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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「……厳しい言い方になるけど……カルテとか見つけたとして、素人の計佑くんに何かわかるのかな……?
お医者さん以上のコトが……」

計佑がぐっと言葉に詰まる。調べたい事の一つに、
『自分と同じように生き霊状態を認識できた人がいたか』
という事があるのだが、そこまでは流石に話せない。
黙りこんでしまった計佑を見て勘違いしたのか、慌てて雪姫が謝ってきた。

「ごっごめんね!? 大事な人が大変なコトになったら、じっとしてられないのは当たり前だよね。
特に計佑くんみたいな優しい人なら尚更だもんね!! ……変なコト言って、ごめんなさい」
「……いえ、俺の勝手な都合に先輩は色々と協力してくれてるんですからそんな……謝るのはこっちの方です」

微妙な空気になってしまい、お互いに黙りこんでしまう。

──なにやってんだ俺……先輩巻き込んでおいて、こんな風に気まで使わせちゃってっ……

計佑は頭を振ると、ことさら明るい声を出してみせた。

「まあその、ホント心配いらないとは思うんですけどね!! オレの前じゃ全然元気にしてますから!!」
「……オレの前じゃ元気……???」

雪姫が不思議そうな顔をする。
はっとした。空気を変えようと、何も考えずに発言してしまった。
まくらが「バカっ何いってんの計佑っ」と肩を叩いてくる。

「ああっいやそのっ、眠り続けてるっいっても昏睡状態とかじゃなくて、グーグー寝てるだけなんですよ!!
寝相わるいわ、寝言も言うわでホント!!
先輩のおじいさんっていう先生も『大丈夫』って保証してくれたし、ホント今スグにでも起きそうなくらいですから」

その言葉に、雪姫も安心したように笑ってくれた。

「そっか……よかった。おじいちゃんがそう言うくらいなら安心だね」
「え……そうなんですか?」

軽かったり、うっかりしてそうだったりの老医師。
内心あまり信頼出来ていなかったのだが、思わず顔にも出してしまったようだ。
雪姫は苦笑すると、

「……ああ見えておじいちゃん、ほんとお医者さんとしてはすごいんだよ。
おじいちゃんが保証して治らなかった人なんていないんだから」

そう言ってくれた。

「へえ……そうなんだ。じゃあ、そんなに焦る事もなかったのかな……」

まくらと顔を見合わせる。まくらはちょっと拍子抜けした様子の顔をしていた。

──オレも多分そんな顔をしてるんだろうな……

そんな事を考えていると、雪姫がどこか遠慮がちに、また尋ねてきた。

「ところで計佑くん……その幼馴染の人って。
硝子ちゃんや茂武市くんに秘密ってコトは……計佑くん達の同級生ってコトだよね……?」
「え? あ、はいそうですけど……?」

何を聞きたいのかわからずに、こちらも疑問形で返事をしてしまう。
雪姫はまたちょっと迷う様子を見せたが、それでも結局尋ねてきた。

「そのヒトって……女の子……かな?」
「はい、そうですけど」
「……っ!」

計佑の答えに、雪姫が息を呑む。

「…………?」

計佑にはその反応の理由がわからず、ただ雪姫を見つめた。
雪姫もまた、無言のまま計佑の目を見つめてきていたが、やがて意を決したのか口を開いた。

「もしかして……計佑くんの……その。好きなヒト……とか……?」
「ええ!?」

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訊くのは怖かったけれど……それでも、訊かずにはいられなかった。
違うと思いたい……その筈だ……もしそんな人がいるなら、
この誠実な少年だったら昨夜の内にそう答えてくれていた筈だから。
そう理性では判断できていても、やはり恐怖で胸が張り裂けそうだった。

──お願い、違うと言って──!!

計佑が視線を逸らしてどこかを見つめた──いよいよ不安が爆発しそうになった瞬間、

「あはははは!! もー先輩まで。そんなワケないじゃないですかっ!!」

計佑が笑い飛ばしてきた。
直前に何を見ていたのか、多少疑問はあったけれど、それは今の雪姫には大した問題ではなかった。

「でっ……でも? 幼馴染さんってことは付き合いも長いんだよね?
今もその人のために奔走してるくらいだし、よっぽど大事な人かな……って」

そんな風に尋ねると、少年はうっと言葉に詰まって、またさっきと同じあたりを見やる。
そうしてガリガリと頭を掻いてから、こちらに目線を戻してきた。

「それは……ですね。幼馴染っていうか……もう殆ど家族同然の、妹みたいなもんなんですよ。
親が忙しい人なもんだから、子供の頃から、殆どをウチで過ごしてきてて」
「……そうなんだ……」
「まあ……やかましくて鬱陶しいやつで、いっつもケンカばっかなんですけどね。
それでも、オレはもう家族みたいなもんって思ってるし。
……自分に出来るコトくらいはやってやるかって、そんだけの事ですよ」

最後の方は随分恥ずかしそうにしていたけれど、それでも誠実な彼らしく、ちゃんと答えてくれた。
そしてその答えは、雪姫を安心させた──筈なのだけれど。
チラチラとどこかを気にしながら話す計佑の姿に、何かザワつくものが残った。
目を逸らすのとは違う──何かを気にしていて、ちゃんと自分を見て話してくれない姿に……不安が湧いた。

「……ちょっと人差し指かしてっ」

言いながら、計佑の目の前まで歩み寄る。

「えっ?」
「いいからっ」

戸惑う計佑の右手を、自分の左手でとって──

「……テレパシー」

計佑の右人差し指に、自分の右人差し指をちょんっと当てた。

「はぁっ!? なっなんですかそれっ……?」

計佑が赤い顔をして慌てる。
少年が自分だけを見てくれるのを感じて、ようやく雪姫の心は落ち着いてきた。
──そのかわり、恥ずかしさが湧いてきたけれど。

「……なんだか計佑くん、何か隠してるような気がして。これでキミの心、分かればいいのになぁ……って思ったのっ」

そんなのは、殆どでっち上げで。本当の理由は、計佑の気を引きたいからだった。
恥ずかしい真似だろうと、何だか今、じっとしていられなかったのだ。

──恥ずかしさで少年の顔を真っ直ぐ見れなくて、
雪姫は先のセリフの最中に、計佑が顔を硬直させたのには気付かなかった。

「なんて、今のちょっと恥ずかしかったかなっ」

自分でツッコんで、空気を誤魔化してみる雪姫だった。

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「──ちょっと恥ずかしかったかなっ?」
「いやっそんなっ、全然っ──」

"可愛かったです" と続けそうになって、慌てて計佑は口を閉じた。

──またオレはっ……もうちょっと考えてから喋れっての!!

雪姫の方もまだテレテレとしていて、そんなまごついた計佑に気づく余裕はなかったようだ。

「よしっ! じゃあ……あの女の人の痕跡を、手当たり次第探そーっ!!」
「はいっ、よろしくお願いします!!」

照れ隠しにか手を突き上げてみせる雪姫に、やはり大袈裟に返事をしてみせる計佑だった。

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