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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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計佑が雪姫の手をつかんで走りだすシーン、
原作でも雪姫の顔アップで印象づけてありましたが、このシーンはお気入りの一つです。
初告白からの手をつなぎ添い寝といい、島でのやり取り、映画館のあれといい、
計佑と雪姫の手の関係ってすごく印象的に描かれてますよね。
ここから始まり、そして最後は映画館でのアレ……の流れがすごい切なくてですね。(T_T)

1話では、『雪姫のお尻をさわった覚えはない』計佑でしたが、
後に思い返して、「ダンボール越しにやっちゃったのか!」って気付いてるイメージです。


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第5話『メールが来なくて悶々と』

05話

雪姫と別れた計佑は、ふわふわとした気分のまま自宅へと戻ってた。
「ただいまー」
声をかけるが返事がない事で、母はいない事を思い出す。

──ヤベ……お袋病院に置いてきちまった。

そもそも、まくらの体の様子を見てくる事すら忘れてしまっていた。

──どんだけ舞い上がってんだよ俺……

軽く自己嫌悪に陥りながら、母にメールしようとケータイを取り出す。
そこでまたさっきのやり取りを思い出してしまい、ドキンと心臓が熱くなった。

──『おやすみメールしてね!!』

──なんだよそれは……"おやすみメール"? やったことねーよそんなの……絶対からかわれてるだけなのに。
何でこーいつまでもドキドキしてんだよオレはっ。もう散々からかわれてきたじゃん。どーせ今度も……

散々からかわれてきただけに、鈍感な少年としてはどうしてもそんな風にしか考えられなかった。

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「おいまくらー?」
部屋に戻った計佑に、
「お腹すいた〜!!」
まくらがいきなり飛びついてきた。
「ちょっ……いきなり何だよ!?」
あわてて引っぺがす。
「お腹すいたんだよ!! も〜〜!! 着替えも済ませたんだから、早くご飯につれてけー!!」
確かに、まくらの言うとおり、今はパジャマではなく普段着だった。

──って、え……?

ふと姿見を見ると、まくらの服だけが浮いていた。
「コッ、コラ!! そんなんで外に出るなっ!!」
慌ててまくらを引き止める。
「えっ、なっなんでよー!!」
「服だけ浮いて見えるんだよ、オレ以外には!!」
服をひっつかむ。
「だっだからって引っ張るなぁっ ──わぁあ!!」
ズルリ、と上が脱げてブラ姿を晒してしまうまくら。

『「・・・あ・・・」』

──硬直した計佑の頬に、まくらの平手が飛んだ。

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「いらっしゃいませ──」
ファミレスで席についた計佑に、ウエイトレスがお冷を一個だけ運んでくる。

──わかっちゃいたけど、やっぱりオレ以外には見えないんだよな……

まくらは、いつも通りのパジャマ姿に戻っている。
そして今は、計佑の向かいに座っていた。
「悪かったよさっきは……」
計佑がもう一度謝るが、まくらはまだ膨れていた。
「……何か子供の時のノリでやっちまったんだよ。 ──今度からはもうしねーからさ」
「……あ」
続いての計佑の言葉に、まくらが何か言いかけた時、
「お待たせしました──大盛りかきあげうどんでございます」
ウエイトレスが注文を運んできた。
「まあ……とにかくメシをくおーぜ。ほら隣来いよ。小皿にとってやるから」
「……っ」
何やらムッとしたまくらは、しかし席を移るのではなく、計佑が摘んだうどんに食らいついてきた。
そのままちゅるちゅると吸い上げる。
「なっ……なっ、何してくれてんのお前……」
「こっちの方が怪しまれないでしょ! ほら、計佑も食べるフリしてよ」
「……あ。ナルホド。そうだな……」

──そりゃ確かにこのほうが怪しまれはしないだろうけど。流石に近すぎるだろコレ……

目の前で、まくらがうどんを口の中に吸い込んでいる。
──それを見ていたら頭に血が上ってきて、まくらから離れると一気にうどんを食い尽くした。
「ああ〜〜っ!!ちょっとォ!!!」
「ごちそうさまっ、よし帰ろうぜっ」
「こんなんじゃ足りないよぉ!?」
まくらの抗議の声を無視して、会計を済ませてさっさと店を出た。

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──くそっ!! 最近のオレどうしちまったんだよっ!!

頭がぐるぐる回る。

──なんでまくらにドキドキするようになんか……いつからだ──?

そこで、一昨日知り合ったばかりの先輩のことが思い浮かんだ。

──そうだ、あの先輩と知り合ってから、なんかこんな変な風になっちまってるんだっ……!!

なんだか頭がグチャグチャで、雪姫に対するイライラすら募ってきた。
……八つ当たりなのはわかっていても。

──大体なんなんだよあのヒトはーっ!! いっつもオレの事からかってばかりくるしっ!!

しかし、その怒りはすぐに沈静化してしまう。

──……まあ、オレもヒドい事してるんだけど……いや、客観的にみたらオレのが全然ヒドい事してんだけど……

3回にも渡る痴漢行為の上に、彼女の仕事生命までも危うくしてしまった。

──……ホントにすいません。白井先輩……

自分にあのヒトを責める資格なんてなかった。ズーンと反省する。

「けーすけぇっ!!」
まくらがようやく追いついてきた。
「どうしちゃったの急に……? お腹でも痛くなった?」
不安そうに話しかけてくる。
……そんなまくらを見ていたら、またさっきのモヤモヤがぶり返してくるのを感じた。
「……悪い」
なんだかまくらを見ていられなくて、顔を背けてボソリと謝った。
「…………」
まくらはしばらく黙っていたが、
「カンチョーー!!」
いきなり明るい声をあげると、計佑に飛びかかってきた。
「はいぃ!?」
「食べ過ぎで苦しくなったんでしょー!? 全部出してやるっ!! オリャー!!」
「はぁ〜〜!? やめろバカ! このガキ!!」
「ガキって言ったほうがガキー!!」

そのまましばらく『ガキ』そのままな会話に興じる二人。
やがて、はしゃぎすぎで疲れたのか、地べたに座り込んでしまった。
「……ありがとな、まくら」
「んー? 何が?」
とぼけるまくらに、計佑もそれ以上は言わなかった。

──俺が気ィ使ってやらなきゃならない状況だってのに、なんか逆になってばかりだよな……ホント。

「……帰りにアイスでも買ってくか。今日は奢りだ」
借りっぱなしも面白くないし、とりあえず食いもので返しておくことにする。
「おお〜? やさしーじゃん!!! 何勘違いしてるのかしんないけどラッキ!!」
まくらが飛び上がってみせる。
計佑も軽く笑みながら立ち上がり、また歩き出した。

──とりあえず、あの写真のコトが何かわかるまでは現状維持かな……

ヴー ヴー ヴー──

そんな事を考えていると、ケータイがメール着信を伝えてきた。

──……ん!? 白井先輩!!??

思ってもみなかった人からのメールに驚きつつも、中身を読む。