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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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 計佑が起き上がってすぐに電話をかけると、しばらくの間コール音が鳴り続いて。──やがて、ついに繋がった。

 『…………………………』

 ここしばらくは留守電ばかりだったのに、今日この時にはしっかり繋がった電話。
なのに、延々と貫かれる無言。
それら自体が、ある意味もう答えになっているのだけれど、やっぱりそれを認める事は出来なくて、

「……せっ先輩!! あっあの、変なコト聞きますけどっ、オレ今日先輩に会ったりなんてしてませんよねっ?」
 
 そう、痛む頭をおして尋ねた瞬間。

……電話の向こうから、とんでもない鬼気が伝わってきた気がした。

『……まさか、覚えてないとでも言うつもりなの……っ……』

──地をはうような低い声。雪姫からそんな声を聞く事なんて、きっと一生ないだろうと思っていた、そんな声に。

──……だよなぁ……夢のわきゃないって、ホントはオレだって……

 とうとう諦めがついた。
そして余りの恐ろしさに、心が逃避を始める。──それこそ、夕方の図書室で雪姫もやっていた時のような。

──……あ〜……それにしても、先輩でもこんなに怖くなったりするコトあるんだなあ……
  今の先輩だったら、鬼モードの須々野さんにだって負けないんだろうなぁ……

 そんな益体もないことを考えて現実逃避していたら、

『……ナニ無視してくれちゃってるのカシラ、計佑クン……?』

 発音がどこかおかしいその声に、我に返った。

「はっ!? いっいや! すっ、すいませんでしたっ……!!!!」

 慌てて謝ったのだけれど、電話の向こうの雪姫の怒気はまた膨れ上がったような気がした。

『……ソノ謝罪はドウイウ意味かな……モシカして覚えてないコトを謝ってるのカシラ……』
「えっ!? いっいやその、それは……」

 全部覚えている。──いるとは思うけれど、そう正直に口にするのも怖くて口ごもっていると、

『……コレ以上トボケヨウってイウンナラ──』
「おっ覚えてます!! 多分全部!!」

 余りの迫力に、慌てて告白した。

『………………』

 すると、しばらくの間雪姫は沈黙して。

『……全部って、どこからどこまで……?』

 ようやく、雪姫の声がある程度は落ち着いてくれた。けれど、

「……えっと、先輩と図書室で話し始めて、その、覆いかぶさった後、少しくらいまでは……」
『…………』

 答えてからわずかな間の沈黙の後、いきなりプツッと電話は切られてしまった。

──……おわった……

 コテン、と計佑がベッドに倒れこんで。

……真っ白に燃え尽きた少年は、今度こそ夢の世界へと逃避を決め込むのだった。


─────────────────────────────────

 次の日の朝を迎えても、計佑は布団の中に逃げ込み続けていた。

……が、そんな逃避を由希子が許す筈もなく、鉄山靠で家を追い出されて。
 自転車を走らせる気にもなれず、足を引きずるようにして何度も立ち止まりながら
学校へと着いたのは昼休みも終わった後だった。
 何があったのかと心配する友人たちに碌な返事も出来ず──ただし茂武市にだけは、
逆恨みとわかりつつも、つい恨みがましい目を向けてしまったりもしたのだけれど。
 そうやってグダグダと午後の授業を過ごして、放課後になったところで、また茂武市が計佑のところにやってきた。

「おい……ホントにどうしたよ計佑? 昨日、まさか上手くいかなかったってのか?」
「……あ〜……アレ飲んだら、やたら気が大きくなってな……いきなり先輩押し倒しちまったよ……」

 その答えに、流石の茂武市も絶句して。
そんな友人の顔を、机に上半身を預けたまま見上げていたけれど、責めるような言動はどうにか抑えこんでいた。
 こいつに渡された酒のせいで──どうしてもそんな風に考えてしまいはするけれど、
結局のところ悪いのは自分だという事はちゃんと弁えていた。

……いたつもりなのだけれど、それでも恨みがましい目はしていたのだろう、
茂武市が気まずそうに一声謝って、そそくさと逃げ出そうとしたところで、

「けーすけーっ、テメーーッッ!!!」

 怒声と共にアリスが教室へと飛び込んできた。
のろのろと計佑がそちらに顔を向けた時には、もうアリスは飛び上がっていて、
その勢いのまま計佑を蹴り飛ばしてきた。

──ガターン!! と派手な音を立てて、何の抵抗もしなかった計佑が椅子ごと床へと倒れこむ。
そんな少年へと更なる追撃をかけようとしていたアリスを、慌てて茂武市が後ろから押さえこんだ。

「けーすけっ、オマエおねーちゃんに一体なにしやがったっっ!!! 」

 もがきながらのアリスの言葉に、ビクリと少年が震えた。

「昨日からおねーちゃんが完全におかしくなっちゃったんだぞ!
あ、あんな、あんな変なおねえちゃんなんか……!! どーせオマエのせいなんだろっ!!?」

 そんな子供の糾弾に、計佑は倒れたまま両膝を抱えると丸くなって。

「……もっと罵ってくれ……いや、もっと蹴ってくれてもいい……」
「……ひっ!? な、なにいってんだこのヘンタイ……!?」
「……け、計佑お前なあ……」

 計佑のドM発言に、アリスがドン引きして、茂武市が顔を両手で覆って天を仰いだ。
それでも計佑は床で丸くなったままだ。
 茂武市が溜息をつくと、アリスを教室の隅まで引っ張っていく。
何かを話し込んで、渋々ながらもアリスが教室を出て行くと、また計佑のところへと戻ってきた。

「おい、いー加減にしろよ計佑。いつまでそうしてるつもりなんだよ」

 無理やり引っ張り起こされて、よろよろと立ち上がる計佑。茂武市が辺りを見回す。
教室にはもう殆ど人は残っていなかったが、それでも室内の全員が好奇の視線を向けてきていた。

「……とりあえず、部室にでも行くぞ」
「…………」

 抵抗はしないが積極的に歩こうともしない少年が、
ズルズルと引きずられるように天文部室へと連れて行かれるのだった。

─────────────────────────────────

 部室へとたどり着くと、計佑はすぐにテーブルへと突っ伏して。
その様に茂武市は溜息をつくと、メールを打ち始めた。それを済ませると、

「……とりあえず、白井先輩呼んどいたわ」

 計佑にとってはとんでもない爆弾発言をかましてきた。

「──なあっ!? な、何してくれてんだよお前っ……!」

 ぐずぐずに溶けていた少年が、ガバっと身体を起こす。
久しぶりの俊敏な動きで立ち上がると、慌てて部屋から飛び出そうとして、

「おいこら、どこに行こうってんだよ」

 茂武市に首根っこを掴まれてしまった。

「ちょっ、てめっ……何なんだよっ、昨日からお前の──」

 アルコールの事といい、今の雪姫への連絡といい、
余計なお節介ばかりしてくる友人にとうとう怒りが爆発しそうになったけれど、

「……あのな、昨日のコトは悪かった。
オレの考えが浅かったせいで、余計なトラブル引き起こしちまって」

 珍しく、真摯に頭を下げてくる茂武市に、それ以上怒りはぶつけられなかった。
そもそもが逆恨みだと言う事もわかっているだけに。