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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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『……う……ん。その事なんだけどね……』

 隆の口調が、急に歯切れの悪いものになった。

『……もう、まくらに連絡をとろうとするのは、やめてもらえないかな……?』
「……え……?」

 一瞬、何を言われているのかわからなかった。──いや、わかりたくなかった。

「……え……え、な、なんでですか? ど、どうしてそんな……」
『……まくらは、計佑君とは話したくないって言ってるんだよ……』

──それは。それは一応はわかってる。ケータイだって着拒されてるのだから。
──でも。まくらが何かまだ怒ってるというのなら、尚更話をしないと。
──何も話が出来ない状態では、いつまで経っても状況は変わらないじゃないか。

 そんな風に言いたいことはあったけれど、
まくらの保護者からも拒絶されるという事態に、もう上手く言葉も紡げなかった。

『……すまないね、計佑君。そういうワケだから──』
「ま! 待ってください!!」

 電話を切られそうな雰囲気に、どうにか金縛りが解けた。

「な、なんでまくらはそこまでオレにキレてるんですか!?
オレ、そこまで何かやっちゃってたんですか!?」

 動揺したまま、縋るように尋ねていた。

──後で落ち着いて考えてみれば、硝子や由希子や、
他にも回答を教えてくれそうな人間はいたのだけれど、
この時は動揺していた事もあって、まくらの父から聞き出せなければもう終わりのような気がしていた。

『……いや、その……計佑君が悪いワケじゃあないんだよ。
親としては、確かに腹立たしい部分もあるんだけど、でも同じ男としては……責められないというか……
……うん、やっぱりどちらが悪いという話じゃないんだよ。
ただ強いて言えば、まくらと計佑君、どちらにも責任はあるとは言えるのかもしれないけどね……』

 隆がそんな風に諭してきたけれど、まるで理解出来なかった。だから、

「お願いですっ、おじさん!! 一度だけ、一度でもいいから、ちゃんとまくらと話をさせてくださいっ」

 もう一度そんな風に縋ってみせたのだけれど、

『……本当にすまないね、計佑君。とにかく、しばらくの間はそっとしておいて欲しいんだ。
……電話がある度に、まくらが震えるんだよ。……流石に、もう見ていられないんだよ』
「……そ……んな……」

 自分の行動のせいで、まくらが苦しんでいる。

──そんな話を聞かされては、もうこの少年では我は通せなかった。

『……こういう問題は、時間が1番の特効薬なんだよ。
いつかは、ちゃんとまくらも落ち着けると思うから、とにかくしばらくは我慢してほしい、計佑君』

 多分、それが向こうの最後の言葉だった。
気がついたら、受話器からはツー、ツー、という音が聞こえてきていて。

 いつ電話が切られたのかには、全く気が付かなかった。


─────────────────────────────────

 実力テストが終わって、教師からの採点・返却も済んで。
一段落した計佑たちは、今日から天文部の活動を再開する事にした。

──といっても、今部室にいるのは計佑と硝子だけだ。
雪姫は委員会活動で、
茂武市は『こないだナンパしたコから連絡が来た! というワケで今日はパス!!』と、
アリスは一応顔を出したのだけれど、硝子が未だに怖いらしく、早々に早退していった。
──まあ、硝子と二人っきりという訳でもないのだから、
計佑がしっかり相手をしてやっていればアリスは逃げ出したりはしなかった筈なのだけれど、
今日の計佑はアリスがじゃれついてきても生返事ばかりで、ろくに構ってはやらなかったのだった。

「…………」
「…………」

 二人共ずっと無言のままで、
室内に響く音は掛け時計の秒針の音と、硝子がノートに走らせるシャーペンの音ばかりだ。
そんな静かな空間の中、硝子は黙々と今日出された課題を片付けていたのだけれど、突然その手を止めて。

「……目覚くん、今日は随分腑抜けちゃってるみたいだね」

 顔は上げずに、ポツリと計佑に話しかけてきた。
 特に何をするでもなく、ただ椅子に腰掛けてボ〜っと天井を眺めていた計佑だったが、
しばらく間を空けてからようやく、話しかけられた事に気付いた。

「……あ。ご、ごめん須々野さん。なんか言った……?」

 我に返って硝子に尋ね返したが、
硝子はチラリと一度目線を上げてきただけで、またノートへと向かうとシャーペンを動かし始めた。

「……えっと……」

 なんとも気まずい。
呆けていて気付かなかったが、どうやら今日の硝子は機嫌が悪いようだ。
 メンバーは全然集まっていないし、自分も呆けてばかりで何の活動もしていない。
もう今日はお開きにしようかと考えた所で、

「まくらの事でも考えてた?」
「えっ!? ……い、いや、そんなコトないよ?
今日は人も来ないし、もうお開きにしようかなーって、そんな事を──」

 直前の瞬間に考えていた事 "だけ" 口にして、出来るだけウソをつかずに誤魔化そうとしたのだけれど、

「ふうん。今日は一日中ずっとぼんやりしてたみたいだけど、
その間ずっと『早く家に帰りたい』なんて考えてたんだ?」

 硝子には簡単に看破されている様子だった。

──……まあ、須々野さん相手に誤魔化せるワケもないか……

 諦観のためいきを軽くついたところに、

「まくらに避けられてるんでしょう?」
「……っ」

 直球で追い打ちをかけられた。

「す、スゴイね……相変わらず……なんでそんなコトまでわかるの?」

 相変わらずの超絶的なカンの冴えに驚愕していたけれど、

「別に。これは単にまくらから聞いただけの事だよ」
「……あ。そ、そうなんだ……」

 今日の硝子は、読みの鋭さだけでこちらを驚かせてきた訳ではなかったようだ。

「そっか……須々野さんとは、ちゃんと連絡とってるんだね、アイツ」

 まくらが避けているのは自分だけ──わかりきってはいたけれど、改めて思い知らされる事実はやはり苦しかった。

「……なのに、オレの事はシャットアウトか」

 溜息をついて、その先を呟いた。

「……薄情なヤツだよな……」

──本気で、そんな風に思っていた訳ではなかった。
いや、昨日までは確かにそんな気持ちもあったと思う。
 それでも、昨夜まくらの父から話を聞いた後では……もうそんな風には思っていなかった。
けれど今、愚痴ろうとする為に口にする言葉には、
どうしてもそんな五文字の単語が含まれるのは避けられなかったのだ。

……そして、半ば覚悟していた通り、

「……薄情、ですって……!?」

 硝子が一気に怒気を膨れ上がらせるのがわかった。
それでも、多分そうなるだろう事は覚悟出来ていた事もあって、ただ項垂れて硝子の罵倒を待ち受けていたら──
硝子が大きくつく溜息の声が聞こえてきた。
 その溜息に乗せて怒りを吐き出しているのか、硝子の怒気がみるみる萎んでいくのを感じて。
のろのろと顔を上げると、硝子が苦い笑みを浮かべてこちらを見つめてきていた。

「……目覚くんも、随分苦しんでいるみたいだね。
わざと私を怒らせて、自分の事を叱らせようとでもしたの?」