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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「アイツにきまってるーっ、なんのつもりだバカやろう!!」
すぐにまくらのケータイに電話をかける。つながった瞬間、
「おいてめ──」
プツッ。切られた。
ギリリと歯を噛みしめ、もう一度かける。
かえってきた反応は
『──おかけになった番号は電波の届かない場所にいるか、電源が入っていない──』
定番のアナウンスだった。
「っっのヤローーっっ!!」
まくらのチャリの存在を思い出すも、まくらの自転車はチェーンではなく鍵タイプだ。
そして当然計佑はその鍵をもっていない。

昼休み、先輩にからかわれてから悶々とくすぶり続けていた感情が、この追い打ちで完全に怒りとして爆発した。
──まくらァァァァ!!!
走りだす。走り続ける。走り続けて──

─────────────────────────────────

「まくらーっ、……テメ何勝手にっ・・・ヒトのチャリ・・・っ……乗っ取ってんだバカヤローっ・・・」
一時間以上走り続けてようやく家についた計佑が、居間へと倒れこんでいた。
ゼヒーゼヒーしながらも、どうにか悪態をつく少年に、
「……お前が悪い」
ソファに寝転んだままのまくらが、頭だけつきだしてぼそりと答えた。
「なっ・・・何ふざけたこといってんだテメーっ!!」
まさかの言い草に怒り再燃、立ち上がり、ソファの前にまわりこむ。
「ひゃっ、まっ待って!!」
まくらが裏返った声をあげた。
「……なっ!!」
まくらは仰向けで寝転んでいた。いや、問題は姿勢ではなくて──
「いやあっ!!」
仰向けの姿勢だったまくらが身を翻してうつぶせになる。

──バッ・・・バスタオル・・・

正確には、バスタオル一枚を身体にまきつけただけのまくらがそこにいた。
今はクッションに完全に顔を埋めてしまっている。
肩甲骨から上の全部が素肌。
顔を覆うように折りたたまれた腕、それに押された乳が脇から僅かに覗く。
お尻はギリギリ隠れているくらいで、計佑が一歩下がればその中が見えてしまいそうなくらいだ。

──なっ・・・なっ・・・!!

固まってしまっていた計佑だが、股間まで固くなるのを意識した瞬間、
はっとして慌てて後ろを向く。

──まっまくら相手になんだよこれ・・・今日はなんかおかしいぞ俺っ。
くそっ、あの先輩と会ってからこっちどうなって・・・

「けーすけ……」
「なっなんだよっ」
呼ばれて顔だけ振り向くと、いつのまにかまくらが立ち上がっていた。
・・・自分の両肩を抱くような姿勢で。
「ねえ・・・計佑はさ・・・みっ・・・見たいとおもう?」
「なっ・・・何をだよ? 主語がなきゃ意味わかんねーだろうが」
「……言わせないでよ。 わかってるクセに」
まくらが、スルっと肩を抱いていた手を下ろし、胸元が覗く。
「わっ・・・わかんねーーーよっ!! 何もわかんねーからとにかくやめろっ、なんでもいいから服きろっはやく!!!!」
計佑の声が裏返る。
「服着ろ? わかんないとか言っといて・・・やっぱりわかってるじゃんそれ・・・」
ずいっと近づいてきたまくらが、前かがみの計佑を上から見下ろす。
目を細めたその表情は、長年一緒にいたはずの計佑が見たこともないものだった。
計佑の顔にまくらの両手がそえられる。
「ひゃめ・・・」
もうろれつもまわらない。
──そして次の瞬間、まくらの表情がくずれた。
「完全にひっかかってる・・・」

──え!?

頭が真っ白になる。
くるりと身を翻すまくらが、バスタオルの中から肩紐を引っ張りあげ、また半回転。そしてバサっとバスタオルを脱ぎ捨てる。
「アタシっ、完っ全勝利っ!!!」
そこには、キャミソールとホットパンツを身につけたまくらがいた。

茫然自失の少年、
そんな計佑を尻目に、まくらは満面の笑みでソファに飛び込むと、ゲラゲラと笑い始めた。
「ひーっひっひっ、今の顔ってば最高ぉー! アハハハ!! マジうけるー!!!」
ひたすら笑い転げてみせる幼馴染。
「……おまえ……」
ようやく思考回路がもどってきた少年が低い声で呟いた。
「あーっはははっ・・・なにー?」
「ふざけんなっっ!!! 」
まくらとのふざけ合いもケンカも日常茶飯事だった。
しかし、まくらに本気で腹を立てたのは随分久しりだった。

──こんなマネされて笑える訳ねーだろうがっ!!!

計佑とて多感な思春期の少年だ。
その性欲をこんな風におちょくられては、とても平静でいられる筈もなかった。
ギリっとまくらを睨みつけると、それ以上は言葉もなく立ち去ろうとする。
「けっ計佑、ごめん・・・!」
まくらが、本気の響きの謝罪をしてくるが──無視した。
いつもの遊びゲンカのようにさらりと許せる気は、まるでしなかった。

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「あーしまった・・・寝過ぎちまったか・・・」
部屋へ戻った計佑だが、怒りが収まらず、この日はいつもの天体観測も身が入らなかった。
ちょっと気分転換でもするかと横になり──目が覚めた今は、もう12時を過ぎていた。
──バタンっ!!
そこに由希子が飛び込んでくると、荒い声を上げた。
「計佑っ、あんたくーちゃんのことしらないっ?」
「・・・はぁ? まくらだって・・・? 」
夕方の一件を思い出して顔をしかめてみせたが、
「くーちゃんがまだ家に戻ってないのよっ、あんたちょっと捜して来て!!」
「・・・どーせコンビニとかってオチでしょ・・・」
「くーちゃんがこんな時間に起きてるわけないでしょーがっ!
アタシは連絡待ちで家にいるから、ほらっ早く!!」
「・・・ええー・・・」
まだどこか寝ぼけていた計佑だが、
「ぐずぐずせんとさっさといってこいっ」
ゴス!!
強烈なヒジとともに叩きだされてしまった。
「つおー・・・だからなんでいつもヒジなんだよ・・・せめてゲンコツに」
ぶつぶつと恨み言が口をつくが、痛みで意識ははっきりしてきた。
「捜せといってもなー・・・俺も心当たりなんてねーのにどこ捜せと・・・」

──あーもーっ!! 夕方のコトといい、一体なんのつもりなんだあいつは〜っ!!

ギリギリとまた怒りがこみあげてきたが、
頭の痛みがおさまってくると、危機感が芽生え始めてきた。

──確かに、10時過ぎには寝ついて朝まで起きないハズのアイツがこんな時間に家にいないなんて初めてじゃないのか・・・?

「・・・・しゃーねーなーもうっ」
チャリを漕ぎ出すと、いつしか全速力で走り出していた。
行きつけのコンビニをまわり、ファミレスへ行き、学校まで走り、
母親に確認の電話をして、今度はゆっくりと周りを見回しながら走り、
家まで戻り、わかってはいても母に直接確認したり……
気がつけば深夜2時を過ぎていた。

──あーもーホントわかんねーぞ・・・マジでどうしたんだよアイツ。他に心当たり・・・うーん・・・

最近の行動範囲は全部まわったハズだ。だったらもう・・・

──昔行ったような場所まわってみるしかないか・・・

─────────────────────────────────

──流石にないとは思うんだがなぁ・・・こんなとこ・・・

木々やぼうぼうの雑草の中を、クモの巣を払いながら進んでいく。