白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
お辞儀をして去っていく女性。
ほっとため息をつく計佑だったが、
──なんだよホント……都合良すぎんじゃないのか、この幽霊状態って……
あらためてまくらの状態に疑問を抱くのだった。
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その後。
計佑も水着に着替え、皆と海で遊んでいた。
出来るだけまくらと一緒にいるようにして──
そして夕方になる今は、まくらと二人きりで砂の城など作っていた。
「誰かが私の願い叶えてくれたのかもね。
──例えば、私をこんな風にしちゃった原因の誰かがいて、せめてものお詫びにー……とかさ」
まくらが水着現象について、そんなお人好しな発言をしている。
「けーすけ……ごめんね。今日の私ちょっと態度悪かったかも……
せっかく遊びに連れてきてくれたのに、変にすねちゃってさ」
そんな風に謝ってくるまくらは、夕日のせいなのかいつもより小さく見える気がした。
──やっぱりコイツ、この状態に弱ってるんだよな……
わかってるつもりなのに、つい俺はいつもみたいにしちまうけど。今は俺がちゃんと支えてやらなきゃ……
改めてまくらの心配をしていると、
「ねえ計佑……先輩のこと……わたし応援してあげよっか?」
<i>「はっハァ!?」</i>
まくらからの思いがけないセリフが飛んできて。つい声が裏返った。
「まあ……今の私に出来ることはあんまりないんだろうけどねー。
でもさっ、女心のアドバイスくらいはしてあげられるヨ」
しなをつくって、『大人のワタシが世話してあげるワ』みたいなわざとらしい笑顔でおどけてくるまくら。
「なっ何言ってんだよ……俺は別に先輩の事なんて──」
──その先は続けられなかった。
何とも思ってない……とは言い切れなかったからだ。
正直とても気になる人なのは確かだった。
でもそれじゃあ、恋人同士になりたいとかそんな風に考えてるのか? というと、それも違うような気もして。
改めて考えてみると、雪姫の存在が自分の中で随分大きくなってる事には気づいたが、
でもそれがどういう意味なのかは、考えても答えが出せなかった。
「お、俺は……」
それでも今、まくらの前で黙りこんでしまうのにも何故か抵抗があって、何かしら口にしようとしたが、
「さみしーなぁ、ひとりで砂遊びなんて」
たった今考えていた人からの声に、バッと振り返った。
……振り返ってしまった計佑には、その瞬間のまくらの表情は見えなかった。
「私も一緒に遊ぼっかな」
雪姫がすぐそこまで来ていた。
未だ見慣れない先輩の水着姿に、また計佑の顔が赤くなっていく。
たちまち余裕がなくなっていく計佑には、
ついさっきまくらに感じた抵抗も忘れて、やはり雪姫に見とれる事しか出来ないのだった。
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<7話のあとがき>
水着を必死に隠す計佑くん。
この人にだけは知られたくない。なぜなら──みたいなつもりでした。
まあこの時点でも計佑には自覚はないんですけど……
あとこんなんでも、自分の中では計佑をカッコよく書いてみたつもり……だったりします。
雪姫を凹ましてしまうくらいなら、
自分の恥くらい──って思いきれるのは、やっぱりスゴイことなんじゃないかなあという。
あと、計佑の鈍感ぶりをちょっとはフォローできたんじゃないかな……?
色恋モノの典型的主人公なドンカンキングで、読んでてイライラさせられるタイプですけど、
そういうキャラなお陰で雪姫が安心して近寄れてる一面もあるってトコを明言してみました。
雪姫先輩のいたずらっこな面を追加するのが楽しいです。
以前レンジマンを薦めた事あったと思うんですが、
芸能人、仮面生活に疲れてる、主人公の前でだけ素になれる……とかの
共通点から雪姫がレンジマンの風香と被って見えたりしたんですよね。
そんなもんだから、こちらの雪姫にも反映させてみたり。
やりすぎて、あとで反省(しかもめそ泣き)がレンジマンヒロインのお約束でしたからね。
計佑にイヂワルするようなのはどんどん入れていきたいんですよね。
先輩は前半の小悪魔っぷりがあってこそ、デレてからの破壊力が凄かったですから!!
という訳で今回は電車の中でのやり取りと、
水着の披露のとこにも小悪魔ぶりを盛ることが出来ました(^^)
前かがみになるというのは、勿論先輩の計算なんで。
最初の頃は、かなり極端に計佑→まくらの気持ちを制限して改変してきましたが、
なんか少しは計佑×まくらも含められるようになってきた気がしてます。
あまりにまくらを蔑ろにしすぎてると、せっかくの計佑の魅力が削がれてしまうかもって思いますしね。
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第8話『初めての名前。初めてのすれ違い』
08話
日が完全に暮れる前に、計佑達は雪姫の実家へと引き上げていた。
道中、まくらの格好がまた勝手にパジャマに戻ったりと相変わらず不可解な現象が起きたりしたが……
もうそんなものかと納得するしかない計佑だった。
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夕食を待っている間も、カリナと茂武市のテンションは海ではしゃいだ時のままだった。
「ご飯たべたら花火でもしない!?」
「おっ! 賛成ーー!!」
そんな会話を他所に計佑は席を立つと、
──えっとトイレは……どこだったっけ?
一度は案内してもらっていたのだが、
屋敷のあまりの広さと、何度かの移動の間によくわからなくなってしまっていた。
──あ、ここだったような気が……
見覚えのあるようなドアを見つけ、
──『ガチャッ』『ガラガラッ』
計佑が開くドアの音に、引き戸が開けられる音が続いた。
<i>「「──え……」」</i>
中に踏み入った計佑と、風呂場から上がろうとした雪姫が見つめ合う──
<b>「きゃーっ」</b>
少女の悲鳴と、パチィンッと何かが叩かれる音が響いた。
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計佑は縁側に座っていた。
──頬に、紅葉を浮かび上がらせて。
そんな少年の頬に、背後からピトっと冷たい瓶が当てられた。
「ごめんね、いきなりたたいて……」
雪姫が計佑にラムネの瓶を渡してきていた。
顔を赤らめながらも計佑が受け取ると、雪姫は計佑の隣に座ってきた。
「この家広いから、わかんなくもなるよね……」
「す……すいません。もうちょっと確認してドア開ければよかったです……」
「……もうなんかあれだね。キミのそれは、一種の才能か何かなのかな……」
ふうっとため息をついてみせる雪姫に、もはや計佑は縮こまるしかない。
「夏はやっぱラムネだよね」
ふとももの間に挟んだラムネの瓶を弄ぶ雪姫。
──湯上りの先輩……何かすげー……色っぽいな……
そんな雪姫をチラチラと見ながら、計佑はまた動悸を激しくし始めるのだった。
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──でもホントに、茂武市くんとかでなくてよかった……
計佑に見られてしまった、あの瞬間。
作品名:白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル 作家名:GOHON