白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
首を傾げて、頬を何かが伝う感触に気付く。……いつの間にか、涙が流れていた。
「え……何……?」
何故か自分が泣いていた事に気付いて、頬に両手を持って行く。と、
「いっ……!!」
両目をズキリと強烈な痛みが襲ってきて、自然瞼を閉じた瞬間、ドッと涙が溢れてきた。
「づっ……が……!」
思わず手で目を押さえる。それでも痛みはまるで和らがない。
立っている事すら出来なくなって、両膝を地についた。
まるで目が壊れでもしたかのようで、相変わらず涙も溢れ続けてくる。
灼熱の痛みをこらえようと、身体が自然と丸まって。
地面に突っ伏して蹲っていると、やがて痛みは和らいできた。
しかし、それでも熱い涙は止まらない。
加えて、目の痛みで一時は忘れていられた胸の大穴の感触が蘇ってきた──今度は、
強烈な寂寥感と、悲しみを伴って。
「ふぅうっ……! ぐぅうう……!!」
あまりの心寂しさに耐えきれず、地面に縋りつくかのように爪を立てる。
けれど、土がそれに応えてくれる筈もなくて。身体がブルブルと震えはじめたところで、
「──計佑くんっ!!」
自分を呼ぶ声が聞こえて、顔を上げた。
相変わらず溢れ続けてくる涙のせいで、はっきりと視認する事は出来なかったけれど、
──……せん、ぱい……
声を聞けば、相手が誰なのかはすぐにわかった。
「どうしたのっ、計佑くん! どこか痛むの!? しっかりしてっ!?」
駆け寄ってきた雪姫が、しゃがみこんで様子を伺ってきた瞬間、
「──あああぁぁあああ!!!」
悲鳴を上げて、抱きついてしまっていた。
勢いに押されて尻餅をついた雪姫が軽い悲鳴をあげたが、頓着する余裕もなく、夢中でしがみつく。
「ああっ、ああああぁあ!!!」
泣き喚いて、蹲ったまま雪姫の背中に手を回して、全力で引きつける。
少女のお腹に頭を押し付けて、母親を見つけた幼い迷子のように、死に物狂いで縋りついた。
「計佑くん、何があったのっ!? どうしてそんなに泣いてるの!?」
雪姫が背中をさすってくる。それでも、何も答えられなかった。
──ここまで自分が壊れてしまった理由なんて、自分自身でもまるでわからなかったから。
泣きじゃくりながら、雪姫の背中に爪を立てて掻きむしり、全力で少女の腹部を圧迫して。
なのに、痛みも苦しさもあるだろうに、雪姫はそれ以上は何も言わずに、背中や頭を優しく撫で続けてくれた。
「ふうっ……! うぁあああ……!!」
それでも、嗚咽が続いてしまう。
縋る相手を得られたにも関わらず、激しい悲しみと強い寂寥感は未だ健在だった。
やがて、ポツリ、ポツリとうなじに温かい雫が垂れ落ちてくるのを感じた。
「……な、泣かないで計佑くんっ……け、計佑くんがそんな風に泣いてたらっ、私、わたしぃ……」
ぐすっと鼻をすすりながらの声が聞こえて、雪姫が貰い泣きを始めてしまった事に気付いた。
……それでも。
いつもなら、雪姫を泣かせてしまっている状況にじっとなんてしていられない筈だったけれど、
自身の感情が嵐に見舞われている今だけは、何も出来そうになかった。
それに──雪姫が、形はどうあれ自分の為に泣いてくれている、
自分とこの悲しみを共有してくれている──そう思った時、
ようやく自分の中を占領していた寂しさが薄れていくのを感じて。
甘えるように、頭を雪姫に擦り付けた。
「ぐすっ……う、うんっ……わ、私はここにちゃんといるからっ、一人で泣いたりしないでぇ……」
そんな声と共に、雪姫の身体が前に倒れる気配がして。頭が背中に乗せられるのを感じた。
「計佑くんっ……計佑くんっ……!!」
雪姫もまた、自分の背中に縋り付いてきて、ポロポロと涙を零し続けてくる。
その涙の暖かさをシャツ越しに背中に感じて、また少し寂寥感が拭われる気がした。
「せん、ぱい……先輩っ、ごめんなさい、もう少しだけっ、このまま──」
「い、いいよっ、謝ったりなんかしないで……いくらでもっ、ずっとずっと、一緒にいるからっ……!」
漸くどうにか口に出来た言葉に、雪姫もまたしゃくりあげながら応えてくれた。
『ずっと一緒にいるから』──その言葉を聞いて、また少し、心に平穏が戻る。
雪姫の背中にずっと立てたままだった爪先を、ようやく剥がす事が出来た。
そのまま、詫びるように背中を撫でる。
雪姫もまた、より強く計佑の背中に縋り付いてきて、優しく背中を撫で続けてくれた。
相変わらず、滝のように涙は流れ続けていたし、悲しさも健在だった。
……けれど、胸の穴だけはいつしか埋められていて。
「……ありがとう、先輩……っ」
雪姫が、ふるふると首を振るのを背中で感じた。
少年の涙がどうにか収まるまでには、それからまだ随分と時間がかかってしまったけれど。
少女は約束通り──最後までずっと、少年を包み込み続けるのだった。
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<24話のあとがき>
……うーん……書きたいのはラブコメだったハズで、これはちょっと違うかもなんですけど……
でも原作で放置されちゃったホタルも、どうにかしたいなーって思っちゃったんですよね〜……
突然ですが、僕ぁハリウッド映画大好物なんだけど、
でもハリウッド映画でボロ泣きしたのって、
パッと思い出せるのは『グッド・ウィル・ハンティング』と『CLICK もしも昨日が選べたら』
くらいしかないですね……
いやでも、この2つはもう〜〜! ホントにいいんですよ!!
何がいいって、悲劇じゃない(……筈、多分……)のに、泣かせてくれるトコロがほんとにスゴイのです。
悲劇で泣かせるのは、まあそれだって簡単じゃないと思うんですけど、
やっぱり温かい感動でボロ泣きさせてくれる話って、別格だと思うんですよね〜……
まあ、僕にはそんなハイレベルなんて到底ムリなので、
とりあえず悲劇的方向で頑張ってはみたつもりなんですが……うーん。
ここまでに、もっともっとホタルとの日常を描いていれば。
或いは、もうちょっとは泣ける感じになってたのかなぁ……?
やっぱり、キャラに感情移入させておいての墜落劇が、一番てっとり早い……ですよね?
萌えを目指してて、そんなんはどうかと思わなくもないんですけど、
スイカに塩理論ってゆーか、僕は『萌えにだってある程度のシリアスも必要でしょ!』
って考え方なんですよね……まあ今回のは塩かけすぎかもだけど(-_-;)
でもこれ、ホタルはようやく呪いから開放されて、一応ハッピーエンドとも言えるワケですから。
そういえば、また話それちゃうんですけど、
ハッピーエンドって宣伝文句に納得いかなかった作品として、
「バタフライエフェクト」と「All You Need Is Kill」の2つが強く印象に残っています。
バタフライ〜の方は、まだいくらか納得できなくもないんですが、
All〜の方は、う〜ん……まあ確かに、間違ってる、とも言い切れないんだけどぉ……
ただ、話としてはALL〜の方が断然面白かったんですけどね!!
作品名:白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル 作家名:GOHON