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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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……自分だったら、嫉妬に狂うばかりで、まくらとその相手の事を応援など、まるで出来る気はしなかった。

 そして、あの時の事を思い出していたら、とあるまくらの言葉も思い出して。
──『私の好きな人なんて、言えるワケないでしょ!?』──
その可笑しさで、皮肉げに唇の片側をつりあげた。

──そりゃ言えるワケないんだよな……

 相手は目の前にいた自分だったのだから。そして、
『私なんか、どう逆立ちしたって勝ち目ないんだ』
そんな事を言っていた理由も、今なら理解できた。

──先輩が相手だって言うんなら、そりゃあそんな風に思うかもな……

 あちらは、基本的には完全無欠の、才色兼備なお嬢様だ。
まくらがそんな風に卑屈になってしまうのも、無理はなかったとも思う。

……けれど。
男が相手を選ぶのに、惚れるのに、そんなのは全然関係無いんだと、
お前の魅力は先輩にだって負けてなどいないんだと、今ならそう言ってやる事も出来るのに。

 そんな風に思ったところで、
──『……目覚くんは、絶対後悔するから……!!』──
まくらの試合を応援しに行った時の、硝子の言葉を思い出した。

「……はは……」

 自嘲の笑みが漏れた。

「……ホント。須々野さんの言う事にハズレなし、だな……」

 身体を折り曲げ、門扉の上に額を乗せて。
まだまだ厳しい日差しの下にも関わらず、少年は随分と長い間、その体勢のまま動かなかった。


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「……けーすけ? もうみんな帰ったぞ……?」
「……え? あ……」

 部活に出ていた計佑がアリスの言葉で我に返ると、確かに部室内には他の人間はもういなかった。
 残っているのは、自分の足の間に腰掛けているアリスと、
そのアリスのお腹に片手を回して、もう片方の手では少女の髪を弄び続けている自分だけで。

「……悪い。引き止めちまってたみたいだな」
「いや、そんなのはいーんだけど……」

 頭を後ろに倒して、こちらの顔を見上げてくる少女。
その表情には、はっきりと心配している色が浮かんでいた。

「オマエ、なんかこないだからボーっとしてばっかじゃないか。大丈夫なのか……?」

 小学生モドキに心配されている自分に、苦笑が漏れそうになった。それでもどうにか取り繕って、

「いや、だいじょぶだいじょぶ。ただの夏休みボケだからさ」

 笑いかけて、ゆっくりとアリスの額を撫でてみせた。
けれどそれに、アリスは不満そうに唇を尖らせると。頭を前に戻した。

「……やっぱり変だ……」
「……ん? なにがだ……?」

 アリスのつむじを見下ろしながら、変わらず頭を撫で続ける。

「……なんで最近、そんな優しくしてばっかくんだよ……前は、しょっちゅうアタシの事、弄って遊んでたのに」
「……ん〜? そうだったっけ……」

 内心ドキリとしたけれど、とぼけてみせた。

「まあ、それだったら別に悪いこっちゃないだろ? 優しくなったってんなら、何が不満なんだよ」
「……それは……」

 相変わらずアリスの顔は前を向いたままで、表情は見えなかったけれど。
その顔いっぱいに『でも、なんか気に入らないんだよ』という感情が浮かんでいる様が想像できて、
なんだか笑いがこみ上げてきた。

「おいおい、何だよ?
『いぢめてくんないとなんだか寂しいの』なんて、お前そんなマゾっ娘だったのか?」
「マゾッ……!? ち、違うもんっ!! わ、私そんなんじゃないもんっ、た、ただ私はっ……!!」

 久しぶりにからかってみせると、弾かれたようにアリスが振り返ってきて。
その真っ赤な顔に和みながら、……でも、心配してくれた少女をこんな風に誤魔化してしまう事への
罪悪感に痛みも感じながら──以前の自分を演じてみせる。

「……まあそうは言ってもなぁ。特に悪さもしてないのに、きつく弄るのも違うもんな。
なんでお前最近悪さを……ってそうか、先輩が来ないからだな……」

 アリスの悪戯といえば、大抵は雪姫絡みだった。
けれど、二学期が始まって以降、雪姫は一度も部活に顔を出していなかった。
となれば、アリスが雪姫をおちょくって、自分が叱るという構図も当然無くなっていた訳なのだけれど──

「……先輩、どうしてる? お前、家では相変わらず先輩をからかったりしてるのか」
「最近はそういうコトしてないよ。夏休み、おねーちゃんにはでっかい借り作っちゃったし。
……それに、なんかちょっと元気ない感じもしてるからさ……」

 そんな風に答えてきたアリスは、一瞬沈んで見せたが、

「……まあ、最近のおねーちゃん忙しいせいで、オマエにもあんま会えてないみたいだしな!!
元気ないのはそのせいなんだろーけど!!」

『この色男め』という意思を込めてか、ニシシと笑ってくるアリスに、

「……お前にまでイジられてやるつもりはねーんだよ、このチビッコがっ」

 チョップをお見舞いしてやる。

「いたぁ!? な、なんだよっ、照れくさいからってボーリョク振るうなよな!!」
「だまれマゾッ子!! お前が望んだ通りにしてやっただけの話だろーが!!」

 二人の妹を立て続けになくして、内心飢えていた少年は。
そうやって、唯一残された "妹の存在" に縋るかのように、アリスとの戯れを続けるのだった。


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 帰宅した計佑は、すぐにベッドに身体を投げ出して。
しばらくの間天井を眺めていたのだけれど、やがてのろのろとケータイを取り出した。

──もう引き伸ばすワケにもいかない、よな……

 メールを打ち始める。
相手は──雪姫。
要件は──さんざん待たせてきてしまった "返事" についてだった。

──さんざん待たせて、ようやく、か……

 正直、気は重い。重すぎるくらいだ。

──もう少し時間が欲しい。
──完全に、気持ちが落ち着いてからでも。
──大事な話なのだ、自分にはまだ混乱してる部分だってあるのだから。

……そんな風に考えて、先延ばしにしてきた。
最近、雪姫からの接触や連絡がなかったのをいい事に。
 けれど、今日のアリスとの話で……やはりもうそういう訳にもいかないと、とうとう決心した。
元々、"自分の気持ちがはっきりわかった時にはちゃんと答える" というのが約束だった。
だからもう、逃げ続ける訳にはいかないのだ。

……けれど……

──……それでも……もう少しだけでも……

 決心した筈なのに、手が止まってしまう。はあっ、と大きく溜息をついたりして。
結局、たった数行程度のメールを打つのに、1時間近くかかってしまったのだった。

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 計佑からのメールを見た雪姫は、ついにこの瞬間が来てしまったかと、深く溜息をついた。
その要件は至極単純──『二人で話がしたい』──ただそれだけの内容だった。

──こないだのデートの時みたいな、全然別の話……なんてオチは、期待出来ないよね……

 聞かなくても、内容はわかりきっている話。