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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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ついに見られる手がかりに、慌てて飛びついた。開いてみると、一ページ目から美月芳夏の写真があった。

──確かにあの人だ……!!

パラパラと、どんどんめくっていく。
どうやらこのアルバム全部が、美月芳夏の写真を収められたもののようだった。

「ひいおじいちゃんの患者さんだったんだって」
「ひいおじいちゃん……?」

──という事は、あのじいさんも直接知ってるわけじゃないのか……?

なんだかまた手がかりが遠のいた気がして、ちょっと気分が沈んだ。

「さっきおばあちゃんに聞いてみたんだけど、それ以上詳しくは知らないって言うし」

とはいえ、計佑も諦めきれない。やはり直接おばあさんにも話を聞いてみたい。
そう雪姫にも頼もうとしたところで、

「……その写真」

雪姫が一枚の写真を指さした。

「え? ……この写真がどうかしました?」
「なんかこの写真の建物……見覚えがあるんだよね」

その一枚の中の、美月芳夏が立つ後ろの、建物を指して雪姫が言う。

「ひいおじいちゃんが昔やってたっていう病院の療養所じゃないかな……」

雪姫がぽつぽつと説明を続ける。

──ここから少しボートで行ったところの小島にある。
──子供の頃、祖父に連れていってもらったことがある。
──その頃にはもう使われてなかった事。
──資料とかがまだ残っているらしく、祖父はそれが目当てだったらしい。

そんな話を聞かされて、俄然興味が湧いてきた。

──この人がいたっていう療養所……そこに資料が残ったままだというならもしかして……!!

「……やっぱり大分気になってるみたいだね。行ってみる?」
「はい!!」

雪姫の言葉は、まさに望むところだった。

─────────────────────────────────

まくらが、砂浜に座り込んでいた。
体育座りをして、左手の小指を見つめている。その表情は、いつになく暗かった。

「まくらーっ!!」

そこに、コンビニ袋を携えた計佑がやってきた。

「……計佑」
「やっと見つけたーっ、せっかくいいニュースがあるってのにお前どこいってたんだよ!!
おらっ、メシも持ってきてやったぞ!! ……っても……食えるのか?
モノ触れなくなったとか、昨夜言ってたよな」
「……だいじょぶ。ありがと……」

そう答えて、まくらがおにぎりを受け取る。

「お? なんだよ、またモノ持てるようになってんじゃん」
「うん……昨夜のうちにまたそうなった」
「はー……ホントいい加減だよなぁ。服が勝手に変わったりなんだりとさー」

まくらが俯いた。

「ケガ……大丈夫?」
「あ? このホータイか? こんなん大げさに巻いてあるだけだよ。大したことないって」
「……ごめんね」
「……は? なにが?」
「白井先輩が攫われた時。 私がモノ動かせる状態だったなら、先輩を助けられたのに……」
「……まあ、確かにポルターガイストが起きてたら、連中も泡くって逃げ出してたかもしんねーけどな」

へっと笑ってみせる計佑。

「…………」

それでもまくらは俯いたまま、無言だった。

「……どうした?」

真面目な声で尋ねると、まくらが唇を噛み締めて──くるりと後ろを向く。

「……ゆうべ」
「……うん?」
「私、何もできなかった……白井先輩が攫われた時も……計佑があいつらに殴られてる間も……刺された時も!!」

まくらの肩が震えていた。

──あー……なんだよコイツ、そんなん気にしてたのか……

こそばゆくなる。まくらも、昨夜は随分と心配してくれていたのだろう。
刺された瞬間は、傍目には殺されたように見えたかもしれないし。
そうして今は、自分を責めてしまってる訳だ。

──全く。元気と笑顔しか取り柄のねーガキんちょのクセして、余計なコト考えてんじゃねーぞ。

まくらの頭に、ポンと手を置いて。

「……めちゃめちゃ活躍してくれたじゃないか、お前。
先輩の状況を教えてくれて、道案内までしてくれて。お前がいなかったら絶対に間に合わなかった。
──ありがとな、まくら」

心配してくれた事に感謝して。
大きな仕事をやり遂げたことを褒める為に。
責任なんて何もないのに、自分を責めて苦しんでる妹分を慰めたくて。
──頭においた手で、わしゃわしゃと髪をかき混ぜてやる。

「……バカっ……それやめてって、いつも言ってるじゃないっ」

そう言いながらも、まくらは跳ね除けようとはしなかった。
じっとしたまま受け入れて──やがて腕を持ち上げると、目元をゴシゴシこすり始めた。
それからバッと計佑の腕から逃れると、振り返って、にぱっと笑ってみせてきた──まだ赤い目をしていたけれど。

「あーっもーお腹すいたっ!! 結局昨夜から何も食べてないんだよー?
ご飯持ってくるの遅すぎなんだよ計佑はっ」

いつも通りの悪態をついてくるまくらにほっとしながらも、計佑もニヤリと笑ってみせた。

「フフ……いっそずっとメシ抜きにしてみたらどうだ?
今みたいにメシ喰ってばっかいると、身体に戻った時に食った分太っちまうんじゃないのかぁ?」

まくらがギクリとする。
いっちょ前に体重なんぞ気にしやがって──そんな意志を込めて、まくらをニヤニヤと見つめてやる。

「……がーーっ!! いっぺんホントに締めちゃるっ!! ちょっとこっち来い計佑っ」

言いながら、まくらが文字通り空から飛びかかってくる。

「来いって言いながらてめーから来てるじゃねーかよっ」

ひらりとかわして、またまくらの頭を押さえつける。
まくらが腕を振り回してきて、またそれをやりすごす。
あばらや身体のあちこちが痛んだけど、苦しい顔は見せずに笑顔を保ったまま──
計佑はひとしきり、まくらとはしゃぐのだった。

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<11話のあとがき>

原作では、海辺でのまくらに対して「守りたい……」と考えてしまっていた計佑ですが。
こちらの話では、弱音を吐いた先輩に対して付け替えてみました。

添い寝発見の役は硝子にしてみたり。
そのほうが硝子も強く心配してた感が出るかなぁと。
硝子も、雪姫やまくらと同じくらい心配してたハズですしね。

原作のこの回の硝子が、僕にはどーにも怖く思えてるんですよね……。
あーんで食事する計佑達に、難しい顔してるアレです。
特に恐い顔をしてる訳ではないのですが、
無言のフキダシと、口元が本で隠されてるせいでなんかこ〜……うん(-_-;)
原作24話でも、ヘタれた計佑を厳しく叱る硝子なんですが、
あれと合わせて、僕の中じゃーこのコは、ヤンデレとまではいかなくても、かなり恐いコとして認識されちゃってます。
というわけで、今回その辺の片鱗を書いてみたり。

後半の、まくらとの会話は随分と改変してみました。
まくらとの会話でも、
『計佑はやっぱりいいヤツ』であるように書いてあげたいから、
その辺は心がけてみたつもりなんですが……なんかこー、まくらとの話書いてるときのほうが
雪姫相手の時よりも、計佑いいヤツに書けてるような気がしてます。