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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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「──おい、お前は探さなくていいからさ……」

手持ち無沙汰なのか、雪姫の目を盗んでは資料を捲ったりしているまくらに注意する。
何かの拍子に雪姫に見つかったら面倒だ。
暇なのもわかるが、やはりここはじっとしておいてもらわなければ。

「えーでも……私のための調べ物なんだよ? 何もせずにじっとはしてられないよぉ……」

まくらが食い下がってくる。

「うーん……じゃあこうしよう。ひと通り見て回ったけれど、何か見落としがあるかもしれない。
お前はココ以外を、もう一度探してみてくれないか?」
「……えー……?」

妥当な提案だと思ったのだが、まくらは何やら不服そうだ。

「……何だよ? 自分も何かしたいって言い出したクセに、何が不満なんだよ」
「…………」

まくらがふわりと地面に降り立つと、じっと見上げてくる。

「……おい、言いたい事があるんならはっきり──」
「──そんなに、先輩と二人っきりになりたいの?」
「ぶはっ!? 」

思わぬ内容に吹いてしまった。

「えっなに!? どうかしたの計佑くんっ!!」
「あっいえ!! ちょっと大きな埃がふってきてびっくりしただけです。すいません」

心配して駆け寄ってくれそうだった雪姫を押しとどめる。

「……お前な……」

睨みつけてやるが、まくらは相変わらず不満気に見上げてくるだけだ。

「何度も言うけど、そんなんじゃないっての……
別に恩着せがませるワケじゃないけど、こんなコトしてるのは誰のためだと思ってんだよ?」

それでもまだ、少しの間まくらは黙っていたが、突然にぱっと笑顔になると

「ごめん。一人になるのがちょっと怖かったからつい、ねっ」

そう言って、おどけてくる。

「バカいってんじゃねーぞ。お前オバケとか平気だったろーが」

軽く頭を小突こうとすると「じゃー先輩と上手くやりなよー」などと言いつつ、まくらは笑いながら飛び去っていった。

──やっぱり……なんかちょっとおかしいなアイツ……?

改めて、最近のまくらの様子を不審に思う。

──先輩は大丈夫って言ってくれたけど、早いとこ戻してやるに越したことはないんだ。
何か出来る可能性があるウチは、俺も頑張んないとな。

計佑は改めて、資料漁りに精を出すのだった。

─────────────────────────────────

「計佑計佑!! 聞いて聞いてっ」

あれからしばらく経って。
資料をあちこちひっくり返していた計佑のところに、まくらが飛んで戻ってきた。

「なんだ? 何か見つかったのか?」
「いやそれがっ!! 床に扉みたいなものがある部屋見つけたのっ」
「え? 床に扉? それは収納とかそういうのじゃないのか?」
「うんまあ、その可能性も確かにあるんだけど。問題はそのコトじゃなくてね……」

そこでまくらが、ゴクリと息を呑んでみせる。

「スキマに……ギッシリ詰まってたんだよ……」
「……何が詰まってたんだよ……」

まくらの深刻そうな顔に、計佑も緊張してしまう。

<b>「オ札ダヨォ!!」</b>
<b>「おっ御札ァ!?」</b>

突然の大声に、計佑も思わず大声で返してしまった。

「……なーんてねー、お札かと思ったらただの新聞紙だったんだけどー」

ケラケラと笑うまくらに、

「……てめっ──」

ゲンコツを振るおうとした計佑だが、ギシギシと激しく床がきしむ音が聞こえて、拳を止めた。
その音の方へと振り向くと、

<i>「お札ってなにっ!? 呪いのお札とかそういうやつっ!!?」</i>

もう泣きだしている雪姫が、全力でこちらに駆けてきていた。

「せっ先輩落ち着いて! ここ足場悪いですからっ」

振り返りまくらを睨むが、まくらはまくらで、
『お前が大声出すから悪い!!』みたいな目でこちらを見ている。
"おま、ふざけんなよっ" という怒りが湧くが、今は先輩を落ち着かせないと──そう考え、顔を前に戻す。
けれど、もう随分と雪姫は肉薄していた。
──本当に、目前まで。

─────────────────────────────────

計佑の「御札ァ!?」という叫びを聞いてから──
もう雪姫の頭の中には、計佑の元に駆けつける事しかなかった。
それなりに明るい部屋ということや、計佑とのやり取りを経て最初よりは随分と恐怖が和らいでいたとはいえ、
霊の存在などを思い出してしまっては、平然となどしていられなかった。
計佑が何か言ってきているがそれも耳に入らず、少年の胸に飛び込もうとして──足が滑った。
幸い、もう計佑の胸に飛び込む最後の一歩を踏み切るところだったから、目的自体は無事果たせた。
でも──勢いがつきすぎてしまった。
微妙に横へとずらす筈だった顔も、殆ど修正できずに──真正面から計佑に飛び込んでしまった。
咄嗟に少年が肩を支えてくれたから、ゴツンと派手な衝突にはならずにすんだのだけれど──

ちゅっ──

自分の口唇と、少年のそれが重なるのまでは避けられなかった。

──……!!?!!??!!

しばしの硬直の後、バッと慌てて離れる。
計佑が真っ赤になっていた──けれどもしかしたら、自分はそれ以上に赤くなっている気もした。

<i>「ごっ……ごめんなさいっっ」</i>

声が上ずった。

「つっ……つまづいちゃって……どうしようっ!? 本当にごめんなさいっ」
「あ……はは、は……」

計佑はこわばった顔で笑っている。

──ああ〜〜っ!! 何しちゃってるの私〜〜!!

穴があったり入りたいとは正にこの事だった。真っ直ぐ計佑を見れない。なんだか目がぐるぐるもしてきた。

「じっ……事故だからっ!? わざとじゃないからねっ!? 」
「はは……はい……」

必死で言い訳を重ねると、カクカクと計佑が頷いてくる。

──本当に事故なのーーっっ!!!

本当に事故で、わざとじゃなくて、事故なのだ。だって──

──こんなコトなら、今朝ガマンなんかするんじゃなかった!!!

計佑の同意を得られないのは同じでも、
事故で失うファーストキスと、自由意志で捧げるファーストキスでは全然違う。
相手には何の不満もないし、むしろ計佑以外にありえない初めてだったけれど。
それでも乙女としては、こんなファーストキスなんて認められない。認められる訳がない。

「忘れてっ!! こんなの事故だもん!! ノーカウントだからねっ!?」

必死に言葉を重ねていたら、ようやく少年は落ち着いてきたようだった。

「はっはい……大丈夫です、わかってますから」

赤い顔ながらも、計佑は苦笑を浮かべてくれた。けれど──

「……ていうか……すいません。 ちゃんとオレが支えてあげればよかったのに……」

なんだか落ち込み始めて、こちらへ謝ってまできた。

──……あっ!? まさか、私に悪いコトしたとでも思ってる!?

この少年なら大いにありえそうだ。
けれど、そんな誤解をされても困る。
……というか、ワザとじゃないかと誤解されるよりも、ずっとずっと困る。