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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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──従姉妹が探してるとか、いくらでも誤魔化す方法はあったのに……っ。

咄嗟に嘘がつけなかった。
あるいはそれは、計佑には素直でありたいという雪姫の深層心理も働いていたのかもしれないけれど……
そんな事は今の雪姫に自覚できるものではなくて。

──笑われちゃった……幻滅……されたのかな……

笑われた瞬間には、かっと身体が熱くなった。
けれどすぐにそんな思いに囚われると、雪姫の気分は沈んでいった。

─────────────────────────────────

──あれ、どうしたんだろう……?

雪姫が、かっと赤くなったと思ったら、急に萎れてしまって。
金額を伝えてきた店員に向き直ると、のろのろとお金を差し出している。

──まさか、俺が笑ったから傷ついた……!?

そうなのだろうかと硝子に目を向けてみたが、硝子は困ったように苦笑して首を振っていた。

──う……やっぱそうなのか……!?

いよいよ焦るが、何と言ったらいいものかわからない。
ただ笑ったことを謝っても、この場合あまり意味はないだろう。
かといって何も言わないのは最悪だと考えて、精算が終わった荷物を持ちながら
「あの、先輩……」と話しかけてみる。
しかし雪姫は袋を一つ持つと、俯いたまま無言で店の外に出ていってしまう。
慌てて追いかけて店を出たところで、雪姫のケータイが鳴った。
雪姫は画面を確認すると「……先に行ってて」と計佑たちから離れて行く。
「あ、お疲れ様です……」
ケータイで話し始める雪姫を見て、硝子が計佑に話しかけてきた。
「仕事の電話とかみたいだね……じゃあ先にゆっくり行っとこうか?」
「そう……だね」
萎れさせてしまった罪悪感で後ろ髪を引かれる思いだったが、
上手い謝罪が思いつかない事もあって、結局二人でゆっくりと堤防沿いの道を帰っていった。

<b>「ギャハハハ!! チョーウケんだろそれ!!」</b>
<b>「っしょー!?」</b>
道中、ガラの悪そうな二人組が堤防に腰掛けて騒いでいた。
硝子のほうが堤防沿いを歩いていたのだが、計佑は無言で硝子と場所を入れ替わった。
そのまま足早に通り過ぎたが、一瞬チラリと計佑が視線をやると、
<b>「だっせー地味ねーちゃんダナァオイ!!」</b>
無精髭を生やした男がそんな罵声を浴びせてきた。

──うわ……ホントにろくでもないヤツだったな……

「……須々野さん大丈夫?」
「えっ!? 大丈夫、気にしてないよ」
慌てたようなその反応に、やはり傷ついているのだろうなとは思うも、それ以上何を言えばいいか分からなかった。
「優しいね……ありがとう、さっきは場所も変わってくれて」
なのに、ちょっと赤い顔で硝子が礼すら言ってくるので慌てて、
「えっ? 別に礼を言われるような事でもないと思うんだけど……」
困惑していたら、硝子は微笑むと
「……目覚くん、なんだか白井先輩と仲いいよね」
「えぇっ!? そっ……そうかな?」
思いがけない言葉に、大いに焦ってしまう。
そんな計佑を見つめる硝子の表情が、一瞬沈んだ。

自分が礼を言った時より、雪姫の話題を出した時のほうが少年の反応が大きい──
そのことに硝子は複雑な心境になったのだが、そんな事をこの少年が気づける筈もなく。

「まくらがさみしがるよ? 目覚くん取られたって」
「はぁ? いや、あいつとはそんなんじゃねーから」
計佑はあっさりと否定したが、そんな態度に硝子はちょっと困った顔をした。
「……まくらさ ああ見えて弱気なトコあるからちゃんと見ててあげないと。
まぁ幼馴染だからあえて言わなくてもわかってるんだろうけど。
まくらはヘンに強がって、思ってる事と違うこと言っちゃったりする時あるから……」
そんな硝子の言葉は、確かに計佑もわかってはいることだった。

──……そうなんだよな……
オレも前はアイツのそんなとこもわかってやれてたハズなんだけど。
でもなんだか最近のアイツはよくわからないトコがある……
霊になってしまったせい……とかなんだろうか?

そんな事を考えている内に、迎えにきていた茂武市とカリナと合流できた。
計佑はしかし、そこで別の疑問が浮かんだ。
「……先輩……遅くないか……?」

─────────────────────────────────

──ピッ……

はあ……と、通話を終えた雪姫はため息をついた。
ただでさえ凹んでいたところだったのに、ダメ押しで水を差されてしまった。

──早くみんなのところに戻ろう。花火して騒げば、また楽しい気分に戻れるよね……

どんな顔をして計佑と顔を合わせたらいいか分からなかったが、
どの道戻らないわけにもいかない。とりあえず気を取り直して、小走りで屋敷へと戻る。
途中、大声で騒ぐ二人に気づいて。
目を合わせないようにしながら速度を上げたが、男達は一人きりの女などという『おいしい獲物』を見逃さなかった。
「はーいちょっと待ったー」「通行料金は5万円でーす」
二人がかりで雪姫の前に立ちふさがってきて。
「なっ……何ですか」
「おっカワイー当たりじゃねコイツ」
無精髭の男が帽子の男にニヤけた顔を向ける。
「よっしゃ今からパコろーぜ」「おいでおいで」
二人がかりで傍に停めてあった車に引っ張ろうとしてくる。
「ちょっと放してっ」
身をよじっても手を離す様子のない男達。本気で恐ろしくなってきて、
<b>「いい加減にしてくださいっ!!」</b>
切羽詰まって、思わず全力で髭男を突き放してしまった。
ヨロリとする髭男。
<i>「……オマエ何つきとばしてくれてんの?」</i>
「……え?」
低くなった男の声に雪姫が振り返る。
<b>「何調子こいてんだこのクソ女ァ!!! 超ォォムカツクわーー!!!! 」</b>

<b>──ガンガンガン!!!!</b>

髭男が、自分たちの車だろうにガスガス蹴りまくる。
その振る舞いがあまりにも怖くて、硬直してしまう。
……もう、逃げることは出来そうになかった。

─────────────────────────────────

まくらは、一人でぼんやりと散策を続けていた。
海から戻る道中、パジャマに服装が戻った後
「しばらく一人で散歩したい」と計佑に告げてからずっとふらふらとしていた。
途中、中学校を見つけてそこの野球部の練習を眺めたりして。
それでもやっぱり、気分は沈んだまま──そんな時だった。
<b>「放してっっ!!」</b>
聞こえてきた悲鳴に、はっと顔を向けるとそこには雪姫と二人の男がいた。
無精髭の男が片手で雪姫の両手を抑えて、反対の手には刃物を持っている。
帽子の男は、ガムテープを手にしていた。
<b>「放し──ム!!」</b>
帽子の男が雪姫の口にガムテープを貼りつけた。
「だからお前チョーシコイテンじゃねーよ……大人しくしてりゃ、ちったぁ優しくしてやっからよ」
髭男が雪姫の顔にナイフを突きつける。
<b>「やっやめろっ!!」</b>
駆けつけたまくらは、転がっていた板切れを掴むと思い切り男へと振り回した。
──が、何の手応えもなかった。
殴った衝撃がないどころか、板切れすらその手になかった。