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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「もっ、もおおおお!! だからなんでっ、いつもいつもいつもそういうトコをつついてくるのっ!?
ちょっと見栄張っただけなのにぃぃ!!」

 キーッ! と雪姫が喚いて腰を浮かせかけたが、

「せっ先輩!! 周りの目がありますからっ……!!」
「……あ……!」
 
 慌てて宥めると、ハッと我に返って。周りを見回して、どうにか落ち着いてくれた。

──ホッ……そっか、それにしてもよかった。
  先輩だって、あれで "ちょっとだけ" なんて思ってないんだな……
  だったら、あれよりスゴイのなんて、やっぱりそうそうないんだよな?

 少年が安堵しつつ、そんな事を考えていたけれど。
 雪姫の場合、あのクラスの嫉妬が通常値であり、
かつ簡単にあそこまで燃え上がってしまうという事こそが大変な訳なのだから、
今後も苦労させられるのは確実なのだけれど……
 その事には気付かずに、爆発しかけた雪姫を沈静出来た事と合わせて、
二重の意味で計佑がため息をついて安堵していると、まだ頬に赤みを残した雪姫は「う〜っ」と唸って。

「……計佑くん、本当はそういうの、ワザとやってたりしない……?」

 ジトリとした疑いの目を向けてきた。

「ええ!? まっまさか!! そんなワケないですよっ!?」

 まさかの疑惑に大いに慌てたが、雪姫の目つきは変わらない。

「……天然だったら許されるってものでもないんだよ……?
やってるコトは、アリスが私を弄ってくるのと大差ないじゃない……」

 不満そうな顔でブツブツと呟いてきたが、やがてため息をつくと。

「……えっと。今度こそ話を戻すね?
私の場合は、さっき言ったような理由だったけれど。
まくらちゃんの場合、計佑くんからアリスへの遠慮が全然なくなってたのが
気になったんじゃないかなあ、って思ったんだよね」
「……え、どういうコトですか?」
「うん……あの2日目の晩、計佑くんはイタズラばかりのアリスに対して、
馬乗りになって、こめかみをグリグリ〜っとかやってたよね?」
「……え〜と。確かにやってましたね……」
「でもああいうのって、その……私から見たら、
まくらちゃんに対する時の計佑くんと同じ感じにも見えたんだよね?」
「……え……」
「あの時は、私、動揺しちゃってて周りのコト考えてなかったけど、
あれだけ騒いじゃってたら、まくらちゃん達にも気付かれてただろうとは思うんだよね。
それでもって、ああいう……自分に対するのと同じようなコトをアリスにしている計佑くんを見て、
差別に対する不満とは違う種類のヤチモキ妬いちゃったんじゃあ、とか思ったんだけど……」
「……あ……!!」

 今朝の、まくらとの会話中に気付いたことを思い出した。
──突然、『ワシャワシャ』をやれと言い出したまくらの事。
『あれは私だけの……!!』そんな風にキレてきたまくら。今の雪姫の話で、改めて理解できた気がした。

──……そっか……差別されるのも面白くないけど、
  全く同じように扱ってるところも、それはそれで腹立たしかったんだな……

 まくらへの態度は粗雑だったかもしれないけれど、それは長年の絆という下地があっての事。
 なのに、まだ短い付き合いしかないアリスに対してもまくら同様に接している姿を見せてしまえば、
まくらの立場からは面白かろう筈もなくて。
……ましてや、あの日の午前中には、
まくら曰く『私だけの……!!』というワシャワシャをアリスにやっていたところを見られているのだ。
 加えて、まくらからの要求には答えなかったのだから、これはもうまくらとしてみれば、
妹としての立場は完全に奪われてしまったと考えたのも、無理はないのかもしれなかった。

「……そっか……本当にそんなつもりは全然なかったんだけど……
アイツがそんな風に思うのも当然だったんだな……」

 雪姫が心配そうに見つめてきている事には気づいていたけれど。
それでも、肩を落としてそんな風に呟いてしまう事は止められなかった。

─────────────────────────────────

 デザートが運ばれてきて、随分時間が経っていた。
話が一段落した事もあって、二人はしばし食事へと戻って。
 雪姫の解説で一度は気落ちした計佑だったが、ここまでの話──まくらの嫉妬について──は、
朝のまくらとの話し合いの間にもある程度は理解出来ていた事だったから、引きずらずにすぐ立ち直る事が出来た。
 やがてデザートも食べ終わって、それでもまだ話は残っていたので、ドリンクを注文して。

「でも、『疲れた』かぁ……そっちの話は難しそうだね……」
「そうなんですよね……そっちは、オレにもさっぱりわかんなくて」

 相談に戻ったのだけど、こちらについては、雪姫にもよくわからない様子だった。

──本当は、もう一点。
雪姫に対しても、まくらは何やら思うところがあったらしいという疑問もあったのだけれど、
これは流石に雪姫本人には言いづらかったので、割愛させてもらっていた。

 お互いに黙りこんで、ひとしきり考えこんでいたのだけれど、やがて雪姫がポツリと口を開いてきた。

「……もしかして、だけど。
『疲れた』って、計佑くん達との生活っていうよりも、お父さんに対しての話、だったりしないかな……?」
「……へ……?」

 全く意味がわからずに、きょとんとしてしまった。

「……え? いやだって、そっちに疲れたっていうんなら、尚更オレ達との生活を続けたいってなるんじゃ……」
「あ、ううん。そういう意味じゃなくてね……」

 計佑の疑問を遮った雪姫が、

「……えっと。まくらちゃんって、お父さんのコト大好きなんだよね?」
「あ、はい。それは間違いなく」

 尋ねてきたことに即答して。

「でも今までだと、まくらちゃんはお父さんとの時間、殆どとれてなかったんでしょう?」
「……はい」
「だったら、その……お父さんと一緒に過ごせない事の不満が募って、その事に『疲れて』。
それで、新しい環境……お父さんとの時間がとれるかもしれない方に行こうとしてるって事は……ないかな?」
「……え……」

──そう言えば……あの時のアイツ、『今の暮らしに疲れた』って言っただけなんだよな……
  俺達との、なんて言葉はついていなかった……

 雪姫のその言葉は、眼から鱗だった。
 てっきり、自分たちに対する不満からくる言葉だとばかり思い込んでいたけれど。
確かに雪姫の言うような考え方もある事に、今初めて気がついた。

「すごい、先輩……!! 確かに、それだったら全然納得出来ますよ!!」
「えっ、そっそう? 私の勝手な予想で自信なんかなかったんだけど……うん、
計佑くんもそう思ってくれるんなら、的はずれな意見じゃなかったみたいだね」

 意気込む計佑に、雪姫が微笑を返して。

……そう、必ずしも間違った考え方ではなかった。
確かに、今雪姫が披露したような考えも、まくらの中にはあった。
けれど、硝子のようなずば抜けた洞察力や由希子のような年の功がない二人では、
まくらの本当の胸の内を──察する事が出来ないのも、無理はなかった。