二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

INDEX|52ページ/169ページ|

次のページ前のページ
 

 茂武市はデートだろうとでも曲解してかあまりツッコんでは来なかったし、
カリナは細かいことは気にしない性分なので追求されなかったのだが……硝子までは騙されてくれていなかった。

──何なんだよ……何で先輩が絡んできた時だけ、こんなに意地悪くなるだ須々野さんは……?

 雪姫の添い寝を見られた次の朝も、硝子の態度はおかしかった。
 普段は大人しい、気の優しい筈の少女が見せるトゲのある態度に、計佑はもう何も言えなくなってしまった。

「……ごめんなさい、目覚くん。私が口出しするようなコトじゃないのに、責めるようなコト言って……」

 黙りこんでしまった計佑を申し訳なく思ったのか、硝子が謝ってきた。

「……いや、いいんだけどさ……
なんか白井先輩のコトにだけ、須々野さん厳しくなってない……? それはちょっと気になるんだけど……」

 問うと、硝子は一瞬言葉に詰まった。

「っ……それは。……白井先輩は私の憧れの人だから……先輩を誑かそうとしてる目覚くんが許せなくて」
「たぶっ!? なっなんだよそれっ!? べっ別にオレ、そんなつもりで先輩とは……!!」

 まさかの言いがかりに、慌てるしかない計佑。
そんな計佑を胡乱げな目つきで見つめる硝子が、さらに畳み掛けてくる。

「本当かなぁ……どうせ無害そうな優しい顔して近づいていったんでしょう……?」

──それはまさに正解だったのだが、計佑にそんな自覚はない。

「なにそれ!?  オレ、そんな人間じゃないよ!?」

……罪作りな少年は、本気でそう訂正してみせる。
しかし硝子は目付きを変えないまま、はぁっとため息をついてみせる。

「人の吐瀉物をさらりと片付けてみせるような筋金入りのクセに……本当に自覚ないんだからタチ悪いよね目覚くんは。
……これじゃあ騙されちゃうのも仕方ないんだけど……」
「…………」

 あまりの言われように、計佑はもう黙りこむだけだった。
──今のセリフの最後の部分は、雪姫の事だけでなく硝子自身の事も含めて言っているのにも気付かないまま。

──♪♪♪〜〜〜……

 そこで、硝子の携帯がなった。

「……白井先輩からだ。ちょっと待ってて……」

 硝子が電話にでる。

「はい……すいません先輩、ちょっとバスに酔っちゃって……
はい……いえ、もう大丈夫です。……もうすぐ私も行きますから。
……はい、ご心配おかけしてすいません……。はい、ではすぐに……」

 ピッ、と硝子が通話を終えて立ち上がる。

「……本当にごめんなさい、目覚くん。せめて最後の後片付けくらいは私にやらせて?」

 そう言って硝子が手を差し出してくるので、素直に道具やゴミ袋を渡した。

「私はもう大丈夫だから。早く行ってあげて?  一人きりの茂武市くんもやきもきしてるだろうし」
「……ん。わかった」

 笑顔で見送ってくる硝子に頷いて、踵を返した。歩き出して、

「……目覚くん」

 すぐに声をかけられた。

「……私は。白井先輩とのコトは応援できない。……だってあの人は……」

 そこで言葉が途切れてしまった。振り返った計佑が、代わりに言葉を継いだ。

「須々野さんの憧れの人だから、でしょ? ……まあ気持ちはわかるけど、さ。
あんな凄い人にオレみたいなのが近づこうとしたら、そりゃあ面白くないよね」

 苦笑を浮かべる計佑に、硝子は首を振って呟いた。

「……むしろ逆だよ……」
「え?  ごめん、よく聞こえなかったんだけど」

 硝子の声は小さすぎて。聞き返したのだけれど、硝子は笑顔を浮かべた。

「……私が応援できるとしたら、まくらとだけだよ。そう言ったの」
「もーっ、結局それなの? 須々野さんも相当頑固だよね……」

 ため息をつく計佑に、硝子は寂しそうに笑ってみせるのだった。

─────────────────────────────────

 この温泉は基本予約制で、今は雪姫とカリナの二人きりだった。
そこへ漸く現れた硝子に、雪姫は軽く駆け寄った。

「硝子ちゃん!!  ホントに大丈夫なの? ごめんね、気付かなくて……」

 真っ先に、雪姫は謝った。
 神様(断じてオバケではない!!)の事で頭が一杯で、なかなか硝子の不在に気付けなかったのだ。
 ちなみにカリナは、とにかく大雑把な少女なので素で気づいていなかった。
 そして肝心の温泉だが、いざ入ってみたら開放感はあるし景色もいいしで、
予想していたような怖さはまるでなかった。お陰で、雪姫も今は余裕が取り戻せていた。

「いえ、そんな……バスの中で本なんか読んでた私が悪いんですから」

 困った感じの笑顔を硝子が浮かべて、雪姫もようやく安心した。

「……目覚くんが気づいてくれて。ずっと傍についててくれたんです。
……私、戻しちゃったりしたのに、それもイヤな顔1つしないで片付けてくれて……ホントに優しいですよね、目覚くんって」
「そうだったの!? そんな大変だったのに、ホント気付かなくてごめんなさい……でもさすが計佑くんだよね!!
きっと『全然大したコトないよ』って感じの笑顔で慰めてくれたんじゃない?」

 硝子の『牽制』に、嬉しそうに雪姫が答えた。
 硝子の思惑に気付かない雪姫にあるのは、『好きなヒトを褒められて嬉しい』という喜びだけだった。

「……っ……そうですね、確かにその通りでした、目覚くんは……」

 硝子が一瞬顔をしかめたけれど、

──あ……そうだよね、男の子にそんなコトされたら複雑にもなるよね……私だったら耐えられないかも……

 雪姫が思ったのはその程度のことだった。
 
「おー、そうだ硝子ちゃん。キミも気にしてた神様の話なんだけど、なんかこういうアイテムを使うんだよー」

 カリナが、紐のついた鈴を鳴らしてみせた。雪姫が説明を継ぐ。

「この温泉の名物なんだって。これをそこの桶に投げ入れて、
神様に鈴を手にとってもらえた人の恋が叶うっていう話なんだよ」
「まーアタシは恋なんてクソ喰らえなんだけどー、オバケには是非とも会ってみたいからさー」

 カリナが大袈裟に鈴を振りまくっている。

「硝子ちゃんの分も、もう買ってあるの。一緒にやろ?」

 そう言って雪姫が、鈴を硝子に手渡して。

「え……ありがとうございます。あの、お代は……」
「そんなのいいから!! ほらっ早く」

 雪姫が硝子の手を引っ張って、桶の前へ。カリナも後からついてくる。

「よし! それじゃあ行くよ? せーの……」

 雪姫と硝子が投げ入れようとした瞬間、

「おりゃあ!!!!」
バシャァアア!!

 桶をひっくり返しそうな勢いで、カリナが鈴を投げ込んだ。

「おらー!!  出てきてみろよ神様とやらー!!」

 罰当たりにも、挑発までしていた。

「もうっカリナ!! ふざけないでよ!!」
「えー?  だってさー、アタシは別に願いがあるワケじゃないし、ただ神様の姿とやらを見てみたいだけなんだも〜ん」

 鼻歌交じりにカリナは湯船に戻っていく。

「全くもう……硝子ちゃん!! あんな人ほっといて一緒にやろっ」
「…………」

 雪姫の呼びかけに、硝子は無反応で俯いていた。