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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「ひ、一人で勝手に……? そ、そんな……ひどいよ。ど、どうしてそんな言い方するの……?」

 べそまでかきそうな気配を漂わせる雪姫に、慌てて向き直る少年。

「あっいや!? すっすいません!
と、とにかく先輩の言いたい事はわかりましたから、えっと、その……」

 一旦言葉を切ると、またアリスへと向いて、

「な、なあアリス、もう今日はこんなんはやめにしよう、な? 確かに、お前にもちゃんと星見て欲しいし」
「えっ……でも……」

 アリスが寂しそうな顔になって。
そんな、可愛がっている子猫の悲しそうな顔に、『うっ』という声が漏れてしまう。
 それでもアリスを抱えると持ち上げて──隣に下ろしながら、

「先輩がいない時にでも、ちゃんと甘えさせてやるから」

 そんな言葉をこそっとアリスに囁いて、

「聞こえてるよぉお!!?」

 しっかり雪姫にも聞き取られてしまう、間抜け少年。

「わ、私に隠れて、二人っきりで今みたいなコトしようっていうのぉ!?
そ、それこそヒドすぎるよっ!!
もおっ、もおお!! どうしてっ、どうして計佑くんはそうなのぉ!!?」
「あっいやっ、その! そんなっ、別に泣くほどのコトじゃ……!?」

 とうとう泣きだしてしまう雪姫に、計佑はおろおろする事しか出来ない。そして──

「……く……くく……っ!!
お、おねえちゃん必死過ぎる……! ホ、ホントにべそかいちゃうなんてっ、面白すぎっ……」

 計佑の隣で身体を折り曲げて、くっくっと笑いをこらえている少女がいた。

「……へ……?」
「……な……?」

 雪姫がきょとんとして、計佑は唖然として。
それにアリスが、目尻の涙を拭いながらニヤニヤとして、

「今朝までみたいなのは、もうけーすけにバレちゃってるからちょっとシュホーを変えてみたんだけど。
まさかここまで面白くなるなんてね〜?
おねえちゃんだけじゃなくて、けーすけも最高に面白かったぞ!
オマエ、ホントにおねえちゃんには弱いんだなー!!」

 言い終えると、ついにはお腹を抱えて、足までバタつかせながらアリスが笑い始めた。
 やがて、事態を理解した雪姫が、

「よ……よかった……!!」

 心底ホッとした笑顔で天を仰いで、

「こっこのクソガキ……!  なんってタチの悪いコトを!!」

 怒りに燃える計佑がアリスに馬乗りになると、ウメボシを仕掛けた。

「いたたたた!! ああっホントに痛いイタい痛い!!
ごっごめんなさいごめんなさい! からかった風なのもウソです! 
ホントは、おねえちゃんがあんまり焦るもんだから、
『やっぱりいつもの冗談だよ』ってしといた方がいいと思って!!」

 痛みに悶えるアリスがそんな懺悔をしてきて、
それを聞かされた雪姫は「えええ!?」とまた余裕をなくす。

「そっそれどういうコト!? えっとつまり、結局やっぱり、あ、あなた計佑くんのコトを……!?」

 慌てる雪姫が起き上がって、アリスの顔を覗きこむ。と──

「……なんちゃって♪」

 またもアリスがニンマリとしてみせて。

──三人による喜劇は、まだまだ終わらないようだった。

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 そんな大騒ぎを続ける三人から、かなり離れた場所にいるまくら達三人。
けれど、ギャンギャンと大騒ぎをされていれば、ある程度は声も届いてしまう。
 そして、この三人では一番計佑達に近いまくらは、
もう空など一切眺めずに、横を向いたまま計佑たちの方だけを見続けていた。

「……ねえ、あの三人って昨日もあんな感じだったの?」

 ぽつりと、まくらがそんな質問を口にして、

「そ──」
「あー、昨日はあそこまでやかましくはなかったけどねー。
いやでもっ、実際は昨日も相当いちゃついてやがったんだけど! 聞いてよ、オレがたまたま近く──っ!」

 反対側の端にいた硝子が答えようとした所に、真ん中の茂武市が先んじて答えてしまった。
……それでも、途中で硝子に脇腹をつねられて、中断させられていたけれど。

「す、須々野さん何……っ!?」

 まくらの後頭部から硝子へと振り返るべく、
首を180度回転させた少年は、眼鏡少女の眼力に沈黙させられた。

「……ふーん……そっか……」

 そして、またぽつりと──感情の抜けたような声で、まくらがつぶやいて。

……それっきり、まくらは完全に沈黙してしまうのだった。

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第24話-2 『美月芳夏』


 <24話-2>


 午前三時を回ろうかという頃、体育館で計佑たち六人ともが眠っていた。
特に、心労も多い一日を過ごした計佑は完全に熟睡していたのだけれど、

「──おい、起きてくれ計佑」

 そんな静かな声で、目を覚ました。

「……え? だれ……」
 
 熟睡していた所を起こされたばかりでまだ意識はぼんやりとしていたが、
その声が部員の誰のものでもない事には辛うじて気がついた。
 そこへ、声の人物の指が額へと伸びてきて──トン、と触れた瞬間、意識が一瞬で覚醒した。
ぼやけていた目も、しっかりと開いて。……そして、目の前にいた人物は、

「……え……ホ、ホタル……?」

 ここ最近は毎晩一緒に過ごしていた相手だった。でも──

「ああ、2日ぶりだな計佑──といっても、私の気分的にはもっと久しぶり、という感じもするがね」

 その姿は、旅行の時に会った、16歳──雰囲気のせいか、自分よりずっと大人びて見える──のものだった。

「話がある。とりあえず、場所を移さないか?」

 静かに微笑むホタルが、そう口にすると計佑の手を引いた。

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 夜中にふと、半分目を覚ました雪姫は、特に意識もせずに計佑たちが寝ている方向へと寝返りをうった。
そして、寝ぼけているにも関わらず計佑の姿を探して、

──……あれ……計佑くん、は……?

 見つめる先には、一人しかいない──茂武市だけだった。
暗く距離が離れていようと、寝ぼけていようと、この少女は計佑と見間違えたりなどしなかった。見回して、

──……あ、よかった、ちゃんといた……

 計佑がちょうど体育館を出て行く所を見つけて、軽くホッとした。けれど、すぐに疑問を抱く。

──……? ジュースでも買いに行くのかな……?

 計佑が出て行ったのは、トイレがある方向ではなかった。
だとしたら、あとは買い物か、眠れなくて軽く散歩でもする気になったのだろうか、
といった可能性が思いついたのだけれど、

──……そうだ、これは……!

 一気に目が覚めた。静かに身体を起こして、そのまま立ち上がる。
見下ろして──アリスが熟睡している姿に、笑みが漏れた。何故なら、

──今なら、計佑くんと二人きりで過ごせる……!

 恋する乙女が、そんなチャンスを得て気分を弾ませない筈はなかった。
 結局昨夜も、決意虚しくグダグダになってしまった計佑との時間。
……情けないけれど、アリスがいては、もう自分は落ち着いて計佑と話す事は出来ないのかもしれない。