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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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勿論そんなことは口に出せないけれど、
委員長の気遣いを聞いても、まくらは特にリアクションを起こさない。

──こりゃ本格的に機嫌わるいなー……?
ちょっと場所を移して、ちゃんと話したほうがいいかもしれない。

そう考えたところで突然、計佑の荷物から着メロが流れだした。
そのメロディは当然計佑にも覚えがある。
──とはいっても計佑のケータイのものではなくて……

──まさかっ!?

「……あれ? その着メロまくらと一緒じゃない?」
タイミングのよさがひっかかったのか、硝子が近づいてきた。
<B>「そっそんなワケねーよ!! ……ちょっとトイレ行ってくる!!」</B>
慌てて大声を出してしまったせいで、向かいの雪姫が目を覚ました。
しかし余裕のない計佑は謝罪もそこそこに、バッグとまくらをひっぱって席を離れた。

───ピシャン!

貫通扉を閉め、貫通路にしゃがみこんでバッグをあらためる。
「このバカっ!! いつのまにケータイなんか放りこんでやがったっ!!」
「あああ!! ちょっと! 勝手に人のバッグ開けないでよっ!!」
「これは俺のバッグだろーが!!」
絡み付いてくるまくらを無視して中身を確認すると、

──ぶっ!!??

水着がでてきた──女物の。
つまみあげた計佑に、
「さわるなーっ!!」
まくらが首を絞めてくるが、計佑も黙ってはいられない。
「オマエ……せめて前もって──」
そこで貫通扉が開く音が聞こえて、はっとして振り返る。
「どうしたの?」
そこにいたのは雪姫だった。
「なっ何でもありません!!」
慌ててズボンのポケットに水着をつっこんだが、
「……ん?」
そんな不審な行動を、見逃してくれる雪姫ではなかった。
「……今なにか隠さなかった?」
ジト目になった雪姫が尋ねてくる。
「いえいえ別に……!?」
ブンブン首を振るしかない計佑だが、
「私の水着とるなよ!!」
まくらが絡み付いて、ポケットに手を伸ばしてくる。

──ふざけんなっっ!!! 今ここで女物の水着なんかポケットから出てきたら……!?

「ちょっと大人しくしてろっ」
雪姫の前だが、流石に無視できず小声でまくらの耳元に叱りつける。
そんな怪しげな行動にますます訝しげな雪姫。
「…………」
無言で、すっと近づいてくる。
ギクリとするも、ヒュッと伸びてくる雪姫の手が、
あっと思う間もなく水着を突っ込んだポケットのほうに──

──おあああああぁ!!??

ポケットに手をかけられたところで、ギリギリその手をつかまえた。
至近距離で見つめ合い──雪姫の顔がニヤリとする。
「んー? 何も隠してないにしては随分な反応だねー?」
何度も見惚れてしまった美貌が至近距離にあるが、今の計佑は焦りからのドキドキしか感じない。

──先輩にばれたら……っ!!

「えいっ!」
雪姫が反対の手まで使ってポケットの中身をさぐりにきた。

──!!!!

<b>「やめてくださいっ!!!」</b>
思わず本気で怒鳴ってしまっていた。空気が一瞬で凍り付く。
「……あ」
我に返る。
雪姫も目を見開いていて、
「……ご、ごめんなさい……」
そして、急に悄然としてしまった。
俯いて、計佑から離れる。なんだか身体が小さくなったかのように、縮こまってもいる。
「……本当にごめんね? ちょっと無神経だったね……」
俯いたまま、計佑と視線を合わせようとしない。
公園でも一瞬見た、悲しそうな表情。
あの時はなんでそんな顔をするのかよくわからなかったが、今は間違いなく自分のせいなんだ──
そう思ったらいてもたってもいられずに、ポケットから水着を引っ張りだして雪姫の前に差し出していた。
「すいませんっ!! これを見られるのはどうしても恥ずかしかったからっ……」
「……え?」
「なんか間違って妹みたいなやつの荷物が紛れ込んでてっ……あのっ、こんなの見られたらそのっ……」
──変態とか思われるだろうから……という言葉は流石に続けられなかった。

──にしたって、怒鳴ってまで隠そうとするなんて。なんで俺……

委員長や森野先輩が相手だったとしても、勿論隠そうとはしただろう。
でも、なんで白井先輩だとここまで極端に抵抗があったのか……自分の事なのに分からなかった。
「……ぷっ……」
「……え?」
恥ずかしさで俯けていた熱い顔を上げると、雪姫が笑っていた。
「……それだけなの? 荷物を間違うくらい普通なことじゃない」
笑顔で雪姫が続けてくれる。
その笑顔に、計佑は、顔がさっきとは何か違う理由で熱くなるのを感じた。
軽蔑されるのも覚悟していたのに、そんな風に笑ってもらえたりしたら──
「ほら! 早く戻ろっ!!」
雪姫が手を握ってくる。また一段と熱が上がる気がした。
「みんなでUNOやるんだって」

手を引かれるままに戻っていく少年。
──まくらの機嫌のことなど、すっかり忘れてしまったままで。

─────────────────────────────────

──本当によかった……怒らせたんじゃなくて。

せっかく計佑の向かいに座っていたのに、疲れからかいつの間にか眠ってしまっていた。
──男のコの目の前で眠っていられるというのも、彼相手だったからかもしれないけれど。
それでも、彼と色んな話をしてみたかった雪姫としては悔しいことだった。
別にそれを取り戻そうとした訳ではないけれど、
また彼をからかえるチャンスかと思っての今のやり取りだったのだが……正直、本当にびっくりした。
計佑に本気で拒絶された──そのショックは意外なほど大きくて。
もし彼がすぐにネタバラシをしてくれなかったら、涙まで零していたかもしれない。
だから彼が訳を打ち明けてくれた時には、心底ほっとした。

──でもそんなに恥ずかしいものかな? 服を間違えるくらい……

自分も結構うっかりなところがあるので、そんな風に考えてしまう。

──もしかして、変態とかとそういう事思われそうとか考えたのかな……?

しかし、雪姫は計佑がそんな類の人間だとは全く思っていなかった。
結構色々とやらかされてしまってはいるが、
彼が下心からやってきている訳じゃないのはわかるからだ。
いやらしい目でジロジロ見てきたり、言い寄ってくる人たちとは確かに違う──そう信じられる人だ。
(それに彼になら、今までそういう事をされてきてもイヤだと感じた事もない)
だから妹だかの水着がまぎれてしまったというのも、全く疑ってはいなかった。

──それにしても。

先ほどの、水着をつきだしてプルプル震えていた少年の姿を思い出して。

──やっぱりカワイイなぁ……

時々大胆な迫り方? をしてくる時には大いに焦らされてしまうのだけど、
狼狽えている時の姿は一転、とても可愛らしい。
そんな姿を見たから、今も安心して計佑の手を握ることが出来たのだった。

─────────────────────────────────

「じゃーん!着いたぞーっ!!」
ドカンと広い屋敷を前に、カリナの元気な声が通る。
「どーだお前らっ! 圧巻のデカさだろうがっ!!」
「貴方の家じゃないのに自慢しないで……?」
雪姫が苦笑して窘めたがが、勿論カリナは聞いていない。