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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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一向に大人しくなる様子がないと見ると、刃物を取り出し──

──ドス!!

雪姫の顔のすぐそばに突き立てた。少女の身体が、恐怖で完全に硬直する。

「あのなァ。どーせテメーが死ぬことは決まってんだ。だったらせめていい思いしてから死にて〜だろォがァ?」
「…………?」

髭男のいう事が理解できず、震えながら男の顔を見やる雪姫。
男がニヤリとする。

「ヤった後テメーを開放しちまったら、ケーサツに駆け込むことだってありえるだろォが。
だから終わった後にはキッチリてめぇには死んでもらうんだよォ」

今度こそ男の言うことが理解出来てしまい、ますます雪姫の震えは大きくなった。

「テメェをさらう時にだってちゃんと人目はチェックしてたんだからよォ。
どーだよ、オレらは天才だろォがよォ? 」
「そーそー!! オレらってサイキョーのテンサイだよなー!!」

帽子男が合いの手を入れて、二人がひとしきり笑い転げて。
雪姫はもう瞬きすら出来ずに、放心状態のようだった。
そんな雪姫をあざ笑うかのようにニタニタしながら髭男が動いた。

「じゃあそろそろ紳士タイムは終わりにしよォぜ。まずは逆ファッションショーといこォか……」
刃物が、雪姫の服にかかる──

─────────────────────────────────

──うそ、嘘ウソうそこんなのうそっ……!!

もう雪姫の心中には恐怖の悲鳴しかなかった。
訳がわからない。
さっきまで、最高に楽しい旅行を満喫していた筈なのに。
なんで今、貞操も命も失いそうになっているのか──
何でこんな事に。私が何か悪いことをしたの──?
ぐるぐると頭が回る。一体何が悪かったというのか。

この旅行に来てしまったこと? ──違う。最高に楽しい時間だった。これは間違いじゃない。
一人で行動してしまったこと? ──そうだ。それで今、この男達に殺されそうになっている。
じゃあ何で一人で行動なんて? ──決まってる。計佑から逃げてしまいたかったからだ……

コンビニから出る時、計佑が声をかけてくれたのに自分は逃げてしまった。
仕事の電話なんて、口実だった。
レジに並ぶ前までの自分だったら、きっと電話には出ずに電源を切っていた筈だ。
計佑から距離をとるのにちょうど良かったから──そうやって逃げた結果が、今の状況だった。
──本当にバカだった。
後にして思えば、計佑が自分を馬鹿にして笑った訳じゃないのはわかりきった事だった。
自分だって、度々計佑の振る舞いに吹き出していたじゃないか。
それが、あの時はたまたま立場が入れ替わっただけ──そういう風にすぐに気付けていれば。
むしろ彼に近づけたのだと、嬉しい事なのだと分かった筈なのに……

「じゃあそろそろ紳士タイムは──」
男がまた近づいてくる。

──助けて……お父さん!!! お母さん!!!

心で助けを呼んでも、両親がここに来てくれる事なんてありえない。
無理に決まってる。
可能性がまだあるとしたら──

<b>──助けてぇぇ!!! 計佑くん!!!!</b>

<b>ガシャァアアン!!! </b>

体育倉庫のドアが派手な悲鳴をあげた。男たちが弾かれたように振り返る。
そこにいたのは──

──……計佑……くん……!!!

雪姫の絶叫に答えるかのようなタイミングでやってきた少年が、そこに立っていた。

─────────────────────────────────

恐れていた通りの、しかし最高にありがたい情報を持って、屋敷を飛び出そうとした計佑の所に飛んできたまくら。
計佑はまくらの案内通りに自転車を走らせ、ノンストップで校内に乗り入れ、まくらの指示通りに倉庫へとひた走り──

「せっ……先輩……」

はあはあと、熱い息を吐く。
計佑の視界には、男二人と、ガムテープで自由を奪われた雪姫がいて──

「……何だお前……こんなトコに何しにきてんだァ?」
──計佑は完全にキレた。生まれて初めて、殺意というものを覚えた。

<b>「先輩を助けにきたんだよぉおお!!」</b>

立てかけてあったバットをひっつかむ。

<b>「先輩から離れろクソヤロォオオ!!」</b>

そして思い切り振り回した──が、ヒゲ男はあっさりとかわしてしまう。

「ああ……お前このオンナのツレかよ」

ヒョイと間合いを詰められ、手首をつかまれた。

「……!!」
「ヒョロい体してナメてんじゃねーぞォ!!!」

ヒザを腹に叩きこまれた。

「──ゴフッッ!!!」
「調子こいてんじゃねーぞクソがァ!!」
「オラオラァ!!」

膝をついてしまった計佑に、男二人がさらに蹴りを入れてくる。
為す術なく倒れこんでしまうと、男たちはさらに容赦なくケリを入れてきて。
計佑は身を丸めて、ただ耐える事しか出来なかった。
ひとしきり暴行が続いて、ようやく飽きたのか蹴りが止む。

「……ぁ……」

もう、計佑は息を漏らすしか出来なくなっていた。

「何なんコイツ……ホントムカつくわァ。テメーみてぇな王子様ぶってるやつが一番ムカつくわァ〜」
髭男がまた刃物を取り出した。
「嬲んのも飽きたしなァ……もう殺しちまうかコイツ」
「──!!」

金縛りにあっていた雪姫が、その言葉に立ち上がった。

「んんんーッ!!」

髭男のほうに駆け出すも、

「てめーは後だよォッ!!」

敵うわけもなく、弾き飛ばされる。

「じゃあなァ王子様ァアアア!!!」

──ドッ!!
──計佑の左胸に、ナイフが突き立てられた。

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「……え……?」

──突然、女の子の声が聞こえた気がした。
自分の声の筈はない。自分の口はガムテープで塞がれたままだ。
けれど、そんな事はどうでもよかった。
そんな声を意識に留めている意味などなかった。
今、雪姫の意識にあるのは、ナイフを突きこまれてしまった少年の姿だけ──

─────────────────────────────────

「おぉーさすがコーちゃん!! 躊躇ないね〜」
帽子男の賛辞にニタリとしてみせる髭男。
──その右腕に、計佑の手が絡みついた。
髭男がバッと少年に視線を戻す。

<i>「よくも……先輩に……!!」</i>

──ファンファンファン──

帽子男がその音にいち早く反応した。

「!! ヤベェよ、こいつサツ呼んでやがった!!」

帽子男は言いながらさっさと逃げ出す。

「離せコラァ!!」

利き腕を抑え込まれた不自由な体制で、髭男が必死に拳を振るう。
しかし、計佑は男の腕にしっかりとしがみついて離さない。

<b>「放せよオラァァァァァ!!!!」</b>

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──結局、犯人は二人とも警察に捕まった。
警官が計佑の為に救急車を呼ぼうともしてくれたが、結局それは必要なかった。
茂武市とカリナも直にやってきたのだが、
二人を車に乗せてきたのは、雪姫の伯父──医者でもある──だったし、計佑の負傷は急を要するものではないからだった。

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