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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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けれどそれなら、二人きりの時間をより多く過ごせばいいのだ。
 誤解で大泣きしてしまった日、そして昨日。
計佑に甘い言葉をかけてもらえた後なら、いくらかはアリスの事にも耐えられたのだから。

……まあ、最終的にはやっぱり余裕がなくなるのだけれど……

──と、ともかく! アリスに少しでも負けないように、今は計佑くんと!!

 足音をなるべく立てないように──万一、
誰かが起きたりしたら台無しになってしまうかもしれない──静かに歩いて。
出入り口にたどり着いて、振り返って。みんながちゃんと眠り続けている事に安堵して。
 顔を前に戻した時に、ちょうど一人の少女がうっすらと目を覚ましたのだけれど、
そんな事に気付く筈もなく外に出て──

──……あれ?

 自販機の前に、計佑の姿はなかった。辺りを見回してみても、やはり見つからない。

──……コンビニまで足を伸ばした、とか? それとも、やっぱり散歩とかかな……?

 せっかくのチャンスだ、計佑とは絶対に話したい。ならば追いかけないといけないのだけれど──

──……う……や、やっぱり怖い……!

 計佑を見つけるまでは、一人きりで夜空の下を歩きまわる事になってしまう。
 学校といえば、怪談の宝庫。
校舎内に比べれば全然マシだが、極度の怖がりには、敷地内でも夜間とあってはハードルが高かった。
逡巡して、

──こ、ここで待ってれば、その内計佑くん戻ってくるんだし。それからでも……

 臆病少女がそんな逃げ腰の考えに縋りかけて、

ゾクッ……!!

 突然、背筋に悪寒が走った。
何の根拠もない、どうしてそんな考えが浮かんだのかもさっぱりわからない。
 けれど、急に今、計佑がどこか遠くへ──それも手の届かない程の──行ってしまうような、そんな気がした。
その瞬間、一気に駆け出す。
夜道への恐怖など、それより遥かに大きい恐怖の前に、完全に吹き飛んでいた。

─────────────────────────────────

 ホタルに連れられて行く計佑は、

「……な、なあホタル、別に逃げやしないから手は離してくれないか?」

 ずっと手を握ってきたままの相手にそんな声をかけた。
 幼女の頃だったら気にならなかった接触も、
自分よりも歳上に見える程に成長? されては、流石に気恥ずかしかった。

 そんな計佑の訴えに振り返ってきたホタルだったが、その視線は計佑を通りすぎて、どこか遠くを向いていた。

「……なんだ? 何かあるのか?」

 気になってそちらを振り返ったが、見えるのは体育館の屋根くらいで、特に気になる物は見当たらなかった。

「さっきの接触で眠りが浅くなっていた……? ふん、それにしても意外と勘のいい……」

 そんな呟きに向き直ると、ホタルが眉をひそめて、舌打ちでもしそうな顔をしていた。

「何の話だ? 誰か起きてきたのか?」
「だがまあ、見当違いの方向だし……とりあえずは問題ないか」

 計佑の質問には答えず、相変わらず独り言のように呟いたホタルは、微笑に戻ると

「もう少し歩くとしよう。ほら、ついて来てくれ計佑」
「いっいや、だから手をだな……!」

 訴えは無視され、ぐいぐいと手を引かれ続けて。やがて二人は、グラウンドへと辿り着く。
そこでようやく、ホタルが手を離してくれた。

「ほっ……で、一体なんだよ。話があるっていうけど、こんなトコまで来る必要あったか?」

 ホタルと話している所を、まくら以外の人間に見られる訳にはいかない。
だから場所を移す事自体は望むところなのだけれど、ここまで離れる必要はあったのか? という思いもあった。

「あったんだよ。これは私には何よりも大事な事なんだ。──絶対、誰にも邪魔はさせない……」

 最後には独り言のように答えたホタルの目に、ゾクリとさせられるような気迫を感じて。
それ以上は突っ込めず、話題を変えた。

「そ、そうか……まあ、いいや。じゃあ──とりあえずは、回復おめでとうだな、ホタル!」

 ホタルの話を聞く前に、まずは祝福の言葉を贈った。

「聞かされてた予定通りって訳だな……うん、よかったよかった」
「ふむ……幼女だったままの方がお前には良かったんじゃないのか?
……随分と、子供の私を可愛がってくれていただろう」
「なっ……バ、バカ言うなよっ! 俺はそんな……」

 ホタルの言葉はからかってくるような物だったけれど、その表情は純粋な微笑で。
その雰囲気からすると、決して意地の悪い意思を込めた質問ではなかったようだけど、
『幼女──以前のまま──のほうが良かったか?』などと聞かれては、二重の意味で頷けなかった。

「……いや。まあその、確かにあのお前は、随分懐いてくれていたからさ。
もうああいうのがないんだなっていうのは、いくらかの寂しさもあったんだけどさ。
……でもこうして、元のお前に会ってみると、なんかそれはそれで嬉しいっていうか……
なんだろうな、妙に懐かしい気もしてくるんだよな……
おかしいよな、今の姿のお前と過ごした時間なんて殆どないハズなのに」

 そんな風に、照れくさいながらも正直な心情を吐露すると、
ホタルが驚いたように目を見開き、そのまま僅かの間硬直して。そして、やがて微笑に戻ると、

「……ふふ。なんだ、そんな事を考えていたのか? いいんだぞ、今の姿でも前みたいに接してやっても」

 そんな言葉と共に、本当にホタルが抱きついてきた。

「なっ、ちょ!? バっバカ、やめろよ、からかうな!?」

 慌てて身を捩ると、ホタルはあっさりと離れてはくれたが、

「……ふむ。戻れたのは一応よかった事の筈なんだが……前みたいに触れさせてもらえんのはつまらんな。
……操って触れさせるというのでは、色々と台無しだしな」

 首をひねりながら物騒な事を呟いてくる姿に、冷や汗が出る気がした。

「あ、あのなぁ……本当、勘弁してくれよ。お前100歳ぐらいなんだろ、もうそんなからかいするような──」
「──歳の話はするな」
 
 突然吹き付けてきた冷気に、完全に凍りついた。ホタルの目が一瞬で、圧倒的までに据わっていた。

「貴様、でりかしーがないなんてもんじゃないぞ……良くもまあ、女性相手に婆ぁ呼ばわりなどと出来たものだな」

 ババアなんて口にしていない、過ごしたであろう年月を指摘して、窘めただけのつもり──
などという言い訳すら出来ずに金縛りにあっていると、ホタルが右手を持ち上げて。
人差し指で計佑の喉をつついてきた。

「……なあ計佑、覚えているか? 初めて添い寝した夜の事だ。
幼い私は、元の姿に戻った私が何をするか──予言しておいたよな?」

 言われて、すぐに思い出した。あの恐ろしすぎる予言──『黙って、取り殺そうとするだけだ』。

「……ま、まさか……話って……!?」

 どうにか口が動かせた。それにホタルがニタリとしてみせる。

「あの時の言葉は、本当に冗談のつもりだったんだがな……
婆呼ばわりまで上乗せされては、 流石に笑って許すわけにはいかないな」

 喉から指が離れて。さらに持ち上がったホタルの指が、今度は額へと伸びてくる。