白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
それくらいは罰ゲームだよね? ヒトの真剣な告白を、マジメに受け止めてくれなかったんだから」
「う……」
またジト目で睨まれて。
やっぱりまだ怒ってるんじゃないか……と、ビクビクしてしまう計佑だった。
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食事も終わって。
二人は今、ケータイでゲームなどして時間を潰していて。
そんな中、計佑は気絶する前の会話を思い出していた。
──やっぱり……返事はしなきゃいけないよな……
昨夜の雪姫は、返事はいいとは言っていた。
でも、交際を申し込んだと誤解させてしまった時の様子を思えば、雪姫の本心は計佑にでもわかることで。
だから──情けない話になるとは思ったけど、正直な気持ちを伝えることにした。
「先輩……」
雪姫の番になったケータイを手渡しながら、話しかける。
「うん?」
雪姫がケータイから顔を上げて、計佑を見つめてきた。
相変わらず雪姫は綺麗で可愛くて。
だからこれからの会話は恥ずかしかったけれど。
それでも今は目をそらさずに、気持ちを伝える。
「……先輩の気持ちは嬉しいです。すごく嬉しかったし、ホント光栄なんですけど……」
その言葉に、雪姫がふるりと身体を震わせた。
「……けど……?」
「今は……ちゃんと返事を返せないんです。すいませんっ!!」
ガバっと頭を下げた。
「…………」
雪姫は何も言わなかった。そしてしばらく経って。ふぅっ、と雪姫がため息をつくのが聞こえた。
「 "今は" ダメなんだ……理由を教えてくれる?」
頭を上げる。
「その……情けない話なんですけど。
正直、まだ恋愛の好きとかそういうのオレよくわかんないんです」
「……計佑くんは……まだ誰も好きになったことはないの?」
「……はい。ないです……ホントガキですよね、こんな歳までないなんて……」
苦笑するが、雪姫はもっと困ったように笑った。
「それじゃあ私はどうなるの……この歳になって、ようやく初恋が出来たのに」
「あっ!? やっ!! でもっ!! 先輩はたまたま好きになるヒトがいなかっただけで、
ちゃんと自分で気持ちとかわかったんですよね?
オレなんか、自分の気持ちもよくわかんないとか、そんな情けないヤツなワケでっ」
慌てて、フォローする。
雪姫はそんな計佑を優しく見つめてきていたけれど、やがてまた質問をしてきた。
「それじゃあ……自分の気持ちがはっきりわかる時がきたら……あらためて、答えをくれる?」
「……はい。それは、必ず。約束します」
じっと雪姫の目をみつめて、頷いた。
「……そっか。わかった……」
雪姫も深く頷いて。
……しばらく経って、顔を上げるとまた尋ねてきた。
「わかったんだけど……もういくつか訊かせてもらってもいい?」
「はい。オレに答えられることならいくらでも……」
「……うん……」
「…………」
聞きたいことがあるといってきたのに、なかなか雪姫は口を開かなかった。
「……先輩?」
それでも、計佑が水を向けるとようやく質問を始めた。
「計佑くんが……今一番……一番だよ?
ドキドキすることがある女の子、
一人でいる時によく思い出す女の子、
傍にいて嬉しい女の子。
……他にも聞きたい子はいるけど、とりあえずこの三人を……それぞれ教えてくれる?」
「…………」
考えてみる。
1つめ、これは考えるまでもない。
2つめ、まくらの事が脳裏をよぎるが、ごく最近だと、昨夜からの雪姫の態度に悩まされたこともあって。
3つめ、それなりに話す女子なんて三人程しかいないけれど、その中で今一番そばに居て嬉しいといえば……緊張もするけれどやはり……
「白井先輩ですね、全部」
質問の意味は考えずさらりと答える少年と、
「……っっ!!」
その答えに息を呑む少女。
そして雪姫はぶるりと身体を震わせると、みるみる顔を赤くしていって。
ぎゅっと目をつぶると、唇をむにゅむにゅし始めた。
──あ……まただ。なんか昨夜から時々これやってるなぁ先輩……
確か、先輩にキレイって言ってしまった時と、さっきパジャマを褒めた時と、たった今……だっけ?
鈍い少年はその共通点にも気付かず、ただぼんやりと少女を見守るだけだ。
「……わかった。ありがとう。もういいよ……」
「え? 他にも聞きたいことあったんじゃあ……?」
「ううん、もういいの。……今はもう十分……」
赤い顔でもじもじしながら、そんな風に答える雪姫。
「……? そうですか、わかりました」
イマイチ腑に落ちないながらも、雪姫がわかってくれたのならありがたいとばかりに、それ以上はツッコまなかった。
色恋の話が続いていったら、いつまた自分は爆発する羽目になるかわかったものじゃないし。
「うん……ほんとに。ありがとう計佑くん……なんだか安心して、ゆっくり答えを待てそうな気がする」
ふわりと、雪姫が幸せそうに微笑って。
ドクン!!!!
その笑顔があまりに綺麗で可愛くて、また心臓が跳ね上がった計佑は、慌てて視線を逸らした。
──なっ……なんだ今の顔……っ!! 昨夜、告白してくれた時みたいなっ……!?
……表情は全然違うのになんでっ……!?
なんでまた雪姫の見え方が変わってしまったのか、相変わらずわからない少年は、結局答えを出せないまま適当に口を開いた。
「そっ、そう言ってもらえると助かります。正直、今はまくらのことが気がかりだったりするし……」
それで、ポロリともう一つの本音がこぼれた。
「……まくらさん?」
「あっああ、例の妹みたいなやつの名前です。音巻まくらっていうんです」
「あっ……ごめんなさい!! そうだよね、そんな大変な時に私ばっかり舞い上がっちゃって……」
しゅんとしてしまう雪姫に、慌ててフォローする。
「いやっ、だから元気にはしてますからホント!! 先輩のおじいちゃんってヒトも保証してくれてるんですから」
パタパタと大袈裟に手を振ってみせる。
「そう……そうだったよね。おじいちゃんがついてるんなら、絶対大丈夫だよね」
雪姫がまた安心したように、相好を崩した。
それに計佑も安心して、ちょっと軽口を叩いてみる。
「まあ……俺ホントにガキですから、まくらのコトが片付いてもなかなか答え出せないかもですけど」
そんな予防線を張ってみた。
「そうだね、それはついさっき、よ〜く分かった」
ザックリ。返ってきた返事は鋭かった。
「きっ……きついですね、先輩……」
思わず泣き言がでる。
「でもそうだよね?
告白を本気にしない、本気にしても返事も出来ない、顔を近づけたら気絶する」
ザクザクザクッ!!!
言葉のナイフの三連投に、計佑のHPはもう0だ。
顔をひきつらせながら、どうかに言葉を絞り出す。
「っや……やっぱり……まだ怒って、ますか……?」
「怒ってないよー、ホントに。……むしろ最高に幸せな気分だし。ただ、計佑くんをいぢめるのが楽しいだけっ」
ニンマリと笑ってみせる雪姫。
作品名:白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル 作家名:GOHON