二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

INDEX|33ページ/169ページ|

次のページ前のページ
 

どこか沈んだ気分になって屋内に入ろうとした計佑に、

「チャンスあったら、手くらいつなぎなよ」

まくらがまたそんなアドバイスを寄越してくるが、

「だから別に……」

そう返事をした瞬間。

<b>「キャーーーーーーッ!!」</b>

雪姫の悲鳴が奥から聞こえてきて。見ると、雪姫がダッシュで戻ってくるところだった。

<b>「なんでついて来てないのぉっ!? 」</b>

そして、そのままの勢いで計佑に抱きついてくる。
──ドキィッ!!
雪姫の豊かな胸が、自分のそれに押し付けられた。
あばらに痛みが走ったが、雪姫の胸のボリュームと柔らかさを感じて、なんだか痛み以外のモノも走った気がした。

「私ひとりでどんどん先行かせて!! バカァ!!」

雪姫が震える身体で、計佑の首にかけた腕の力をますます強くしてきた。
お陰であばらの痛みは一層強くなるのに、頭に上る血はなんだか心地よい感じもして──
陶然としそうになったところで、まくらの視線に気付いた。
まくらが、ぽっかーんとした顔で見つめてきていた。

『あんな情けない顔初めて見たよ……なんか気持ち悪い』

昨日のまくらのセリフを思い出し、それで正気に戻れた。
「せっ先輩っ……わかりましたっごめんなさい!! だからその……もう離れて……」

雪姫の背中をポンポンと叩くと、漸く力を緩めてくれて──
しかし完全に離れることはなく、今度は計佑の腕を抱き込んできた。
胸が押しつけられる場所が変わっただけで、これでは完全には落ち着けない。

「せっ先輩、だからあのっ──」
「中の作りが複雑そうなのっ!! 迷子になっちゃうからっ、ほらっちゃんとついて来てね!!」

計佑の困惑などお構いなしに、雪姫はぐいぐい引っ張ってくる。
チラリとまくらを振り返ると、相変わらずまくらは固まっていて。
なんだか後ろめたくなったが、結局計佑は雪姫に逆らわず探索を始めるのだった。

─────────────────────────────────

屋敷の中は、かなり暗い場所が多かった。懐中電灯を片手に、歩を進めていく。
比較的明るい場所でも、雪姫は震えながら計佑の腕にしがみついたままだったりした。
その状態にはどうにも落ち着けないし、怯える姿が不憫なので雪姫へと提案してみる。

「あの、先輩……恐いんでしたら、外で待っててもらっても──」
「外に一人だって怖いじゃない!!」

くわっと雪姫が噛み付いてきて。
計佑が驚きに目を見開いていると、雪姫がはっと我にかえったのか、コホンと空咳をついた。

「……まあ恐いっていうのは、人気のないところに一人きりでいるのが不安とか、そういうコトだけどね?
別にオバケがどうのとか、そういうワケじゃないんだからね?」

──語るに落ちたその姿に、つい計佑は吹き出してしまった。

─────────────────────────────────

「ああっ!! 何笑ってるの!?」

雪姫は、思わず計佑の脇腹をつまみ上げてしまった。

「たたっ……いやすいません先輩。でもその言い訳は……」

計佑が苦笑しながらも言ってくる。
わかっている。
自分でも、こんなバレバレのウソ、かえってみっともないんじゃあ──そうも思うけれど。
それでも、オバケが怖いなんて情けないトコロは見せたくなかった。
彼に対しては素直に、正直でありたいと思っているけれど、これはまた話が違う──そんな乙女心だった。
けれど。

「……ごめんなさい、つねったりして」

自分の恥ずかしさ、みっともなさを誤魔化すために、よりにもよって計佑に当たってしまうなんて。
どこまでも計佑に甘えきってしまっている自分が、また恥ずかしくなった。
昨日もそうやって、あんなとんでもないことになってしまったのに、これじゃあまるで反省できていない。

「…………」
「別に、そんなに恥ずかしがるコトないと思いますよ」

落ち込みかけたところに、さらりと声をかけられた。

「女のコらしくていいじゃないですか。
完璧超人の先輩より、こういう人間味みせてもらえたほうが、オレは嬉しいです」

そう言って、計佑が笑いかけてくる。
きっと彼は今、フォローしようとか口説こうとかそんな考えは一切なく言っている──
それがわかるような、自然な笑顔だった。

──ホントに……そんなつもりはないクセに、こういう時は絶対見逃さないんだもんなぁ……ずるすぎるよ。

「……私ばっかり」

──どんどん好きにさせられて。

─────────────────────────────────

「私ばっかり……」

雪姫のその言葉には続きがなかった。
計佑にはその後が全然想像できなかったけれど、
それでも赤い顔をした雪姫が、安心したように頭を肩に預けてきてくれたから、とりあえずは安心した。
昨日は、笑った後何も言えずにいる内に雪姫を傷つけてしまったから、今日はとにかく言葉を発してみた。
だから考え抜いてとかではなく、本音のままに喋っただけの内容だったけれど。

──手が届かない高みにいられるより、少しでも自分に近しいところをみせてもらえるのが、
どうしてそんなに嬉しいのか──そういう事には、考えが回らない少年だった。

─────────────────────────────────

ひと通り中を見て回って。
カルテなどが残っていそうなのは一部屋だけだとわかり、今、計佑たちは改めてその部屋を調べようとしていた。

「確かに……結構色々残ったままですね。けど……だいぶ老朽化が進んでる感じ。これ、床がぬけないかな……?」

ギシギシと足踏みしてみせる計佑。

「えー? そこまでボロじゃないでしょう?

雪姫は軽やかに中に踏み入っていく。この部屋は西向きということもあって結構明るい。
それもあってか、雪姫の恐怖心は大分薄れているようだ。

「ねえ計佑くん……?」

窓際まで歩いていった雪姫が、振り返らないまま尋ねてきた。

「私……結局聞いてないんだけど。どうしてあの写真の人のコト、そんなに必死に調べてるの……?」
「えっ……」

そういえば、結局未だに説明していなかった。
雪姫になら、口止めをお願いしておけば話していいかと考えていたのに。

「そうですね……先輩には話しておこうとは思ってたんです。
でも、秘密にはしておいてくださいね? 特に、須々野さんや茂武市には……」
「……うん」

雪姫がゆっくり振り返ってきた。

「……俺の幼馴染が、終業式の直前に突然眠り込んじゃって……起きなくなっちゃったんです」
「…………」
「じきに起きるだろうって先生は言ってくれたけど……でもいつ起きるかはっきりとは分からないし。
皆に心配かけるのも避けたかったから、茂武市や須々野さんにもまだ話してません。
騒ぎにもしたくないから、先輩にも黙っていてほしいって話なんです」
「……そうなんだ。それで……いてもたってもいられなくて、色々調べようとしてるってこと?」
「……はい」

計佑の返事に雪姫は一瞬ためらったが、また質問を続けてきた。