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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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『万が一そんな事になった時。私が家族って呼べる人は、もう計佑たちしかいないの。つまり──』
『保険、って事……? 
今はお父さんの方についていくけれど、万が一の事態になった時の家族を残しておく為に……
その為に、気まずくなるなんて事態は、避けておきたいって事なの……?』
『さっすが硝子ちゃん、理解がはや〜い!!
……そうだよ。こんな黒い話、ドン引きだよね?
……でもね、これが硝子ちゃんが知りたがった私の本音なの。
私は、一人で寂しく生きていくなんてコトだけは、絶対耐えられないんだ』
『……そんな……』

──なんて黒い。天真爛漫に見せている癖に、本当はそんな計算高い事を。
──他人から見たら、そんな風に思うかもしれないまくらの考え。

……けれど、計佑にはむしろまくららしい気がしていた。

 まくらが、誰よりも孤独を嫌う事をよく知っていたから。
その点だけは、まくらの父親よりも、由希子よりも自分こそが1番知っていると自負していたから──
まくらが寂しさから逃れようとする考えを誰にも否定はさせないと、そんな風に思う計佑にとっては。
硝子の声に、僅かとは言え責めるような響きが含まれていた事が、
その事のほうがまくらの計算高い言葉よりよほど腹立たしかった。

『……そんなの……でもっ。
目覚くんなら、ちょっとくらい気まずくなっても、絶対まくらのこと見捨てたりしないでしょうっ!?
目覚くんはっ、鈍い所はあっても度量は広い人だもの……!』
『ええー……? うーん、どうかなぁ? 最近の計佑、ちょっと微妙な気もするんだよねぇ……』

──凹んだ。
……まあ、最近の自分の色々を顧みれば、認められる筈もない事はわかっているつもりだったけれど。

『そっ……それは!! それはそうかもしれないけどっ、でも!!
あの人の犯罪的な鈍さを考えてみてよ!?
目覚くんならっ、一時的に気まずくなったとしても、
どうせその内綺麗に忘れて、のほほんとした態度をとるようになるに決まってるよ!!』

──ますます凹んだ。
……硝子はこれで、本当にフォローしてくれているつもりなのだろうか。
 確かに自分は激鈍だとは思うけれど、
まくらがそんな気持ちだったと知ってまでのほほんとなんて、いくら何でも出来ないと思うのだけれど──

『……え、ええ〜……? し、硝子ちゃんもキッツいね……いくら計佑でもそこまでなんて……なんて……
……んんん? ……言われてみれば、確かにそんな気もしてきたかも……?』

──一瞬は否定してくれようとしていた筈のまくらまで、結局は同意。
今度こそ、完全に項垂れて。
つい、ジトリと硝子を見上げてしまった。

……その視線で、今どの辺りの会話を聞いているのか察したのだろう。
硝子は『あっ……』と小さい声を出すと、気まずそうに視線を逸らした。

──けれど、まくらと硝子の会話はまだ続くようだ。
仕方なく、どこか納得いかないながらも意識をそちらに戻す。

『……ていうかさ……どうして硝子ちゃんはそこまで拘るのかな?」
『えっ……!?』
『私が計佑の事をどう思ってようと──』

──そこで、まくらが息を呑むような音を挟んで。

『……ねえ、硝子ちゃん? もしか──』

──またも言葉が途切れた。

……といっても、今度のはまくらが言葉を切ったというよりも、
録音そのものがいきなり止められたかのような不自然な感じだった。
 まさかこれで終わりなのだろうかと硝子に目をやったが、硝子は相変わらず気まずそうに視線を逸らしたままで。
はっきり尋ねようかとした瞬間、

『確かにわたしは、計佑のコトがずっと大好きだったよ』

──完全に不意打ちだった。

 いや、ここまでの会話で、一応はもう察していた事だけれど。
はっきりと口にされてしまった言葉には、やはり衝撃があった。

……直前には、二人がかりでこちらを罵倒するという、油断を誘う展開も挟まれていただけに尚更だ。

『……しばらく前に。初めて計佑に「カワイイ」なんて言われたんだ……』

──ドキリとする。自分がシスコンだと自覚した時の──あの夜の事か。

『……すごく嬉しかったんだよねー……だって初めてだったんだよ? 計佑がそんなコト言ってくれるなんて。
……だからつい、"まさか!?" ……な〜んて、バカな期待まで一瞬しちゃってさぁ……』
『……まくら……』
『……勿論、すぐに "妹として" って、しっかりきっぱり釘さされて、ついキレちゃったりしたんだけどネ』

──あはははは、とまくらが笑う声が続いたけれど。

……無理して笑ってみせている事くらいは、流石に理解出来た。

『ひっさしぶりに応援しに来てくれるっていうから張り切ってみれば、思いっきりシカトしてくれちゃうし。
次の日になってみれば、アリスちゃんとの仲がますます進展しちゃってるし。
私にするみたいに乱暴なコトしてるかと思えば、私の時よりず〜っと優しくもしてるんだもの。
……せめて妹としては1番の筈って思おうとしてたのに、そんなの心折れるに決まってるよね〜……』

──雪姫との相談で導き出せた答え。それ自体はやはり正解ではあったけれど。
……でも、今となっては。
……まくらの本音がわかってしまった、今となっては……

『……前はよかったな〜……計佑の周りにいる女の子なんて私しかいなくて。
計佑はずっと女のコになんて興味なくて。だから、妹でも全然よかったんだけどなぁ。
だって、妹の私が計佑に1番近い女のコだったから。
……でも雪姫先輩が現れてから、すっかり変わっちゃった』

──まくらが、大きく……大きく、溜息をついて。

『……そう、結局のトコロ、雪姫先輩のお陰だったんだよね。
ちゃんと計佑と離れる決心つけられたのは、さ。
"雪姫先輩みたいなスゴイ人が相手なら、すっぱり諦められる" ────そんな風に思ってたクセに、
わたし、ずるずると引きずりまくっててさぁ……ホントみっともないなあって思ってたんだけど──』
『──違う、違うんだよまくらっ……あの人は、白井先輩はまくらが引け目を感じる必要なんかない人だよ……』

──違和感を覚えた。……硝子が雪姫を否定してる?

 けれど、まくらはその硝子の言葉を聞いていないかのように独白を続けて。
そちらに意識を傾ける計佑も、その違和感について深く考える事はなかった。

『──合宿の夜、計佑が雪姫先輩にしがみついて、ワンワン泣いててね?
それ見た時さ……ずぅっと一緒だった私にだって見せてくれたコトない、
あんな風に全部委ねてさらけ出した姿、雪姫先輩には見せられるんだ……って、そう思った時。
私、ようやくわかったんだよね…… "妹でもいいから傍にいたい" なんて大嘘だったんだって。
結局のトコロ、計佑のことが好きで好きで、
諦めなんかつかないからそんな風に自分を誤魔化そうとしていただけなんだって。

……初めて、雪姫先輩のコト憎いって思っちゃった瞬間、ようやく気づいちゃったんだぁ……』

『……まくら……』
『……そんなのに気づいちゃったらさ? もう一気にキツさが限界超えちゃって。