二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル

INDEX|65ページ/169ページ|

次のページ前のページ
 

 そう言って、まくらはテヘっと笑ってみせると、

「雪姫先輩っ!! 先輩も天文部に入ってくれませんか?」

 計佑同様、雪姫を勧誘してきた。
けれど、雪姫の今の心中は、それにイエスと言えるようなものではなく──しかし本音を言える筈もないので、

「……う〜ん……文化部といっても、三年が今から部活っていうのはやっぱり……ね?」

 そんな当たり障りのない理由で、やんわりと断ってみる。

「いえっ、計佑も言ってたけど! ウチはまだ同好会みたいなもんで!!
私だってソフト部メインの掛け持ちですから。軽い気持ちで、ね?」

 けれど、食い下がられてしまった。

「……う〜ん……でも……」

 渋る雪姫に、まくらが探るような目付きになった。

「……雪姫先輩。もしかして、私たちのじゃれ合い見てヤキモチ妬いてませんか?」
「えぇっ!?」

 ストレートに図星をつかれて、思わず後退ってしまった。

「やっぱり……」
「……あ……」

 ハァ、とまくらが溜息をついた。カマをかけられたとわかったが、後の祭りだった。

「雪姫先輩?  先輩もよくご存知だと思いますけど、
計佑は、そりゃ〜もー、すっ────ごい!! 奥手男なんですよ?
そんなヤツが、異性として意識してる相手にあんなマネできると思います?」
「そ……それはそうかもしれないけど……」

 まくらが今言ったことは、まさについさっき自分も考えていた事だった。
でも、問題は計佑の事だけではないのだ。計佑の気持ちはそうであったとしても、もう一人の……

「……だって、まくらちゃんはどう思ってるの? 計佑くんのコト……」

 そう、それが問題だった。
 計佑の気持ちは、はっきりと聞いている。
でも、もう一人の当事者である、まくらの気持ちは雪姫には何もわかっていないのだった。
 今度は、雪姫のほうが探る目付きになった。
そして、まくらのほうは表情を消して。一瞬の間、お互いに沈黙状態になった。

「……計佑のコトを、私がどう思ってるか、ですか……」
 
 そう呟くまくらの顔を、雪姫はじっと見詰め続けた。
まくらは、雪姫の不安そうな表情にクスリと笑うと。

「……雪姫先輩。もし私が先輩の心配してる通りの気持ちだったとしたら。
今こうして先輩のコト追いかけてきて、部に誘ったりなんてしませんよ?
だってもしそうなら、雪姫先輩には誤解したままでいてもらった方が、私には都合がいいハズでしょ?」

 そんな風に答えてきた。

「……あ……そ、そっか……」

 まくらに言われて、初めて気がついた。その通りだった。
まくらが計佑の事を異性として好きなら、自分の存在など邪魔者以外の何物でもない筈で。
 そして、もう1つの事にも気付いた。
先程からのまくらの言動……これはつまり……

「……もしかして……私の気持ち、まくらちゃんはもう知っちゃってるの?」
「はい、もちろん!!  ……よーく知ってますよっ」

 ニパっと笑ってみせるまくらに、雪姫は顔が熱くなった──恥ずかしさと、嬉しさで。
 初対面なのに、自分の気持ちをよく知っているという──それはつまり、計佑がまくらに自分の事を話したから──
そう考えたからだった。
(もちろん実際のところは違うのだが、雪姫がそう考えてしまうのは仕方のない事だ)
 計佑が自分の事を、
妹── "恋敵ではないのか" と恐れている相手でもある──に "恋人候補" として紹介してくれていた……
そう思うと、雪姫は幸せで面映くて、顔が赤くなるのを押さえられなかった。
 そうやって恥じらう雪姫に、まくらはニコニコと言葉を続けた。

「だからですねっ雪姫先輩!! 是非とも先輩にも天文部に入ってほしいんです!!」
「う、うん……誘ってくれるのは嬉しいんだけど、でもどうしてそこまでして……?」

 雪姫が疑問を投げかけると、まくらはふっと憂い顔になった。

「先輩もご存知の通り……計佑はすんごい奥手です。
はっきり言って、ほっといたら一生カノジョなんて出来ないんじゃって不安になるくらい」

 ふうっとため息までつくまくら。

「だからこそ!! 雪姫先輩にはどんどん押していってほしいんですよっ」

 一転、まくらが胸の前で両拳をつくって雪姫に詰め寄ってくる。

「あっあのっ……まくらちゃん? なんでそこまで……」
私のことを応援してくれるようなコトを?  という部分までは口にしなかった。
けれどまくらはちゃんとそれを汲み取って。

「えー、だって。雪姫先輩みたいな人が、私の "おねえちゃん" になってくれたら、私も鼻が高いしー」
「……えっ!? まっまくらちゃん!?」

 くふふっ、と笑ってみせるまくらに、慌てる雪姫。
そういう未来を夢想したことがないとは言わないが、流石に気が早すぎるからかいに、狼狽えてしまう。

「……まあホントのコトを言うとですね。
一般的な目だと、計佑じゃ雪姫先輩にはつり合わないって言われるかもしれないけど……
あれでも、私には自慢の……兄、……なんでっ!!
私としては雪姫先輩くらいの人じゃないと、って気持ちがあるんですよねっ」

 まくらが、ぎゅっと雪姫の手を握ってくる。

「……計佑と雪姫先輩のコトを応援する。……そう決めたんです。
これは計佑にも約束したコトですからねっ!! ……だから、先輩を応援させてくださいっ」

 自分には計佑への恋愛感情なんてない──計佑にもそう伝えてある──そう宣言されて、ひたむきな目で見つめられて。
雪姫の中から、まくらへの警戒心は綺麗に消えていった。

「……ありがとう、まくらちゃん……」

 素直に礼を口にできた。それに、まくらがニッコリと笑ってみせた。

─────────────────────────────────

 残された計佑は、部室の片付けを始めていた。
その心中は──

──……ヤキモチ? それっておかしくね? だってアイツはそういうのじゃないって断言してんのに。
   家族みたいなの相手にヤキモチとか、ワケわかんないんだけど……

……そんな感じの、相変わらずの朴念仁ぶりだった。
けれど、この時の少年はちょっとだけ前に進んだ。立場を置き換えての想像にチャレンジしてみたのだった。

──……まあでも、一応もうちょっと想像してみるか……
  例えば先輩に、幼なじみの男がいて。そいつとは家族同然の付き合いだったとして……

 想像する。食事は大抵一緒。登校も大抵一緒。お風呂も、小さい頃には大抵一緒……

──許せねェエエエエ!!!!

 そこまで考えた時、烈火の如く怒りが湧いてきた。
『バキッ!!』
 力んだせいで、運んでいた星座盤が割れてしまった。

「おわっ!? やっやべえ!!」
 
 我に返ったが、もう遅い。

「あっちゃー……弁償だなこれは……」

 幸い、安物のペラいものだったからよかったものの。
──いや、安物じゃなければ、そうそう割れたりもしなかったか。
そう考えて、微妙で、複雑な気分になる。
そのせいで、ついさっきの怒りの事などすっかり忘れてしまう計佑。
 増えてしまったゴミを片付けて、そこにまくらが戻ってきた。

「たっだいまー」