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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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なので当然、二人の少女の大袈裟なリアクションの意味がわからない。
 雪姫は赤い顔をして唇をむにゅむにゅしていて──昨夜もしばらくそんな顔をしていたような──
まくらのほうは、はっきりと頬を膨らまている。

──……なんなんだ一体……

 それでもやっぱり気付かない、ある意味幸せな少年だった。

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 結局、雪姫が怖がるので計佑も部屋を移らずに着替えを済ませた。
 ちなみに、雪姫も計佑の着替えを覗いたりはしなかった。
見たい欲求より、万が一計佑に気付かれたらどう思われるか──そんな不安が上回っての事だった。

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 パジャマを褒めた後、雪姫の機嫌は直ったようだった。
覗いたりしなかったというのはわかってくれていたようだし、それで計佑も安心した。
 まくらはふくれっ面をしていたが、それは珍しくもない事なのであまり気にせず、
雪姫と二人でボロ畳の上に座り込んで、壁に寄りかかりながら会話に興じるのだった。

「なかなか嵐がおさまらないね……もう今日はここから動けないかなぁ?」
「そうですね……ケータイ通じないってのも痛いですね。連絡できないと随分心配かけちゃうだろうし……」
「嵐が去っても、夜の海を渡るワケにもいかないもんね……今日は泊まりかなぁ。
おばあちゃんはまだしも、何も知らないカリナ達にはホントに心配かけちゃうだろうね……」
「……ホントにすいません。オレに付きあわせたばっかりにこんなコトになって」

 計佑が、あらためて雪姫に頭を下げた。

「あっううん、いいのいいの!!
確かにコワイのはちょっとアレだけど……これでも私、結構嬉しいんだから、今の状況」

 雪姫がニコリとフォローしてくれる。

──やっぱ先輩優しいな……ムリしてるだろうに、オレに気まで使ってくれてくれて……

 雪姫の真意を誤解して、ただ気を使ってくれてるだけだろうと考える計佑。
そんな計佑に、逆に雪姫が謝ってきた。

「……こっちこそごめんね。
こんなトコまでひっぱってきておいて、結局大した収穫もなくて。
天気予報くらい見とけばよかったのに、ホント何やってたんだろ……」
「いやっそんな!! それはオレも同じだしっ、
オレの勝手な都合なのにここまで案内してくれた先輩にそんなコト言われたら、それこそオレの立つ瀬がないですから!!」

 そう言って慌てた様子で両手を振る計佑に、雪姫がクスリと笑った。

「……そうだね。二人とも迂闊だったってコトで、もう謝るのはナシにしよっか」
「はいっ」

 そして、計佑も笑顔を返すのだった。

 会話が途切れて、しばしの沈黙が訪れた。
 そんな中、計佑の脳裏では先の会話にでた『大した収穫もなくて──』からまくらの事へと考えが移っていた。

──確かに大した手がかりもなかったよな……
  結局、一応持ち帰ってきたのは童話一冊と美月芳夏の写真が一枚……

 雪姫の話ではあの老医師はかなり頼りになるらしいし、焦ることはないのかもしれない。そうは思うが、それでもやはり──

「先輩。オレ……」
「……うん?」

 まくらをチラリと見る。
雪姫と反対側の隣に座り込んでいた幼なじみは、いつの間にか船を漕ぎだしていた。
 ヒジでつついて、起こしてやる。

「……んっ……むっ、なんだよっ」

 まだゴキゲンナナメの様子のまくら。
そんなまくらをあえて無視して、雪姫のほうに顔を向ける。

「確かに先輩の言うとおり、オレがバタついたって状況は変わらないかもしれません。
でも……やっぱりまだあがいてみます」

 雪姫の方を向いたまま、まくらへの言葉を投げかけた。

「まー、色々とムカつくヤツですけどね、そんなんでも "一応" 大事なヤツなんで」
「……そっか。うん、いいと思うよ。計佑くんらしいと思う」

 雪姫が微笑んで肯定してくれて、そんな雪姫に計佑の心もまた力づけられた。

「ありがとうございます。先輩にそう言ってもらえるとホントに頑張れそうです」

──……本当に。先輩の協力がなかったら、何の行動もできてなかったかもしれないもんな……

 あらためて、今までの協力に礼を言う。

「先輩の好意、本当に嬉しかったです」
「…………!!」

 雪姫が息を呑んだが、計佑はそのまま言葉を続けた。

「この旅行に誘ってもらったコト、本当ありがとうございました。調査のこと関係なく、先輩と知りあえて本当によかった」

 ちょっと気恥ずかしくなって、雪姫の顔から視線を逸らした。
だから、雪姫の顔がみるみる赤くなっていくのには気付かなかった。

「オレなんて大した人間じゃないですけど……それでもよかったら、これからもよろしくお願いします」
 
 軽く頭を下げて、改めて交友をお願いした。
 気恥ずかしくて、苦笑を浮かべながら雪姫の顔にまた視線を戻して──驚いた。
 雪姫が林檎みたいな顔色で目を見開いて……涙ぐんでいたから。

──えっえっ……先輩どうしたんだ?

 戸惑う計佑の手を、雪姫がきゅっと握ってきた。

──……へっ?

「嬉しいっ……!!!」

 雪姫が感極まった様子で声を発した。きゅっと瞳を閉じて、うつむきながら言葉を継いでくる。

「本当に選んでもらえるとは思ってなかったから……!! ありがとうっ、計佑くん……!!」

 雪姫の手に、ぎゅっと力が入った。

「こちらこそ、全然大した人間じゃないけどっ……これからは、改めてよろしくねっ!!」
 
 顔を上げた雪姫は、満面の笑みを浮かべていた。

「……?  いえそんな……ホントこちらこそよろしくです……?」

 感謝の言葉と、これからも友人であってという願望を伝えただけでなんでこんな大袈裟な反応をされるのか、
計佑にはまるで──

「うわぁ……うわぁあ……ふふっ……計佑くんが私の彼氏かぁ……///」

──わかった。
"交友"をお願いしたつもりが、"交際"と受け取られていることに。

──えぇええええ!!!??

 まさかの誤解に、一気に計佑の脳が沸騰した。慌てて雪姫の手から逃れ、バタバタと両手を振る。

「ちょっちょちょちょ!! ちがっ違います違います!!」
「……え。……違う、って……?」

 雪姫の笑顔が強張る。その様を見て申し訳なくなるが──

──だからってこんな誤解ほっとくワケにはいかないしっ!?
  ていうか何でそんな話にっ!?
  単に友人としてこれからもよろしくと言ったのがなんでそんな風に……っ!?

 ぐるぐるする頭に、昨夜の雪姫の告白、それから今までの態度が思い出された。

──……まっ……まさか……

 混乱した少年は、昨夜からの疑問を──バカ正直にぶちまけた。

「昨夜の告白って……本気だったんですか!?」

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 今度は雪姫のほうが混乱する番だった。
天国から地獄へ──落とされるのかと思いきや、まるで予想だにしなかった質問が投げかけられて。

──ほ……本気ってなに……?

 顔が引きつるのがわかる。