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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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声をあげる訳にもいかず、計佑とは違う理由で少女が震え続けていた。

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「つっ・・・つきました」
ようやく裏門に雪姫入りのダンボールを下ろし、計佑がぜーぜーと荒い息をついて膝に手をついていた。
箱から、赤い顔をした雪姫がゆっくりと出てくるが、荒い息で俯いている少年は気づかない。
雪姫もまたあさっての方向を向いたまま、礼を口にする。
「助かったわ。……ありがとう」
「全然っ……それじゃっ」
雪姫が、裏門を乗り越えようと手を掛けるが、そこで計佑にちらりと視線を向ける。
計佑はまだ膝に手をついていて、雪姫には計佑の横顔しか見えなかったが……
「……あ。君は……」
「 ? はい……? 」
計佑も、ようやく膝から手を離して雪姫へと目を向けた。

──えっ……このヒトもしかして。ナントカ先輩っ!?

そこで初めて、今朝まくらが騒いでいた、テレビに出ている女性だと気づく。

──うわー……生で見ても、確かにすごいキレイな人だなー。
そっかー・・・隠れてたりしてたのは芸能人だったからなのか。

暫くの間、ぼーっと見とれていた計佑だが、
その間ぼおっとしていたのは雪姫のほうも同じだった。
「あの、……先輩?」
先に我に返った計佑が、話しかけてきておいて黙りこんでしまった少女へと声をかける。
「あっ、ううん……ところでさあ」
すると雪姫は慌てたように目線をそらし、裏門を乗り越えながら続ける。
「キミ……最初に胸さわったの」
「うえっ!?」
ギクリとする。ここまで触れられなかったので、てっきりスルーしてもらえるのかと思い込んでいた。
「……ワザとじゃないの?」
「えぇっ!? そんなっ!! 違います違いますっ」
慌てて両手を振り、必死に否定する。
芸能人に痴漢した男──そんなレッテルを貼られたら、自分の学校生活はオワリだ……!!
恐怖で肝が冷え、熱くなっていた身体が一気に冷めた。
裏門を乗り越えた雪姫がちょいちょいと手招きする。
「こっち来て」
さっきまでとは違う、何やら企んでいるような表情の少女。
逆らえる立場にない少年が、ビクビクしながらも近づく。
雪姫はそんな様子の計佑をニマニマと待ち受けて──
ぐいーーーっっっ!!!
「いたたたた!!!」
耳を思いっきり引っ張られた。
「痛いいたい痛いですっ!!!」
振りほどく訳にもいかず、甘んじて罰を受けるが悲鳴までは抑えられなかった。
「さっきはお尻まで触ってきたよね」
「ええっ!??」
そんな覚えはない。流石に捏造冤罪まで上乗せされる訳にはいかなかった。
「そっそんなっ……!! 知らないです……っ。してないでしょそんなことっ……!!」
「ふーん、とぼけるんだぁ?」
言いながら、反対側の耳まで少女が引っ張ってくる。
「──!!」
雪姫と正面から向かい合う形になった。
すぐに耳への力は緩めてもらえたが、至近距離にある美貌に、息をつく余裕もなく。
「とぼけた振りして、実はスゴイプレイボーイだったりするのかなぁキミは……」
「だから違いますってばっ!!」
顔を逸らそうとするが、両手に耳を押さえられていてそれも許されない。
さらに雪姫がこちらの目を覗きこんでくる。
「んー?? じゃあ何で目を逸らすのカナ?」

──顔が近いからに決まってる!!

そんな悲鳴をあげたくなるが、それも恥ずかしくてできない。
ふと雪姫の左手が計佑の顔から離れ、彼女の顔が横に流れた。
何事かと思う間もなく──

「スケベ」

ささやかれ、そのまま耳に息を吹きかけられた。
完全に固まってしまう少年。
そんな少年に、雪姫はまたニンマリと笑うと、
「ありがとっ、じゃあね!」
たたっと駆け出していく。
「へっ……へ……?」
計佑は、しばらくの間真っ赤な顔のまま、棒立ちを続けていた──。

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──随分うろたえてたなぁあのコ……顔も真っ赤にしちゃって。
初めて会った時は、結構泰然としてる感じだったのに。

少年の事を考えながら、雪姫自身も、自分の振る舞いに驚いていた。

──自分のほうから、男の子に触れたりするなんて……

雪姫は、男性には苦手意識があった。
同年代の少女たちより大きく膨らんでしまった胸をチラチラと見てくる男子生徒にいつも抵抗を感じていたし、
自分の外面だけを見て告白してくる男たちにも、嫌気が差していたからだ。

──なのに、私があんな風に振る舞えるなんて。

あの時の男の子だとわかってからは、
……いや、今にして思えば準備室の一件から、どこかいつもの自分ではなかった気がする。
コンプレックスの胸に触られたりした相手なのに、あんな頼みごとをしてしまうとか。
いつもの自分だったら、
男のコとふたりっきりなんて、かなり緊張する状況の筈なのに随分と自然体でいられた。
彼が「あの時の男の子」だとわかってからは、なんだか更に調子にのってしまった。

──耳元に息をふきかけるとか……!! 絶対やりすぎだったよー///

今になって恥ずかしくなってくる。顔が熱いし、胸がドキドキする。

──でも、向こうもあんなに赤くなっちゃうなんて。

自分としてはちょっとイタズラっぽくしてみただけのつもりだが、
あんなに狼狽えるというのは、もしかして彼には殊更妖艶に見えていたとかなのだろうか?

──まさかね。そんな訳ないか……

雪姫の外見を褒める声は珍しくない。
しかし雪姫としては、それを鵜呑みに出来ている訳ではなく、
コンプレックスからくる不信感があった。
結局のところ、本気で自分の美貌に自信がある訳ではない雪姫にとっては
そんな考えを肯定する事もできず、クスリと苦笑して。
勝手に進められていたオーディションの一件などで抱いていたモヤモヤは、いつのまにか消えていた。
そんな自分の変化には気づかず、雪姫は足取り軽く家へと向かうのだった。

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その日の放課後。
計佑は赤い顔をしてまだ席についていた。
この日の午後は、度々昼休みの一件を思い出しては、モヤモヤとして過ごすハメになったのだった。

──くそっ・・・なにうろたえてんだオレ、いつまでも・・・あんなのちょっとからかわれただけだってのに。

「どした計佑。熱でもあんのか? 顔赤いぞ」
茂武市が話しかけてきたが、
「いや、なんでもねー・・・じゃーな茂武市」
今の顔を人にみられるのが嫌で、茂武市からも顔をそらしながらフラリとたちあがる。
「なんかホントに様子おかしいけど・・・気をつけて帰れよー」
友人の挨拶に片手で答えると、計佑は自転車置き場に向かった。

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──ない!!??
「チャリがないっ」
チェーンで繋いでおいた自転車がなかった。
──えっ、盗まれ・・・あ!?
一瞬パニックになりかかったが、暗証番号を知ってる人間のことを思い出した。
いつもはまとわりついてくることが多い幼馴染。
今日はなぜか昼からさっぱり姿を見せていなかったが……