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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

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でも、まくらや両親とキャンプをしたコトは何度かあって、一体どれがいつの記憶だとかも、はっきりとは思い出せないぐらいだった。

「……それでね。なんで私がこんなになっちゃってるかというと……これは自業自得なんだよね。私がそう望んだからで」
「望んだ? ……寝たきりになることをか!?」

 計佑の疑問に、またまくらが苦笑した。

「じゃなくて。正確には幽霊になりたいって願いをね。ホタルちゃんにお願いしちゃったんたよね……」
「な……なんだそりゃ……なんでそんな願いを……」

 さっぱりわからず尋ねた計佑に、まくらは困ったように笑って、

「お母さんに会えると思ったからさ」

 そう答えた。

「…………!!」

 その答えに、計佑は何も言えなかった。
 子供の頃……母親が亡くなった後のまくらは、一時期本当に元気がなかった。
 強がって笑顔をみせることはあの頃からあったけど、それでも小さい子供がそんな事徹底できる訳もなく。
 その時期は、計佑も子供ながらにまくらを元気づけようと必要以上に連れ回したり、じゃれついていたりした記憶があった。

「……まー、子供ってホントバカだよねー!!  勿論今だったらそんなコト考えるワケないんだけどっ」
 
 暗くなった雰囲気を払拭しようとしてか、まくらが明るい声を出してみせる。

「…………」

 それでも計佑は俯いたまま、何も返事を出来なかった。
 まくらが空咳をついて、また説明をはじめる。

「ともかくそんなワケで。なんか随分時間が空いちゃったんだけど、例のバラの傷でこの呪いが始まったみたいなんだよね……」

 聞き捨てならない言葉を聞いて、計佑はバッと顔をはね上げた。

「呪いってなんだ!? お前がショックを受けてたのはそのコトなのかっ!?」
「えっ!?  あっ、あ〜いや〜ちょっと大袈裟に言っちゃっただけで、そんな大層な──」
「誤魔化すなよ!! オレに隠し事なんてするなっ!!」

 立ち上がって、また詰め寄ろうとする計佑にまくらが慌てた。

「わっわかったわかった!! ちゃんと話すから落ち着いてよ……
ホント大袈裟なんだよ……呪いと言っても、ちゃんと解けそうなアテだってあるんだからさ……」
「なにっ!?」

 その言葉に、一度は座りかけていた計佑がまた立ち上がる。

「なんだよそれっ!? なんでそんな大事なコトを──」
「だ〜〜か〜〜ら〜〜!! さっき思い出したばかりだって言ってるでしょっ!?
ちゃんと全部話すって言ってるんだから、ちょっと落ち着いてよっ!!
さっきから話を中断させてばっかりなのはケースケのほうなんだからねっ!?」
 
 ついにまくらがキレてしまった。

──そんなコトを言われても、こんな急展開の話で落ち着けるワケあるかよ──

 そんな風に考えてしまう計佑だが、それは口には出さず大人しく腰をおろす。

「……悪い。今度こそ大人しく聞くから、続きたのむ……」

 そんな少年の姿をもうひと睨みしてから、まくらはまた話を始めた。

「まあ……ホントに解けるかはわかんないんだけど。一応今夜にでも試してみるつもりなんだよね」
「今夜?  すぐには試せないことなのか?」

 大人しく聞くとはいったが、質問しないとは言ってない──そんな風に心で言い訳してまくらに質問した。
少なくともさっきみたいな詰問口調ではないし、これくらい許されるだろう。
けれどまくらはその質問に対して、何故か顔をボッと赤くした。

「ひっ昼間なんて無理っ!! 絶対ムリ、ダメっ!!」

 ブンブンと両手を振ってくる。

「……?  そうか、それなら仕方ないんだけど……オレにできるコトはあるのか?」

 そう尋ねると、まくらは耳まで赤くなった。

「っ、ない!! いやあるといえばあるんだけど……計佑は夜になったら大人しく寝てくれればいいの!! 後はこっちが勝手にやるからっ!!」

 少女が喚くが、少年は訝しむ。

「……なんだよ、怪しいなぁ……何をやるのか一応教えておいてくれよ」
「っ……言えない。……人に話したら、もう一生解けなくなるから」
「な、マジかよ!? ……いやでもまあ、呪いとかって確かにそんな感じの話あったりするか……うん」

 一人で納得してうんうんと頷いている少年は、幼なじみが気まずそうな顔をしていることには気付かなかった。

「ただ……一応、先に謝っておくね? ごめんなさい……でもそれで、最初で最後にするから」

 まくらが神妙な顔つきで謝ってきた。

「なんだよおい、不安になるな……なんか痛かったりすることなのか?」
「痛くは……ないと思うよ、多分……うん。心は……どうかわからないけど……」

 歯切れの悪いまくらの言葉に不安が募るが、それでまくらが戻れるなら、と計佑はそれ以上訊かなかった。
代わりに、他の事を尋ねる。

「けど呪い解くのにオレも一応必要っていうのは……
やっぱ子供の頃のその時、オレもその場にいたからとかそういう事なのか?」
「う……ん、そうだね……子供の頃からずっと一緒だったってコトは、確かに大きく関係してるね……」
「ふーん……?」

 まくらの答えはイマイチ的を射なかったが、計佑はさほど気にしなかった。

──なるほどな……オレだけがまくらを認識できたのは、オレもまくらと一緒に美月芳夏の幽霊に会ってたからなんだな……

 ずっとわからなかった疑問もこれで解けた。あと、聞いておくべき大事な事は一つだけ──

「で?  それで呪いが解けなかったら結局どうなるんだ?
美月芳夏に聞かされた話で一番ショックだったのは、そのコトなんだろ?」

 そう尋ねると、まくらがうっと言葉に詰まった。

「……結局、それを聞くのは諦めないんだね……」
「諦めるワケないだろ!? こんな大事な話!!」

 計佑がまた怒鳴ると、まくらは気まずそうに視線を逸らした。
そのまましばらく沈黙を続けたが、計佑からの無言のプレッシャーに負けたのか、漸く口を開く。

「……今夜試す方法が駄目だったら、その時は話すよ……
今話したって、他に解決するアテはないんだからそれでもいいでしょ?」

 結局、それでもまくらがちゃんと明かしてくれることはなかった。

「……なんでそこまで……」

 ここまでまくらが隠そうとするということは、相当ろくでもないのは間違いない──そう察せられた。
そもそもこの元気少女が、あんなに震え出すような話なんて──

……ゾワッ……!!

 全身が怖気だった。
最悪の可能性──例えば死とか──に思い至ったからだ。

「おいっ!! まさか──」

 怒声に視線を戻してきたまくらが、計佑の形相から心中を読み取ったのだろう、焦った顔をした。
 居ても立っても居られなくなった計佑が、まくらにつかみかかる。

「話せっ!! 今すぐ話──」

 言葉は、最後まで続かなかった。
──まくらに掴みかかった筈の手も、空を切って何もつかめなかった。

──……え……

 何が起きたのかわからず、呆然としてしまう。
 さっきまで目の前にいたまくらが、突然消え去っていた。

──え……何が……?

「……まくら……?」