親戚である自分にとっても無関係ではないのに。
なのに、そんな大事な話を、自分より先に計佑へと話すなんて。
 なんだかんだ言っても、自分に一番懐いてくれていると思っていた少女の裏切りに唖然としてしまう。

「けーすけのお陰だよ、ありがとね……」

 そして、相変わらず恥ずかしそうに、
けれどしっかりと計佑の目を見つめて礼を言うアリスの横顔に、ふと違和感を感じた。
 考えて、すぐに理由に気付く。

──……そういえば、アリスが全然私のコト見てこない……

 今朝までは、しつこいくらいに挑発を重ねてきては、面白がっていた筈のアリス。
けれど気がつけば、アリスのそういった振る舞いが完全に鳴りを潜めていた。

──今朝、計佑くんにケガさせそうになったコトはアリスもホントに反省してたから、
  それで……って考えれば、別に不自然じゃない……んだけど……

 雪姫の事など完全に空気扱いで、
幸せそうに笑いながら少年にじゃれついているアリスの姿に、心がザワつきだす。

 アリスに対しては、焦りや怒りばかりだった筈の嫉妬、
それには殆ど含まれていなかった筈の不安な気持ちが──ついに芽生えてきた。
 勿論、まくらや硝子の時ほどではない。けれど、

──や、やっぱりこれって、すっごくまずいコトな気がする!?

 他人の色恋に関してはちょっと鈍い少女が、ようやく危険な状況に気がついた。

─────────────────────────────────

「ね、ねぇっ計佑くん? そろそろアリスを下ろしたくなってきたんじゃない?
いい加減、暑かったり重かったりしてきたでしょうっ?」
「えっ? あ……」

 突然、雪姫にそんな提案をされた計佑だったが、
先に述べた通り、今はアリスとの触れ合いを求めている訳で、

「いえ、オレは別に全然。気にならないですよ?」

 返す答えは当然そんな物にしかならなかった。
 そんな答えに、雪姫が頬をヒクリとさせてから。今度は、

「ねぇっ、アリス!? 計佑くんは優しいからこんな風に言ってくれてるけど、
でもそろそろ、アリスの方から遠慮したらどうかなっ?
……そっそれにほら、今は合宿中なんだから、活動は真面目にやるべきだと思わないっ?」

 アリスに矛先を変えると、昨夜の自分の行動は棚上げしてそんな事を言い出す。
 するとアリスが、初めて雪姫の存在に気がついたような顔をした。

「ぁっ……お、おねえちゃん……そっか……」

 アリスが俯いて、やがて少年の顔を見上げて。そして雪姫の方に向き直ると、

「……ごめんね、おねえちゃん。でも私、もう──」
「謝らないでぇえ!?
そんな済まなそうな顔じゃなくて、前みたいにニヤニヤって顔して、冗談だってからかってよおお!!!」

 アリスの謝罪に、いきなり雪姫が爆発した。
雪姫にガクガクと揺さぶられるアリスの姿に、計佑も慌てる。

「ちょっ先輩!? どうしたんですっ、別にアリスはもう先輩のコトからかってる訳でも何でもないんですよ!?」
「だからこそダメなんでしょお!!?」

 鎮火するつもりで、実は油をぶちまけてしまった愚かな少年。そんな鈍感王へと、雪姫が矛先を移す。

「計佑くんも計佑くんだよっ! な、なんでアリスのコト、そんなに猫可愛がりしちゃってるのぉ!?」
「へえっ!? な、なんでって、それは……」

『もう雪姫の嫉妬はないだろう』と勝手に思い込んでいた少年が、まさかの事態に狼狽えて。
 そして、そんな少年がなんとか出来た言い訳は、

「だっだって! 先輩言ったじゃないですか!? アリスには好きに構っていいって──」
「限度があるでしょお!?」
 
……一蹴だった。

「だ、大体っ、話が違うじゃない!
アリスを可愛がったら、私にも同じコトしてくれるって約束で許した話だったでしょっ!? 
なのに、私には全然……!!」
「はぁっ!? えっいや! あ、あの話まさか本気で……!?」

 喚く雪姫に、計佑が全くついていけないでいると、

「お、おねえちゃん達……そんな約束してたの!?
ていうか、私みたいなのならともかく、おねえちゃん達が同じコトするっていうのは……」

 自分と計佑が今どんな状態か──省みたアリスが、みるみる赤くなっていく。

「ちょっ、おい!?  変なコト想像すんなよ!!
先輩が一人で勝手に言ってただけで、オレはそんな約束した覚えないっての!」

 とんでもない誤解をされている事に気付いて、恥ずかしさから必死で否定する。

……けれどそれは、雪姫にとっては裏切りにしか思えない言い草で。